中央道・笹子トンネル崩落 打音検査せず

 2日午前8時ごろ、山梨県大月市と甲州市にまたがる中央自動車道上り線の笹子(ささご)トンネル(全長4784メートル)で天井板が崩落した。天井板は約130メートルにわたって崩れ落ち、車が下敷きになるなどして9人が死亡した。

 中日本高速道路によると、天井板は強化コンクリート製で鋼鉄製の金具でつり下げていた。天井板は昭和52年12月のトンネル開通当初から設置されたままだった。3日にはトンネル最上部の天井と天井板をつなぐつり金具を固定するボルトが脱落していたことが分かった。中日本高速道路などによると、脱落したのは天井板のつり金具をトンネル天井のコンクリートに固定する直径1.6センチ、長さ23センチの「アンカーボルト」。崩落した全区間でつり金具が落下していた。

 中日本高速の吉川良一専務(63)は3日の記者会見でボルトが抜け落ちた原因について「一つは老朽化。もう一つは何らかの外力が加わった可能性」と説明。「コンクリートや接着剤などボルト周辺が劣化した可能性もある」とした。

 当初は「今年9月に天井板の打音検査をしたが異常はなかった」とされていたが、4日には中日本高速が管理する同じ構造の3つのトンネルのうち、笹子だけ平成12年を最後に本体の天井部にあるつり金具のボルト部分の打音検査をしていなかったことが分かった。

 トンネルの点検項目については高速道路各社の間に統一基準はなく、基準の策定は各社に“丸投げ”の形になっていたという。民営化後は、経営方針も違う全くの別会社ということで、安全対策の手法も各社で異なったようだ。

 なおかつ中日本高速では点検を出先機関と子会社に“丸投げ”し、本社は点検の実施時期や点検内容を把握していなかったことが5日分かった。点検に社員が立ち会うことも義務づけられていなかった。安全性に対する同社のずさんともいえる姿勢が明らかになった。