ニュースの焦点 衆院選で自公圧勝325 惨敗民主は230から57

 第46回衆院選は16日、投開票が行われ、自民党は選挙前勢力の119議席を大幅に上回る単独過半数の241議席を超え、衆院の全常任委員長を抑えることが可能な絶対安定多数の294議席を単独で確保、公明党の31議席を加えて参院で否決された法案を再可決できる320議席を超える圧勝となった。民主党は選挙前の230議席を大きく下回る57議席。
 前回平成21年選挙で308議席を獲得、誕生した民主党政権は約3年3か月で終止符が打たれた。
 安倍氏は17日に党本部で開かれた記者会見で、憲法改正の要件を定めた憲法96条の改正について「日本維新の会とみんなの党も基本的に一致できるのではないか」と述べ、連携を模索する考えを示した。会見では石破茂幹事長の留任を正式に表明。25日に党役員人事を決め、26日召集の特別国会で第96代首相に指名された後、同日中にも第2次安倍内閣が発足する。
 安倍氏は憲法改正について「発議のために必要な3分の2の議席は(公明党と合わせ)衆院では確保したが、参院ではほど遠い」と述べ、96条改正に賛成の立場を示している維新、みんなの協力を得たいとの考えを示した。これに対し、維新幹事長の松井一郎大阪府知事は記者団に、96条改正を自民党が提案した場合は「賛成する」と明言した。
 安倍氏は、新内閣を「危機突破内閣」と位置づけ、取り組む課題として(1)震災復興の加速(2)デフレ脱却、円高是正による経済成長(3)日米同盟関係の回復(4)教育再生−を挙げた。首相就任後の訪米に関しては「来年1月下旬から2月になるかもしれない」と語った。
 靖国参拝については「首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極みだ。本来、外交的な問題に発展していく性格のものではないが、そうなっている」と述べるにとどめた。
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 壊滅的な惨敗を喫した民主党の野田佳彦首相は16日深夜、都内のホテルで記者会見し、民主党代表を辞任する意向を表明した。
 今回の選挙では民主党の藤村修官房長官、城島光力財務相、田中真紀子文部科学相、樽床伸二総務相、三井辨雄厚生労働相、中塚一宏金融担当相、小平忠正国家公安委員長、国民新党の下地幹郎郵政民営化相の現職8閣僚が落選した。現職3閣僚が落選した昭和51、58年の衆院選を超え、過去最多となった。
 民主党の大物議員では仙谷由人、平野博文両元官房長官や川端達夫前総務相、鉢呂吉雄選対委員長らが落選した。菅直人前首相は選挙区で敗北し、比例ブロックで復活当選した。
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 第三極は日本維新の会が選挙前の11議席を大きく上回る54議席を獲得、衆院第3党となった。みんなの党も選挙前の8議席から18議席へ増加した。日本未来の党は選挙前の62議席から9議席に激減した。民主党離党組の選挙区候補71人は1勝70敗だった。
 維新は民主党に迫る善戦をみせたが、自民党の大勝により衆院選後のキャスチングボートを握るのは困難となった。
 石原慎太郎代表は16日夜、維新の結果について「50を超す超さないで随分違いがあると思う」と答え、一定の成果を強調した。それでも、本拠地の大阪を除くと「ふわっとした民意」(橋下徹代表代行)をつかみきれず、選挙区では敗北が相次いだ。次期政権への対応について、石原氏は「是々非々」と答えた。
 今後の路線をめぐり、石原氏ら旧太陽の党と橋下氏ら「大阪維新の会」組のズレも表面化している。
 特別国会での首相指名選挙について、橋下氏が「これだけの議席を獲得した自公両党に従うのが民主主義」と、自民党の安倍晋三総裁に投票する意向を示唆したのに対し、石原氏は「それでは政党の体をなさない。党首を出すことが政党の沽券(こけん)だ」と反論した。
 今後の連携相手についても、橋下氏は「みんなの党や民主党の一部とともに、政権に対抗できるグループをつくらないといけない」と述べたが、石原氏は国の会計制度見直しなどを通じて「自民党を活用し利用していく」と発言。平沼赳夫国会議員団代表も「憲法改正の問題では(自民党と)連携を取ることを考えていく必要がある」と語った。
 首相指名選挙については結局17日、石原氏に投票することで落着した。
 一方、みんなの党の渡辺喜美代表は17日未明の記者会見で「現有議席以上なので大変ありがたい」と“勝利宣言”をした。みんなは「旧太陽と離婚すれば再婚できるかもしれない」(江田憲司幹事長)と維新分裂に期待を寄せ、渡辺氏は「石原氏と橋下氏の『2本立て維新の会』で政策が別々だと、なかなか一緒にやるのは難しい」と牽制した。
 未来の嘉田由紀子代表は16日夜、「(結党から公示まで)日が足りなかった。政策が十分浸透し切れなかった」と敗戦の弁。その後の記者会見では「ここで身を引くのは逆に責任を持てない」と述べ、滋賀県知事との兼務を続ける意向を表明した。小沢一郎氏を要職に起用しない方針も示した。