パソコン遠隔操作事件で30歳男を逮捕

 4人が誤認逮捕された遠隔操作ウイルス事件で、インターネット掲示板で同人誌即売会での無差別殺人を予告したとして、警視庁などの合同捜査本部は10日、威力業務妨害容疑で、東京都江東区白河、IT関連会社社員、片山祐輔(ゆうすけ)容疑者(30)を逮捕した。

 合同捜査本部は、防犯カメラの映像から片山容疑者が神奈川県藤沢市の江の島でウイルス関連のデータが入った記録媒体付きの首輪をネコに付けたと断定。自宅からパソコン(PC)4台や外付けハードディスク3台を押収してウイルス作成の痕跡を調べるほか、勤務先から派遣された会社のPCから犯行予告が書き込まれたとみて解析を急ぐ。

 また、片山容疑者が以前使っていた携帯電話に江の島のネコの画像や事件のニュースを保存した形跡があり、関連を調べている。

 逮捕容疑は昨年8月9日、ウイルス感染した愛知県内の会社のPCを遠隔操作し、ネット掲示板「2ちゃんねる」に「コミケで大量殺人する」と書き込み、主催者側の業務を妨害したとしている。
 真犯人は複数回、遠隔操作ウイルスのプログラムを更新。愛知県内のPCから検出されたウイルスのバージョンと、記録媒体から見つかったウイルスの設計図にあたる「ソースコード」が一致したのが決め手となった。

 真犯人は記録媒体内に残された文書で、「以前、事件に巻き込まれた」と逮捕歴を示唆。片山容疑者は平成17年にネット掲示板で殺害予告をして脅迫容疑などで逮捕されており、合同捜査本部は逆恨みから事件を計画したとみている。

 捜査は全容解明に向けて大きく動き出したが、警察は「サイバー空間」での遠隔操作ウイルスという新たな手口には対応できなかった。真犯人は5日のメールで「もうメールはしない」と終結を宣言したが、江の島の防犯カメラがネコと接触する片山容疑者をとらえていた。警察当局は結果的に「現実空間」に残した唯一の痕跡に救われる形となったわけで、事件は警察の捜査力に大きな疑問符を突き付ける結果になった。