SPECIAL INTERVIEW 春風亭昇太 立川生志 林家彦いち「怪談噺はオモシロイ ?!」


「そう。もともと怪談をやったら最後に陽気にかっぽれを踊って、怖がらせたままお客さんを帰らせないっていうのもあるし、精神はそこなんですよね」
「寄席に来たら陽気に帰してあげる」
「日本のお化けってさ、はかなかったり美しかったりするでしょ」
「うん。あと情緒とかもあるし、大量殺戮とかしないじゃない」
「ジェイソンじゃないんだから(笑)」
「あと、妖怪ってなんかかわいいじゃん。危害を加えないし。ドラキュラなんて、人の血を吸って殺しちゃうんだよ。それに比べて“小豆洗い”とか、洗ってるだけなんだよ、小豆を」
「そりゃそうだ(笑)。砂かけババアは、砂かけるだけだから」
「かけられたら払えばいいんだよ」
「ネズミ男は汚いだけだし」
「かっぱだって相撲するだけだもんね」
「そう、キュウリあげたら喜んじゃうし、かわいらしいじゃん。弱点もあるし」
「弱点があるのが可愛いよね」
「頭の皿の水を吸い取っちゃえばいいんだから。パンパースとか乗っけちゃえばいいんだよ。吸っちゃうから(笑)」
「妖怪の話はそのくらいで(笑)。それぞれの持ちネタで怪談噺っていうと…」
「僕はすごい怖がりだから、覚えようと思ってもCD聴くだけで怖いから、あんまり持ってない。でも昇太兄さんから『マサコ』を教えてもらって、それは毎年1〜2回はやりますね」
「昇太さんの新作『マサコ』は、名作ですよね。あれはどんなふうに作ったの?」
「夏にやる噺を作ろうと思って、日本の怪談噺で定番のオチのところで急に大声出して驚かすやつを取り入れてなんかできないかと思って。それを落語でよくある“オウム返し”っていうネタの作り方で作ってみようと。噺自体はするするかけたんですけど、実は一番悩んだのは“マサコ”っていう名前なんです。落語は想像させてものを見させるので、名前のイメージがすごく大事で、最後まで悩みました。田中さんや鈴木さんは多すぎてイメージできないし…」
「御手洗さんとか綾小路さんじゃ、意味を持ちすぎちゃう」
「そうそう。名前は本当に神経使うよね」
「彦いちさんの新作『熱血怪談部』は?」
「あれは、自分っぽいものを作ろうというのがありまして…。夏に体育会系の登場人物って考えたら、サークル活動かなと思って。そこから何のサークルにするかって考えたときに、体育会系とは真反対にしようとか、かなり理屈で考えた作品ですね。理屈が通らない人が不条理を突き抜けるというか、全部体育会系で片付けちゃう。この噺はありがたいことに定番になっていて、いろいろな世代の方に受けるネタになりました」