伊勢谷友介 元隠密から維新志士まで。”幕末の生き様”で存在感を発揮!


“伊勢谷vs田中泯”驚愕アクションに注目必至

『京都大火編』の目玉アクションの1つが、蒼紫がかつての御庭番衆の仲間・翁こと柏崎念至と対峙するシーン。翁を演じるのは『47RONIN』など演技派俳優としても活躍する舞踏家・田中泯。一見、好々爺の翁が豹変し、鬼神のような強さで蒼紫と互角の戦いを繰り広げるバトルシーンは、圧巻の一言。

「あの田中泯さんのアクションシーンは、本当に皆さん驚くと思いますよ。僕自身、泯さんには本当に驚かされっぱなしでしたね。実際、泯さんは本当に強靭な体をしていらっしゃるんですよ。僕なんかよりよっぽど強い体をしているし、それこそ精神も本当に強い方ですから。格闘シーンを撮影していて“この人、勝つつもりでやってないか?”と思ったくらい、強かったんです(笑)。あの場面は、本当にやりごたえのあった撮影でした」

 劇中では命がけでぶつかり合う2人だが、カメラが回っていないところではお互いをいたわり合う仲間。

「何日間もハードな撮影をしていると疲れもたまってきますからね。少しでも疲れを和らげようと、僕が持ってきていたサプリメントを、泯さんとシェアしたりしていました。面白いのが“これ、疲れに効くんですよ”と渡したら、泯さん、飲んですぐに“効いてきた気がする!”って(笑)。そんなふうに、お互いの身体をいたわりながら、撮影していました。蒼紫と翁は対峙する役どころですが、今回のようにアクションがあるときは特に、役作りのうえでも相手の役者さんと親しくなるというのは大切なことだと思うんです。相手を信頼して、思いきりアクションができるようになりますからね。単に自分の役の持っている憎しみの感情を一方的にぶつけるだけでは、結果的に良いアクションシーンにはならないと思うんです。だから僕は、相手の役者さんと信頼関係を築くことをとても大事にしていますね。何より、美大にいた僕にとっては田中泯さんという人は、学生時代からのあこがれの人でしたから。パフォーマンスアートの第一人者ですからね。そんな方と同じ画面の中で暴れまわることができたのは、本当にうれしいことでした」

 2人はともに大友監督の『龍馬伝』に出演した“大友組”。

「大友監督は本当に貪欲で、いろいろなショットを撮ってくれる監督です。後から映像を見て、こんなところも撮っていたのかと、驚かされることが度々あるんですよね。編集が終わった時点で見せて頂いた映像からも、すごい雰囲気が出ているので本当に感動します。その分、撮影は本当にシビアだったりもしますけど(笑)。同時に僕自身も監督したりもしますので、撮る側としての思いも、大友監督に納得するところが多いんです。だから、一緒に仕事させて頂くことは、すごく僕自身の勉強になりますね。勝手に学ばせて頂いている感じですけど(笑)。『龍馬伝』のときとは違って、この作品ならではだなと思ったのが、アクションとドラマ、どちらも一切手を抜かない大友監督の姿勢でした。今回、やはりアクションを非常に重視しているなと感じる一方で、原作をきちんと掘り下げて人物やドラマを描いている。キャラクターのバックグラウンド、幕末というこの時代に、彼らが何を求め、どんな思いを背負って生きているのか。原作漫画のなぞりに終わるのではなく、ちゃんと、史実の時代背景と照らし合わせながら、脚本を書き上げているんですね。これをアクションと混在させるって、本当に大変なことだと思いますよ。アクションは、谷垣さんを完全に信頼して、現場を預ける。それもまた大友監督の器の大きさを表していると思いました。それが、いつもの大友組とはまた違って、チームを編成するというより、人のつながりを作る、というような現場作りだったと思います」

自分に何ができるのか。幕末に触れて未来を見る

 その『龍馬伝』で演じた高杉晋作や、来年の大河『花燃ゆ』で演じる吉田松陰など、幕末を舞台にした作品も多い。

「僕自身も、幕末という時代にすごく興味を持っています。人物としては、以前から引かれていたのが吉田松陰。だから今度その役を演じることになったのは本当にうれしいんです。僕は、先を見て今何をするべきかを考えられる人にすごく引かれるんです。吉田松陰という人は、単なる主義主張をするだけに終わらなかった人物。平和な未来というビジョンを描くだけでなく、そこへ至るまでのプロセスをも設計できた人だと思うんです。江戸時代は、一般の民衆が国の将来について考えないことが当たり前という時代だった。そこに、黒船に象徴される外国からの刺激があり、才能のある人たちが日本の未来に危機感を感じはじめ、それをきっかけに次々と新たなビジョンが生まれていった。そんな時代に、吉田松陰という人は公明正大な生き方をしていたことに僕は尊敬せざるを得ないんですよ。無くなったのが29歳ですから、僕より10歳も若いんですけど(笑)」

 生きた年月に関係なく、彼の存在は大きな意味を持っている、と熱く語る。

「松陰は、人の命は一度で途絶えても魂は7回生きる、と語っています。まさに彼こそ、亡くなった後も多くの人の生涯に影響を与え、日本の未来にも大きなものを残した。現代に生きる僕もまた、こうして彼に尊敬の念というかあこがれを抱いているわけですから。彼がもし今の時代にいれば、今の時代に最も合った方法で日本の未来を考えたと思います。幕末に生きた人たちのことを思うと、僕自身もどんなふうに生きるべきか、自分に何ができるのか、考えてしまうんですよね」

 思えば伊勢谷は早くから、自ら考え行動することを意識していた。さまざまな素材の再資源化を目指すリバースプロジェクトを立ち上げたのも、その1つ。

「僕はもともと人の輪の中心にいるタイプではなく、でも人気者にあこがれるような人間なんですけど(笑)。それが、映画を監督したときに、自分が何かもっとできないかと考えるようになったんです。自分に何ができるか、自分なりに考えて、思ったのは、人間がこの先も長く地球に住み続けられるようにしたいということでした。短絡的ですけど(笑)、これって誰も否定できない願いだと思うんです。それで実際に行動するために立ち上げたのがリバースプロジェクトです。今は、そういう目的を持って、迷いなく生きていけるので、幸せだなと思います」
 幕末に生きた男たちに思いをはせながら、未来を見る。

「蒼紫や剣心は実在しないけれど、彼らの思いは、実際にあの時代にあったと思うんです。蒼紫は悲しい男だけれど、彼の才能や思いの強さゆえに、ああいう生き方をする以外無かったのかもしれない。時代というものは、いろいろなものを切り捨ててきた。それを、身を持って語っている存在でもあると思うんですよね。そんな男の生き様を少しでもリアルに伝えることができたらうれしいです」

 演技派俳優たちが描く、悲しくもかっこよすぎる男たちのリアルなドラマと迫真のアクション。男女ともに胸が熱くなる、幕末エンターテインメントの決定版だ。
(本紙・秋吉布由子)
©和月伸宏/集英社 ©2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』

監督:大友啓史 出演:佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、江口洋介、藤原竜也他/ワーナー・ブラザース映画配給/『〜京都大火編』(現在公開中)『〜伝説の最期編』(9月13日より)2部作連続全国公開 
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