ズレているのは蛭子か孔子か、はたまた時代か?

『蛭子の論語 自由に生きるためのヒント』著者:蛭子能収

 最近、蛭子能収がプチブレイクしている。前作の『ひとりぼっちを笑うな』が14刷8万部を突破し、『生きるのが楽になる まいにち蛭子さん(日めくり)』が大ヒットというのだから、プチどころか大ブレイクといえるのだが…。その前に出ない感、ひっそり感がプチブレイクに見える理由なのかも。なぜ蛭子の言葉が受けるのか。松岡修造のような熱血に疲れた人が、その脱力系の言葉にホッとするからなのか。もしくは癒し系のフレーズの裏に鋭い真実が隠されているからなのか。その答えが最新刊『蛭子の論語 自由に生きるためのヒント』に隠されている。論語なんて読んだことがないどころか、そもそも知らなかったが、編集者の依頼に断れず、しぶしぶ読み始めたというものの、孔子の言葉にとても共感して…という触れ込みではあるが、蛭子なりにやや強引に解釈している部分もあり、興味深い。蛭子の主張をざっくりまとめると、「長生きしたい」「ギャンブルはやめられない」「ひとりぼっちでもいい」「空気なんか読めなくていい」「お金は大事」そして「自分自身を受け入れる」ということ。その一番の根底にあるのが、タイトルにもあるように「自由に生きたい」という人生哲学だ。自分らしく生きる自由を得るためには、やっかみや嫉妬心を買わないように目立たなく生きる。言い争いは非建設的なので、相手が間違っていても反論せず、謝ることも平気と言い切る蛭子はかっこいい。外見は弱く見せておいて、一番強いのはこういう人間だ。同書で孔子と蛭子の言葉を読めば、悟りが開けるかも。


【定価】本体800円(税別)【発行】KADOKAWA