監督・西川美和 × 主演・本木雅弘 初タッグの2人が紡ぐ、新しい家族の物語。『永い言い訳』

撮影・蔦野裕 ヘアメイク・酒井夢月 スタイリスト・小林身和子 西川美和 衣装:ニットワンピ ビーミング ライフストア(9500円・税別/ビーミング ライフストア by ビームス コクーンシティ店 048-788-1130)、ブレスレット ファリス(2万8000円・税別/デミルクス ビームス 新宿 03-5339-9070)
 意外な素顔を自然体で明かす本木の姿は、まさに西川監督がいう“体温”を感じさせる俳優の魅力にあふれている。いくつもの人生を体現し、俳優として深みを増していく本木だが、希求心が止むことはないようだ。撮影を終え、監督に尋ねたいことはと質問したところ…。

本木「俳優として、ここを直せばもっと良くなるのに、という点を西川監督の観点から教えていただければ。人間としてでも、男としてでも(笑)」

西川「そうですね…(笑)。なぜそんなことにこだわっているんだろう、と思うときがあるんです。現場でもありました。幸夫は、このシーンでストールを巻いたほうがいいかどうか、とか…」

本木「(笑)」

西川「私にとってはセリフをどう言うかといったことのほうが重要で、正直そんな部分は見ていなかったんです。その時は、じゃ巻きましょうかと適当に返事をしてしまっていたのですが、完成した作品を見た方からこんなことを言われました。幸夫が最初に大宮家を訪れたときはストールなんて巻いて、とても子供の面倒を見に行くような格好ではなかったけれど、幸夫の変化とともにだんだん服装がラフになっていきましたね、と。私がどうでもいいと思っていて、本木さんが大事だと思ったところを観客はきちんと見ていたんです」

本木「自分でも、ついちまちま考えてしまうのですが、子供の世話をするということを知らない人だというのは表現できるかな、と思ったり、季節が夏に向かっていくにつれ、心身に付いていたものがはがれていくさまを物理的にも両面で表せるかな、と。でも深津絵里さんや池松壮亮さんのようなブレない俳優なら、そんな姑息なアプローチではなく本質を見極めた芝居をするんでしょうけど(笑)」

西川「どこに本質があるかなんて演出家にも分かりませんよ。私だって、一つひとつのシーンに集中しているけれど、全体として見ればどこに本質が宿っているか、分からない。であれば姑息でもいいと思うんです」

 何より、西川監督が求めたのは、そんな本木雅弘という俳優にしかない魅力なのだから。そしてこの2人の満を持してのタッグだからこそ、新しい家族の物語が生まれたのだから。

(THL・秋吉布由子)