乳がんは早期発見が重要。命を落とさないために検診を


乳がんになってしまったら行われる治療

 ステージにより治療方法は違いますが、1期で見つかった場合は、手術で乳房温存を選択できる可能性もあります。温存しても形が変わるので全摘を選んで後々形成する方法を取る方もいらっしゃいますが、多くは乳房温存治療をして、そこに放射線を使う。それと合わせて抗がん剤、ホルモン療法を行うことが多いですね。人により副作用の出方も違ってきますし、必ずしも同じ流れではありませんが、早期だと、乳房温存が可能など、治療の選択肢が増えるのは確かです。また、入院期間も短くてすみますので、早く日常生活に戻れるというメリットもあります。


誤解されやすい「標準治療」という言葉

 手術、抗がん剤、ホルモン治療、放射線など、乳がんになった時に主に行われる治療のスタンダードを「標準治療」と言います。標準というと松竹梅の“竹”という印象を持たれる方が多くいらっしゃり、特別な治療の下の平均的治療だと思われるんですね。しかし、それは誤りで“これまでいろいろな治療を行ってきた中で、あなたのがんにはこれが最適だと現在考えられているもの” が標準治療なのです。つまり、その時点でのゴールデンスタンダードな治療法だという事です。もちろん、年齢や進行度などにより、薬の種類などはカスタマイズしますが、エビデンスがありベストな治療を標準治療と言っています。


インターネットの情報について
 
 インターネット上には、さまざまな情報がありますが、標準治療とまったく違う治療を選択するのは絶対にやめていただきたいと思います。情報の精度に疑問を持った場合は、ぜひその発信元を調べて下さい。国立がん研究センターのホームページ、癌研のホームページなどは、評価された情報しか載せていないので、安心です。逆に、“私はこれをやって治りました”という記事は、100人中1人なのか、50人なのか、100人なのか分かりませんよね。たまたま治った方がいても、それが自分に当てはまるとは限りません。真偽不明の情報については、そこに飛びつく前に、ぜひ主治医と相談してみて下さい。“こんな事言ったら先生に何か言われそう”と思ったら、それはよくない情報なのかもしれません。自分でもうすうす感じているから、主治医に相談できない。自分が心の底から信じて試してみたいと思ったら、そのままストレートに伝えてみて下さい。先生はきちんと受け止めてくれると思います。主治医に相談せず、治療法の選択を誤ってしまうと、せっかく早期で発見できても、進行期で見つかったのと同じ状態になってしまうので、くれぐれも注意していただきたいと思います。とにかく治療に関しては、主治医とちゃんと話し合うこと。これは患者さんだけではなく、主治医もそれに応えてあげる事が必要です。患者さんが気を使うのではなく、医者も歩み寄ってコミュニケーションを取る姿勢が大事だと思います。


乳がんで命を落とさないためには検診が有効

 50代、60代で亡くなる日本人女性の死因の半分以上をがんが占めています。中でも乳がんと大腸がんが一多いと思われます。原因はいろいろありますが、この年代の方は主婦だったり、会社員じゃなかったりして、検診を受ける機会の少ない方が多いんです。区などでも検診はやっていますが、なかなか自分から予約してまで行かない。また、20代や30代でも、子育てや子どもの受験など、自分の事を後回しにする傾向があります。まずは子ども、まずは旦那さん、と。しかしそれは間違いです。女性が倒れると、男性やお子さんに大きな影響を与えます。特に子どもは小さい時にお母さんを亡くすと、ものすごく影響が出ます。ですから、まずお母さんが自分の体を自分で守っていかなくてはいけません。乳がんは検診が有効と言われているがんです。検診を受ければ早期で発見でき、亡くなる人が少なくなる。特に自分の家系で乳がんにかかった方がいる人は、必ず検診を受けて下さい。