そもそも代々木公園は現在どういう状況なのか?【渋谷未来デザイン 金山淳吾理事インタビュー(中)】

昨年11月1日にはスタジアム利用者に近い人々を呼んで話を聞いた。写真は第1部に参加したJリーグサポーターの面々
「公園空間を静かに暮らしたいという人たちに賛成してもらうのが一番難しい」

 一番の問題は静かに暮らしたいという人にどう納得してもらえるか、なのかと。

「静かさを求める人の中には、近隣に住んでいて静かに暮らしたいという人と公園で静かに過ごしたいという人の2種類があると思うんです。近隣に住む人たちの静かさの担保というのが課題としては一番大きい。例えば、スタジアムを作るとした時に全天候型かどうかということでも大きく変わってくる。今の日本のサッカーの規定は天然芝、もしくはハイブリッド芝を敷きましょうとなっている。そうなるとなかなか全天候型というのは厳しいんですけど、全天候型にすることで音はかなり遮ることができる。音の問題はそれでかなり解決できる可能性があるんじゃないかと思うんです。そうなるとスポーツ、特にサッカーで使うときにどういう不都合があるのかということをひとつひとつ解いていかないといけなくなる。もう1個の騒音は、そこから流れるもの、例えば音楽のイベントをやった時の音は、“それくらいの騒音は仕方ない。今でもイベントはやっていますよね”ということでクリアできたとしても、人が毎日3万人集まることについてはどうなんだ、ということになっていくと思うんです。今でも、B地区では例えば渋谷区民フェスティバルというものを11月に2日間やっているんですが、30万人くらい人が来る。それに毎週あそこには4万~5万人の人がフードフェスティバルなんかで来ている。そういう場所なので。まあ終日でばらけてはいるんですが、この延長線上で土日になにかうるさくてたまらない、という声があるかといえば、そこは意外とないんです。あとはみんな365日使うと思っていますが、音楽のイベントだと仕込みなどで3日間くらい取るので結局週末型になるというか、せいぜい使って木金土日くらいなので、そこら辺をちゃんと説明して現実的な稼働日数だとか想定される人の流れとかを整理していくと意外と理解は得られるんじゃないかと思っています。もちろんそれでも反対される方はいると思いますが」

 100%賛成はあり得ない。

「難しいですね。公園空間を静かに暮らしたいという人たちが一番難しくて。なぜなら、やはり都民全体のものなので、そういう人たちに対して、どういう静けさというものをエリア的に担保できるかというのが非常に課題なのではないかと思います。なので、現在発表している構想では“B地区で”としているんですが、例えばA地区にB地区にあるバスケットコートや陸上のトラックの機能を移設するというシナリオも合わせて考えないといけないと思っています。その時にA地区の、芝生があって森があってという公園の中で、静かに過ごしたいという人たちの場所をどう作ってあげられるかというのが課題になってくると思います。ただ、東京都の公園は維持管理費の問題などがあって、いい付加価値サービスができていないと思うんです。こういう大きな興行を担えるような機能があれば、そこで稼げたお金でほかの部分の整備もやれるとすれば、そういう静かに過ごしたい人たちのための居場所とか景色を作ってあげられることはできるんじゃないかと思っています。例えば代々木公園の池がありますよね。噴水機能もあるんですが、うまく使えていないんです。そんなにうまく循環できていないし、あそこに子供が入っていくと汚いんじゃないかって心配になる。そういうところを再整備してあげられるとか、ということができる可能性がありますよね」  (本紙・本吉英人)
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