【徳井健太の菩薩目線】第22回 令和の時代に、俺は幼稚園を作りたい

子どもの自由な発想にこそ親は育てられる



 実際、虐待のニュースを耳にすると、まったく意味が分からない。俺が育てた方がいいんじゃないのか……俺の方が、おそらく愛情をもって、育てることできるんじゃないかって、頭がヒリヒリしてくる。嫁にも、「もしもお前が他の男と子どもを作ってしまったとしても、俺が育てる」と伝えているんだ。嫁からは、応答がないけどね。実子と養子を育てるアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットこそ、今の俺のアイドルなんだ。
 
 お笑い芸人は、俺のようなクズみたい奴が多い。でも、こうやって社会でなんとか生きていけて、場合によっては人から必要とされる場面もある。おまけに、結婚をして子どもと一緒に暮らせている。そういう人間だからこそ、子どもたちに伝えられることがあるんじゃないのかって、真剣に考えるの。俺ももう若手じゃないからさ、おじさんだからいろいろと思うところがあるわけ。

 先月、長男が小学校を卒業する際に、形式的ではあったけど、親に対して作文を読み上げるって一幕があった。その時に、

 「12年間育ててくれてありがとう」

 って、息子が読み上げたんだけど……心底、恐れ多かった。俺たちからしたら、「お前が育ってくれたんであって、“育ててくれた”なんて言葉はおこがましいにも程がある。むしろ、子育てをする中で、いろいろ学ばせてくれてありがとう」としか思えなかった。

 子どもって、愛情を注げば、勝手に育つもの。8割以上は嫁が育てたわけで、俺なんか最低限の親の務めしか果たせていない。

 たまに親御さんの中に、「ここまで育ててきたのに」とか、「こんなに手塩にかけてきたのに」なんて言葉を口にする人がいるけど、俺からしたら異常な親にしか映らない。よく、そんな自意識過剰なことが言えるなって。子どものことを、まったく信用していない親なんだなって思う。

 子どもは、俺たちの想像の範疇を、余裕で飛び越えるような自由な発想や考え方を持っている。そのたびに、俺はふと立ち止まって、「大人がそう決めつけているだけで、そういう考え方もあったか」って、ニヤニヤしてしまう。

 だからさ、そういう子どもたちをのびのびと育ててあげるような環境を作りたいんだよね。それって、ひるがえって色眼鏡をかけた大人ばかりになってしまった現代人の処方箋にもなると思うんだよね。





※徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
【プロフィル】とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
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