「尾崎世界観は、私たちが大声で言えないことを言ってくれる」クリープハイプ最新ツアーライブリポート

撮影・冨田味我

尾崎世界観は、私たちが大声で言えないことを言ってくれる



2曲目、最新アルバムの中から「泣き笑い」。バンドサウンドと共に、客席から無数の手が伸びた。ホールが、縦に揺れたような気がした。その後、映画『帝一の國』の主題歌にもなった「イト」が続き、会場のボルテージもあがっていった。

しかし、尾崎はMCの一言め、「半端だなあ」と言った。クリープハイプのファンは元気がない、と。好きに楽しんでくれ、と言った。
半端だと漏らしながら、その半端さを喜んでいるように見えた。

その後、最新アルバムから「禁煙」「おばけでいいからはやくきて」、2ndアルバムからベースの長谷川カオナシボーカルの「かえるの唄」と続く。長谷川作曲の曲はライブではキラーチューン。会場がどんどん暑くなっていた。この辺りで、羽織っていたシャツを脱いだ。

次のMCで、尾崎はこんなふうに話した。

「ツアーを回っていると、身の丈に合ったお客さんが来ているなと感じます。クリープハイプのファンは、最前でしんどそうだと言われるのは悔しいけど…こういうバンドが好きなんだから、しょうがないでしょ。でも、派手に動いたり大きい声を出す人が偉いワケではないと思います」

ライブが始まる前に、近くの席にいた女性に「なぜクリープハイプが好きなのか」を聞いていた。今年24歳だという女性は、こう話していた。

「自分が言えないことを、大声で言ってくれるから。会社に向かう電車の中で、何度クリープハイプに助けられたか分からない」

尾崎のMCを聞いて、「ああ、こういうことなのだろうな」と、その女性の気持ちがわかったような気がした。