avengers in sci-fiがクラウドファンディングでライブをDVD化!驚異の455%達成

photo Ai Yakou

バンド、ライブハウス。くだらない垣根をサラリと乗り越えたアベンズ



 MCだけがいつもどおりの3人だ。語るGt・木幡、ゆるく突っ込むBa.稲見とDr.長谷川。MCの後は2018年の『Pixels EP』から「True Color」、「Hooray For The World」。そしてキラーチューンの「I Was Born To Dance With You」と続く。木幡と稲見がサンプラーを使ってその場で行うトラックメイキングに、さらにメンバーの楽器が乗る。これもライブハウスではなかなか見ない光景だろう。

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 サイケデリックなエフェクトが重なって、木幡のボーカルすらも飲み込んでいく。演奏に合わせて、レーザービームも波動を変えていく。いよいよ宇宙にいるような、浮遊感すら感じ始めた。ギターの音はもう聞こえない。「バンドなのに?」そう尋ねる人がいるかもしれない。しかしこのビートは今ここで、avengers in sci-fiが作ったし、どの音がギターなのか、ベースなのか、もう分からないけれど、彼らは今目の前で演奏している。

 これはまごうことなくバンドサウンドで、ここはライブハウス。

 しかし、avengers in sci-fiというバンドは、その「バンドはギターとベースとドラム」だとか、「ライブハウスとクラブは違う」とか、そんな小さな違いはとっくに飛び越えていた。彼らのライブスタンスはもうだいぶ昔からこういったエフェクターを使いこなすネオバンドだったし、むしろそんな彼らに、今やっと演出が追いついたような気がした。
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 MCを挟んで、同じく『Pixels EP』から「2019 (No Heroes)」。今度はステージ脇から、原曲でもフューチャリングしているTENG GANG STARR・kamu と 、同じくEP内でRemix出演していたLil’E a.k.a eiichi kogreyが登場してラップを披露。

 最近ではヒップホップの流行とともに、バンドアーティストとラッパーとが混ざり合って出演するイベントも増えたが、そこで見る光景ともまた違う。耳からはトラックとラップが聞こえ、目ではバンドセットのavengers in sci-fiを捉える。周りの観客は横ノリになっていた。ここはクラブでも、ライブハウスでもないのかもしれない。avengers in sci-fiは、そんな「新境地」をライブハウスに作りあげてしまったのだ。

 かと思えばがっつりロックサウンドが響く「Dune」、「Citizen Songs」のような楽曲も、先ほどからの鮮やかなつなぎで始まる。そして最後の一曲はSF映画のような浮遊感の「indigo」。自分が渋谷にいることも忘れた。VJには月が映っていた。もしかしたら、宇宙まで来てしまったのかもしれない。

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自主レーベルで自由に、しかも前に進んでいく



 avengers in sci-fiは2017年、ビクターエンタテイメントとの契約を解消し、自主レーベル「SCIENCE ACTION(サイエンスアクション)」を立ち上げて活動を続けてきた。去年出した『Pixels EP』も彼らの自主制作。それに伴って発表されたMVも自主制作によるもの。
2018年に本サイトでインタビューした際も「自主レーベルとして活動するのは大変なことも多い。全部自分たちでやらなくてはいけなくなってしまった」と笑って話していた。

 そして今年彼らは自主制作による、大規模なクラウドファウンディングライブを成功させた。バンドとして活動するプレーヤーたちは、「売れたい」と願いながらも、自分たちの続けたい音楽と、レーベルの提示する方向性とに悩むこともあるだろう。

 しかしavengers in sci-fiは今、自主レーベルとして活動し、自身の創作意欲のままのライブと音楽を作り続けている。「個の力」「フリーランスブーム」なんてものも叫ばれているが、音楽の現場でもそれが成り立つのかもしれない、だってアベンズは、「フリーランスバンド」と呼べるような活動をしているではないか。

 もしかしたら、これが表現者であるバンドが望む最善の形なのではないだろうか。自分たちの好きな音楽を、自分たちが用意したレーザービームの花道で演奏するアベンズの表情は輝いていた。

(取材と文・ミクニシオリ)

avengers in sci-fi:https://twitter.com/avengers_info
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