【インタビュー】葵わかな  映画『任俠学園』で“全員善人”を相手に大暴れ!?


 笑いの絶えない現場だった。

「とくに西島さんがすごい“ゲラ”なんです。直接お会いするまでは、アクションやシリアスな役どころでの印象が強かったんですが、今回ご一緒させていただいて、こんなに笑う方なのかと驚きました。木村監督の演出に面白いシーンが多かったというのもあるんですが、リハーサル中に西島さんが笑ってしまって、もう1回やることもありました(笑)。西田敏行さんや、伊藤淳史さん、池田鉄洋さんのアドリブも本当に面白くて、私たちも笑いが止まらなくなってしまったり。阿岐本組の皆さんは世代もバラバラなんですけど一体感があって、そのノリがなんだか男子高校生みたいなんです。ご飯を食べに行こうとなればみんなで行くし、飲み物を買いに行こうとなればみんなで行く(笑)。しだいに私たち若手も一緒に交じって、なんだか高校時代に戻ったような気持ちになりました。意識されてのことかは分からないんですが、そういう温かい空気感を作ってくださっていたのは、やっぱり西島さんだったと思います」

 西島が演じる日村と最初にぶつかるのが、葵が演じる学園一の問題児ちひろ。血の気の多いひねくれ者だが、実はまっすぐな正義感の持ち主。そして中身が“おっさん”。

「その場で監督の指示に沿って演じるうちに、気づいたら、ああいうキャラクターが完成していました。急に任侠映画や昭和世代のギャグが好きという設定が加わったりして、“マサカリ投法”って何だろうと思いながら演じていました(笑)。クセのある生徒たちの中でも、ちひろは一番素直じゃなさそうに見えて実はすごく素直。もし阿岐本組が現れなかったらずっと周りから誤解されながら生きていたかもしれないけど、気持ちを理解してくれる人たちと出会えて、救われたんじゃないかなと思います。ちひろと阿岐本組の人たちって、不器用でまじめな感じがけっこう似ているのかもしれません。阿岐本組に入れるかもしれないですね(笑)」

 コワモテのヤクザにも平気で食って掛かる強烈な女子高生だが…。

「これまで演じたことの無いタイプの人物だったので新鮮でした。現場に入るときも挑戦する気持ちで入ったんですが、監督や周りの方々にいろいろなことを教えていただいて、当初思っていたよりも2倍3倍の新たな経験を得ることができました。髪を赤くしたのもスカートを短く折ったのも初めてでしたし、最初のほうで西島さんが演じる日村を殴るシーンがあるんですけど、そういう芝居も初めてでした。でも西島さんが“こうやると殴っているように見えるんだよ”と、いろいろと教えてくださって。西島さんの足を踏むシーンもあって、本当に踏んでしまったら…と思って怖かったんですけど“ここを踏むと踏んでいるように見えるんだよ”とか“ここは踏んでも痛くないんだよ”といろいろ教えていただきました」

 暴言セリフを大っぴらに言えたのはスッキリしたと笑いつつ演じる難しさも振り返る。

「本当に難しかったです。監督からの指示を“ヒット”で返せたかな、というときはあっても“ホームラン”だったと自分で思えたことは残念ながら、ないですね。私が意識していたのは、いかにおじさんっぽさを出すか。監督がやって見せてくださるんですが当然、監督は私より“おじさん”らしさを出すのが上手なので(笑)、同じようにやろうとしても難しくて。試行錯誤していたんですが、西島さんをはじめ阿岐本組の皆さんもアドバイスしてくださって、参考にさせていただきました。これまで自分におじさんの要素を求めたことが無かったので(笑)少し不安もあったんですが、完成作を見て、カレーを食べて“うめえ!”と言う場面とか“阿岐本組三カ条!”と言う場面は、アドバイスや練習の成果もあってなかなか、おじさんぽさが出たんじゃないかなと思います」
  
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)