松尾スズキが芸術監督に就任。「シアターコクーンを不真面目な色気のある劇場にしたい」

破天荒な司会っぷりを見せた皆川猿時
「劇場くらい倫理とか道徳とかから解放された空間があってもいいんじゃないか」

 しかしこの日の会見は大人計画の皆川猿時が司会を務め、いきなり「本日は松尾スズキ、シアターコクーン芸術監督就任謝罪会見にお集まりいただき誠にありがとうございます」と始めるといった破天荒なもので「今までシアターコクーンを支えてくれた南平台や松濤、代々木上原のマダムたちがどう思うか。なによりも硬い親会社になんと言われるかドキドキしている」と本音ともジョークともとれる発言もポロリ。

 続いて松尾がバンドの生演奏とコーラス隊の歌に乗って会場に登場。こちらも皆川の司会っぷりが予想を越えていたのか「本日は台風で首都圏が混乱する中、こんな混乱した就任式を始めてしまって誠に申し訳ありません」と第一声。

 芸術監督という仕事については「だいたいは分かっているが、あんまりよく分かっていない。公共の(劇場の)芸術監督とこういう私企業の劇場の芸術監督というのはちょっと違うよう。でも私なりに考えたのは、その劇場から演出家の色を出していくことなんじゃないかということ。蜷川さんはアングラ的な感覚を商業演劇に持ち込んだ。串田さんは音楽の面を強く打ち出した。そういうことから私の色はなにかと考えると、いい意味で“不真面目なにおいがする”ということかと思っている。演出家もやりますけど、作家もやって、映画監督もやる。節操がありません。他の演出家に比べて、真面目に(演劇を)追求しているというイメージがないかもしれないが、演劇を動かす力というのは2つあると思っていて、ひとつは芸術的なアカデミックな側面、もうひとつは人気商売・客商売という“人気が大事”という側面。今はこの両方が演劇界の中で2つに分かれて交わっていないというイメージ。そこを行き来するにはある種の不真面目さが必要なのかなという感じがして、私はシアターコクーンを“不真面目な色気のある劇場”にしていきたい」などと抱負を述べた。

 この「不真面目」というのは「コンプライアンスとかいろいろな話で、どんどん世の中が窮屈になっている時代に、劇場くらい倫理とか道徳とかから解放された空間があってもいいんじゃないかな、と思っていて、そういう意味での不真面目さ」とのこと。