映画監督・瀬々敬久が語る「映画とミステリー」


 人はなぜ犯罪ミステリーに引かれてしまうのか。そしてなぜ描きたいと思うのか。

「そこには謎があるからでしょうね。なぜこんなことが起こるんだろう、なぜこんなことをしたんだろうという謎がね。我々が見る日々のニュースでも、いろいろな事件が伝えられる。それを見て、なぜこんな悲惨なことが、と思う。そしてその疑問は、どうして人間は生きているんだろうという根源的な問いにつながっていると思うんです。この世界はこんなに悲惨なことが起きるのに、なぜ人は生きていかなければならないんだろう、とね。なぜ生きるのか。なぜ愛するのか。そういう根源的な問いが解き明かされることは無いんですけど、少しでも迫りたい。そこに対するアプローチとして、僕は映画として“罪”や“人”を描いているのかなと思います」

 秋の夜長は鑑賞後や読後に考えさせる作品にふれてみるのも良いかもしれない。

「物語の最後に救いがあるかどうかはとらえ方しだいだとは思いますが、僕は『青田Y字路』、『万屋善次郎』を読んだとき、豪士がここではない向こうの世界へ行こうとするような、何かを越えようとする姿のほうが印象的に心に残ったんです。善次郎も、愛犬との描写がつづられている。ここではないどこかを願った人々の物語、それは映画のタイトルにも通じるものだと思っています」

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)