車いすラグビー、大激戦のセミファイナル!日本はオーストラリアに1点差で惜敗

記者の質問に答えるケビンHC。対戦相手のオーストラリアは「チャンスを必ず掴んでいく強さがある」とし、賞賛した
わずか1点差の惜敗

「落ち込んでいます」。試合後、そう語り肩を落としたケビンヘッドコーチ。敗因を「信じる力」だとし、「チーム全体が“自分たちは勝てる”、というのをどこまで信じられたか、そこが鍵だったように思います。勝ちたいという“Hope”でなく、絶対に勝つという“Believe”。私はコーチとして日本はそれができると信じていますが、どこまで選手たちに浸透できるか。今日の試合の中でもチャンスはいくつかありましたが、上手く使えなかった。まさにそういった部分です」と、勝ち切れなかった点に悔しさを滲ませた。

前半でオーストラリアに2点のリードを許しながらも、第3ピリオドでは同点に追い付き、決して引けを取らなかった日本。オーストラリア得点源のエース、ライリー・バッド(3.5)やクリス・ボンド(3.5)らにも果敢にディフェンスを仕掛け、パスカットで相手からボールを奪うターンオーバーを成功させる場面もあった。
試合終了の残り時間数秒までトライを決め続けた池崎(写真・PARAPHOTO 秋冨哲生)
1点を埋めるために

しかし、これまでも僅差で勝敗を繰り返してきた両国にとって、1点の持つ意味は大きい。「勝てたかもしれない試合」をものに出来なかった要因は何か。エース池崎大輔(3.0)は攻撃面について、「ラインにボールが出た時に詰め切れるところを詰め切れなかった。車いすの角度なのか、ポジショニングなのか、コミュニケーションが足りなくて人がいなかったのか。そういう細かいところの精度は今後強化していかなきゃいけないです」と振り返った。
守備だけでなくトライも決めるローポインターの乗松。会場からは「乗松コール」も飛び出した(写真・PARAPHOTO 秋冨哲生)
障害の重いローポインターでありながら、後半で5得点のトライを決めた乗松聖矢(1.5)は、「個人としては、キーアタック(ゴール前の「キーエリア」と呼ばれるゾーンでの攻撃)のところでパスの想像性や勇気が足りなかった。チームとしては、オーストラリアはキーディフェンス(キーエリア内に3人配置してゴールを守るフォーメーション)がきちんと連動していた。でも僕らはそれに対応できていなかった。国内で練習するときも、相手を想定したものを自分たちで再現していく必要があると思います」と分析した。
「2020年は観客の皆さんを最高の笑顔にできるようなプレーをしたい」と語るキャプテン池(写真・PARAPHOTO 秋冨哲生)
キャプテン池透暢(3.0)は守備についても語った。「ライリー選手はプレーで変化をつくるのが上手いんです。その変化の読み合いと駆け引き。どういうポジションを取るべきなのか、もう一度分析する必要があると思います」と課題を語った。

「“金メダルが取れるかもしれないチーム”でなく、“取れるチーム”に変えなきゃいけない」。池の言葉からは、勝ち切ることの難しさを改めて感じさせた。ラストゲームの20日、日本はイギリスとの3位決定戦に臨む。

(取材・文 丸山裕理)
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