ケニアのバラを届ける萩生田愛さんが伝える 対等な関係性が作り出す本当のサポート



 自信が揺らぎ始めたとき、ナイロビ市内で簡素な花屋と出会う。目に飛び込んできたのは、今まで見にしたことがないようなバラだった。生け花(華道)の草月流師範の免許を持っていた彼女は、「あまりにキラキラしていて、生命力に圧倒されてしまった」と胸中を振り返る。

 「フローリストに確認すると、ケニアはバラの生産大国なんだ、と誇らしげに話すんですね。「働くってこういうことだ」って思いました。支援ではなく、ビジネスとして関係性を築くことができれば、このフローリストのような人が増えるのではないかって。日本に広め、ケニアのバラを見て喜ぶ人が増えれば、雇用が増えたり、子どもたちが安心して学校に通ったりすることができるのはないかと、考えるようになりました」

 バラの花言葉は、「愛」。だけど、アフリカローズに象徴させるサバンナの夕日のような鮮やかなオレンジのバラの花言葉は、「絆」、「信頼」。本当のパートナーシップを築くため、萩生田さんはケニアのバラを日本で流通させるべく奔走し始める。

 「何もない状況からのスタートでしたから、手あたり次第に調べていくという状況です。あるとき、“ケニア産大特価”というような形でケニアのバラが売られていました。でも、私が現地で見たものとはまるで別物。アフリカだから安かろう悪かろうみたいな感じが許せなかった!(笑)  「ケニアのバラは本当はもっと素晴らしいのに!」、そういった憤りも原動力になりましたね」

 また、原産地ケニアのバラ農園にもこだわりがあったと明かす。以下の三つは、どうしても譲れなかった。

 「“子どもを働かせていないこと”、“(マスクやグローブを着用するなど)環境に配慮された労働環境であること”、“過酷な重労働になっていないこと”、この三つを守ってくれる農園さん。対等な関係を築きたかった」

 はじめてケニアからバラが届いた日のことは、今でも忘れられない。

 「本当にアフリカから届くのか、ドキドキしながら空港に向かいました。段ボールが届いて、500本のバラを確認したときは……感動しました。でも、人間と同じように長時間のフライトに疲れてしまったのか、花が疲れていて。不安に感じていたのですが、自宅に持ち帰って水揚げしてみると、2~ 3時間後にはピンピンによみがえり、葉っぱが水を吸っている音が聞こえるくらい元気を取り戻していく(笑)。ケニアのバラの生命力の強さを再認識しました。その日は、今でも昨日のことのように覚えています」

 ケニアのバラの魅力を、まさしく“草の根”で広めていき、徐々にファンを拡大。広尾にオープンした一号店は、クラウドファンディングで資金を集めた。内装も、アフリカローズファンのお客さんと一緒に作った。ケニアのバラは、信頼を作り続けている。

 「バラの輸入を始めて、来年で8年目になります。単なる支援・援助ではなく、雇用を作るなどの効果をもたらすことができているか、ということは常に意識しています。先日も、ケニアに足を運び、実情を見てきました。おかげさまで、コーヒーや紅茶といった産業に比べると収入も高く 、農園の食堂では会社から無料でランチを提供する、敷地内にある24時間のクリニックを無償で受診できるなど、この数年で大きく変わってきていると感じます。

 一方で、トイレが整備されていなかったり、子どもたちへのサポートが十分ではなかったり、まだまだいろいろなサポートが必要と痛感しました。雇用がないところへ支援をすることは怠惰を生み出す原因になりかねませんが、雇用がある場所に関しては支援をしていく。現地のモチベーションアップや生活の豊かさにつながるサポートをしていきたいです」

 萩生田さんの行動力、その源を保つ上で何が大切なのか。尋ねてみると――

 「お花の水を変えて、水切りをする5分の余裕を持つこと。花が枯れてしまうときって、自分の心に余裕がないときなんですよね。5分早く起きる、5分早く準備すると、水を取り替える余裕が生まれます。水を替える時間って、ちょうど良いパロメーターになると思います。 水切りをする5分の余裕を持つ、それが余裕のある生活につながるのかなって思います」

 花のある生活は空間だけではない、心も豊かにする。

【番組INFO】

アクティブオーガニック「Be」presents「BeStyle」は、TBSラジオで、毎週土曜午前5時30分~6時にオンエア。radikoでも聴取可。詳しくはHPを参照。
https://www.tbsradio.jp/be/

また、当日の模様は、以下のYoutube「Be Style」チャンネルからも視聴可能。
あなたの「なりたい」が見つかるかも――。
https://www.youtube.com/channel/UCtEhEgJPGJQ9IX4y5vbmESw/featured

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