保育士もフリーランス化広がる! 保護者にもハッピーな新しい働きかた



個の時代、保育士もフリーランス化



話を聞いた元公務員保育士の女性は、9年間の保育士時代の中で、さまざまな「働きづらさ」を感じていたという。

「子どものことが好きな人ほど、続けていくのが難しい仕事だと感じ、私自身今年の春に9年続けた公務員保育士を辞めました。女性職場ならではの問題として、結婚や出産に”順番待ち”のような雰囲気があったり、女性ばかりの職場なのに、行事ごとなどで会場設営などの力仕事が多いことなど、根本的な問題に不満を抱えている先生もたくさんいました。かくいう私も、そういった女職場として生じる無理に加えて、自分が子どもにしてあげたい保育と、園として行っていく保育の考え方が噛み合わず退職に至りました。でも、保育の現場はやっぱり好きで。そう思って始めたのが、フリーランスのベビーシッターでした」

 保育士というと、どうしても保育園や幼稚園での働き方が当たり前のように感じるが、彼女はフリーランスの知識なしに、個人としてベビーシッターの仕事を取って、公務員時代と同じくらい給料を得ることができているという。

「今はクラウドソーシングのような形で、アプリ上でベビーシッターと保護者をつなげてくれるサービスを使って仕事を得ています。需要は都会に寄っている面もあるかもしれませんが、少なくとも東京ではベビーシッターの需要は十分にあります。アプリでは子どもを預けたい親と、その日空いているシッターをマッチングしてくれます。メッセージをやりとりして、時給の交渉などが決定したら実際に自宅保育を行います」



子どもと保育士が密にコミュニケーションできる



 保護者が子どもを預けたい理由はさまざまで、保育園などに入れず、定期的に自宅保育してくれるシッターを探している人もいれば、外せない用事があるときなどに子どもを見ていてくれるシッターを探す人もいるという。ベビーシッターと言っても乳幼児だけが保育の対象ではなく、人によっては小学生くらいの子どもでも保育を希望する保護者もいる。

「自分自身、保育士としてもシッターとしても働いてみて思ったのは、シッターの方が、子ども一人ひとりと密なコミュニケーションができるということです。園では保育士も数十人の子どもを一気に見るので、保育士による子どもの教育というよりは、共同生活を送ることがメインという感じ。それに比べるとシッターなら、一つの家庭で1〜2人くらいの子どもを見ることが多いので、子ども一人の細かい行動まで保育することができます。シッター中も工作をしたり外遊びをしたり、割と自由に保育させてくれる保護者も多いので、自分らしい保育をすることができるのがうれしいです」

 園での保育と比べると子どもと距離の近い保育ができるというベビーシッターの仕事は、より子どもや保護者と、それぞれのベビーシッターとのマッチング率の良さも重要になってくるという。

「子どもや保護者も人ですから、より人柄や性格の合うシッターとのマッチングが重要だと思います。本来園でもそうなはずですが、やはり人数の多さから、一人ひとり保育の合う子どもを選ぶわけにも行きません。その点、シッターなら子どもと気があったシッターにずっと定期的に頼めるというのは保護者のメリットでもあると思います。保護者側が保育者を選べるので、家庭の教育理念に合う保育ができるシッターを選択することで、内向的な子や難しい子でも心を開きやすい保育者を見つけられると思います」

 人によってピアノレッスンができたり、勉強を教えられるシッターもいるという。

 今は定期的なシッティングの予約で平日がほぼ埋まっているという彼女。保育士側も自分と性質の合う保護者や子どもを選ぶことができるので、仕事のストレスはほとんどないという。

 1月からは個人事業主の所得税が減税になり、代わりに年収850万円を超える公務員や会社員が消費税額が増税となった。2020年も働き方の「個人化」はさらに進みそうだ。


(取材と文・ミクニシオリ)
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