【インタビュー】大泉洋 × 小池栄子 太宰治・未完の作が笑って泣けるロマンティックコメディーに!

[小池栄子]ヘアメイク・山口公一(スラング)、スタイリスト・えなみ眞理子、衣装協力・ワンピース:ランバン オン ブルー(3万6000円 問合せ先:レリアン〈ランバン オン ブルー〉03-5491-8862)
大泉「いやこれは極力、集中力を温存しようとしているんです」

小池「こんなことをしていて、かわいいなと許される大人って、あまりいないと思うんです。それが大泉洋の魅力です(笑)。成島監督は、田島に大泉さんの要素をけっこう入れていると思います」

 優柔不断なくせに、なぜか女にはめっぽうモテる文芸誌編集長・田島周二。気づけば何人も愛人を抱えて困りはて、ついに女たちとの清算を決意。すんなり引き下がってもらうために、金にがめつく大食いだが実は美貌の持ち主だった担ぎ屋・キヌ子に「嘘(にせ)の妻」を演じさせ、愛人たちに別れを告げに行くのだが…。

 まったく正反対の田島とキヌ子。夫婦漫才さながらの会話劇で笑わせたかと思いきや、いつしかお互いを意識し始める不器用な2人にドキリ。

小池「病院で、クタっとなった田島をキヌ子がポン、と叩くところとか好きですね。ガサツだけど意識した男性にはどう触れていいのか分からないんだろうなという、恋愛第一歩みたいなシーンで。あそこはキヌ子が変化するポイント、田島を受け入れるんだろうな、と思えるシーンでもあると思う」

大泉「僕は、キヌ子が田島の妻からの手紙を隠そうとして口に入れちゃうシーン。あの小池さんの、口に紙を入れる、その入れ方がすごく好きなんですよね。けっこう紙が大きいんだけど、あれがみるみる口に収まっていくのが面白くて(笑)。舞台でも何度もやっていたというけど、映像で見ても面白かったな」

小池「あれは普通の紙なんですけど、舞台では後ろの人にも見えるようにもっと大きな固い紙だったので、何回か口の中を切りました。口から紙を出したら血だらけになっていて、田島さんがびっくりする、という日が何回かありました(笑)。途中から柔らかめの紙に変えてもらいましたけど。まあ、やっぱりコメディーって照れちゃダメなんですよね」

大泉「その通りですね。あの場面も細かいところだけど、なかなかああいうふうにできる人はいないんだろうな、と。改めて小池さんはすてきだなと思いました」

 優柔不断で情けないダメ男・田島と、ガサツで“カラス声”のキヌ子。そんな2人が、いつしか本当に魅力的に見えてくるのも、映画の魔法。

小池「私、田島が仕事をしている姿なども好きでしたね。あと、自暴自棄になって“僕は女がいないとダメなんだ!”と叫んでいるシーンとか、言っていることはめちゃくちゃなのに、そんなセリフをシリアスに言えるところなんて、少しドキッとしちゃいます(笑)。そこはスクリーンで初めて見た場面でもあったので、ちょっと鳥肌が立つくらい印象的でした」

大泉「キヌ子はまず、突然美しくなって現れるから、誰でもハッとしますよね。あと、普段は田島に対してものすごく強いのに、恋愛に対してうぶな感じとかもチャーミングで。…確かに、田島が襲いかかりたくなった気持ちも分かるな(笑)。田島も、お願いすればもうちょっと何とかなると思ったんでしょうね。それがまさか2階から投げられるとは…(笑)」

 ワケありの2人の恋は簡単には成就しない。田島の“告白”シーンは、なんとアクションバイオレンス映画さながらの事態に…!?
大泉「実際、今回はアクション部がいて、しっかり殺陣がついていたんです。さすがに小池さんも、タンスを担ぐシーンはちょっと躊躇してましたよね」

小池「タンスを担いでみて、って…普通、無理だよって思いますよね(笑)。しかも担ぐときに、カラス声がだんだん白鳥に変わっていく…という指示を監督から頂いたんです。それが、恋をして美しく声変わりする、みたいなニュアンスも含んでいたらしかったんですが、やってみてと言われるんですけど、さすがにそのシーンは苦労しました(笑)」

大泉「あれは格闘シーンのようでいて、監督からすれば究極のラブシーンなんでしょうね。僕も現場で似たようなことを言ってたんです。この場面、田島はもう興奮してますよねって(笑)」

小池「あの場面、田島さん、腰を振っていましたよね(笑)。監督は、台所に立ったキヌ子の“ケツを舐め回すように見ろ”とも言っていました」

大泉「僕は、もっとかっこいい役だと思っていたんです。一見、情けない男であっても、やはり女性にモテるわけですし。ところが成島監督の演出で、シーンごとに少しずつ変態性が足されていくんです。“これ、もう変態じゃないですか”と言ったんですけど監督は“大丈夫、絶対そう見えない、かわいく見えるから”って。舐め回すように尻を見ろとか、尻にしがみついた瞬間に恍惚の表情を浮かべろといった細かい指示を出されるので、本気!?と思いましたよ」