不毛の土地を究極の自然派農場に変えた男『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

©2018 FarmLore Films, LLC 
 規格に沿った作物を大量に収穫する大規模農業がどこの国でも一般的。
「日本は農業の補助金が年間で650憶ドルあって、一人当たりの補助金額が世界でもダントツに多いことを知ってる? アメリカにも言えることだけど、じゃあその補助金のうちどれだけが僕らのような再生的な農業にあてられているか。大規模農業の流通量をコントロールするために補助金が使われ、作物が無駄になってしまうこともあるなんておかしいよね。でも今のアメリカ政府は、より企業的な農業にばかり補助金を出して、商品的な作物を作らせている。しかも僕らのやり方で農業をしているとメジャーな流通には乗せられず、消費者に直接売らなければならない。でもそれによって正当な利益を得ることもできるんだ」

 実は、農場の商品で最初に評判になったのはニワトリの卵だった。

「ウチの卵を5年間、栄養分析したところ、ビタミンAやルチン、オメガ類の比率が年々増えているんだ。与えるエサはずっと同じなのなぜかというと、平飼いをしているので彼らの食べ物の半分は、彼らが過ごしている牧草地の草や虫なんだ。でも僕らはより栄養価の高い草やミミズを育てようと思ったことなんてない。土を健康にしようとしただけなんだ。土が良くなったおかげで、虫が健康になり、その虫を食べる鶏が健康になり、おいしい卵を産んでくれる。卵は本当に人気の商品で、棚に置くと奪い合いになるから並んでもらって一人に一つずつ販売しているくらい(笑)。他にもアボカドは脂肪分が豊富で、すごくリッチな味わいだし、リンゴはミネラルが豊富でリンゴ本来の味わいが強い。僕らが育てているものはどれも味が良くて、食べるとはっきり違いが分かる。それもすべて土壌が良いからなんだ。再生型農業は土壌をいやし、より栄養価が高い作物が育てることができる、未来を考えた農業だ。そのやり方が分かった今こそ、土壌を疲弊させてしまう従来の農業を変えるチャンスだと思うよ」
『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』
監督:ジョン・チェスター/シンカ配給/3月14日よりシネスイッチ銀座他にて公開 
http://synca.jp/biglittle/ 
<<< 1 2 3