五輪開催まであと1年。池江の涙に見る「アスリートの声」

聖火が灯ったランタンを拾い上げる池江(Photo by Tokyo 2020 / Shugo TAKEMI)
届きづらい「アスリートの声」

 一方で、演出を務めるクリエーティブ・ディレクター佐々木宏氏は「IOCや組織委、政財界の声は聞こえる一方で、アスリートの皆さんが“どういう気持ちでいるか”の発信が少ないように思えた。皆さんの気持ちを思うと、“延期”や“中止”という言葉が行き交っているのが少し残念だなと思っていました」と、改めてアスリートファーストについて言及。

 池江を起用した理由を「闘病の結果、見事に復活してプールにまた入られた。ほかのアスリートの方とは少し意味合いが違うかもしれませんが、同じように2020を諦めて、再びオリンピックを目指すアスリートとして、強いメッセージを発する的確な人だと思いました」と説明した。

五輪批判の中で

 東京オリンピック・パラリンピックを巡っては、開催そのものへの批判の声もある。

 こうした状況で迎えた1年前に佐々木氏は、「生活や健康など心配ごとがある中で、スポーツやエンタメが不謹慎と捉えられることもあったと思う」とした上で、「ただ、希望があればまだ頑張れる。ずっと暗い気持ちで何の目標がないのと、どんな楽しいことが待っているかと考えるのでは違う。それは池江さんとも話しました。そう簡単なことではないと考えながらも、経済と自粛とではなくて、“ハッピーで楽しいことも考えながら、いま頑張る”というバランスがほしい。最初(招致時)に“TOKYO”と決まった時のあの気持ちを思い出すきっかけも、大事なのではないかと思う」と、改めて開催の意義を語った。

 池江は、冒頭のメッセージでこうも語っている。「逆境から這い上がっていく時には、どうしても、希望の力が必要だということです。希望が、遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても、前を向いて頑張れる」。世界的な困難の中、アスリートたちが思いを馳せる夢の舞台は訪れるのか。東京オリンピック・パラリンピックの開幕まであと1年だ。
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