【インタビュー】芦田愛菜にとって「信じる」とは。16歳の今、語る言葉からあふれる「演技への探求心」

 女優・芦田愛菜が実に6年ぶりの実写主演映画で比類なき才能と成長を示す注目作! 原作は「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞した今村夏子。監督・脚本は『日日是好日』『MOTHER マザー』の大森立嗣。芦田が本作で演じるのは撮影時は自身と同じ年だった15歳の少女ちひろ。“あやしい宗教”に心酔する両親への葛藤や自身の周りで起きる変化に戸惑いながらも、愛すること、信じることに向き合っていく難しい役どころを、いかに演じていったのか。16歳・芦田愛菜が役を通して見つめた「信じる」とは。
撮影・岡本英理/ヘアメイク: 久慈拓路(KIBI)/スタイリスト:浜松あゆみ/ワンピース:4万6000円(税別) ZUCCa or ズッカ(エイ・ネット)/靴:スタイリスト私物

原作・台本から芦田愛菜が思ったこと。「信じる」ってなんだろう


「原作や脚本を読んで、“信じる”とは何かということをすごく考えました」と振り返る芦田愛菜。今回演じた主人公ちひろは“あやしい宗教”を熱心に信じる両親から愛情を注がれてまっすぐに育った少女。しかしちひろを取り巻く環境に変化が訪れ、ちひろは悩み、ときに傷つきながらも、愛するとは、信じるとは何かを見つめ直していく。

「誰かを信じていますとか、できると信じていますというように日常的によく使われる言葉だけれど、そもそも信じるってどういうことなんだろうと思いました。そして、ときにそれは、その人のことを信じていたのではなく自分が期待している人物像だったり、自分が期待している結果を望んでいただけだったりするんじゃないかな、と思いました。だから、期待を裏切られたとか、その人を信じていたのにという言葉が出てくるのかな、と。でも別に、その人が自分を裏切ったわけではなく、その人の知らない部分が見えただけだったり、自分が今まで見たことのない側面が見えただけということもあるんじゃないかと思ったんです」

 思いを巡らせたどり着いた、彼女にとっての“信じる”とは。

「今まで信じていた人の思わぬ一面が見えたとき、それをすべて受け止める決心ができる、受け止めて揺らがない軸を持てることが、本当に“信じる”ということなんじゃないかなと思いました。でもそれはすごく難しいことだとも思います。私たちは周りの環境や意見にすぐ左右されたり流されたりしてしまう。ではどうして人は“信じています”と伝えるのかというと、やっぱり不安な自分がいるから、見知らぬ部分が見えたときに受け止められる自信がないから、口に出して言うことで自分が期待している結果や信じたい相手にすがりたいのかな、と。今回、ちひろを演じるうえでの役作りを通して、そういうことを考えていました」

 今回、メガホンをとったのは『日日是好日』では、女性たちが人生を紡いでいく姿を静かな感動とともに綴り、最新作『MOTHER マザー』では、母と息子の愛憎を描き切った大森立嗣。

「大森監督とは毎日、シーンごとに、このシーンはどういう場面なのか、ちひろは何を思っているのかといったことを現場でお話して撮影に臨みました。監督からはたくさんのことを教わりましたが、なかでも私は監督がおっしゃった、“会話を楽しんで”という言葉がすごく印象的でした。お芝居とは、前もって作っておくものではなく、そのときそのとき生まれていくもの。会話を楽しむように演じることが大切なんだと、思いました。あと、私は監督の“よーい、スタート!”の掛け声がすごく好きでした。監督の声のトーンがシーンによって少しずつ違うんです。監督の声の様子で、そのシーンの雰囲気が伝わって、お芝居のスイッチが入るというより自然とそのシーンの雰囲気の中でお芝居を始めていくような、そんな感じがしていました」

 ちひろの父役・永瀬正敏と、母役・原田知世との芝居では、愛情と葛藤が入り交じる難しいシーンも多かった。

「ちひろと両親の3人のシーンは、どのシーンもすごく好きです。永瀬さんと原田さんのお芝居から、2人はちひろのことを本当に大切に育ててきたんだろうなということが伝わってきました。とくに3人で星を見るシーンは、何気ない言葉に両親はどんな思いを込めていたのかなとか、どんな思いでちひろと星を見ていたのかなと考えて、完成作を見たときには涙があふれてきてしまうくらい、大好きなシーンです」

 自身のなかで大切にしている“親の教え”はある?

「挨拶やお礼はきちんと口に出して言わないと相手に伝わらないよ、ということはよく言われています。心の中で思っていても口に出して言わないと伝わらないから、きちんと口に出して言いなさい、と言われてます。なので私も、それは日ごろから心がけたいと思っています」

 ちひろが両親への葛藤を抱える大きなきっかけとなったのが、ちひろが一目ぼれしたイケメン教師・南先生(演:岡田将生)の存在。

「ちひろは、南先生の気づきたくない部分に気づいてしまったり、今まで見えなかった部分を見てしまう。でもそれは別に悪いことではなくて、そういう経験を通じて今まで自分が見てきたものがすべてではないということに気づくことができると思います。最初のほうのちひろは、自分の目に見えるものがすべてであるかのように、そのままに受け止めている気がしました。でも自分の知らなかったことが見えてきて、しだいに自分はそれについて考えなくてはいけない、変わっていかなければいけないのかもしれないと思うようになる。そして両親に対する思いは、とても複雑なものになっていきます。確かに、世間から見るとちひろの両親はすごく変わっているかもしれないけど、ちひろは両親がどうして宗教にハマったかや、自分のことをどれほど思ってくれているかを分かっている。だからいろいろな葛藤はあったけれど、最終的に外枠ではなく中身の部分、自分のことを大切に思ってくれている両親を信じたいと思うようになったんじゃないかな、と思いました」

 予告編映像では、南先生が激高する衝撃的なシーンも。一体何が起こるのか、気になるところ。

「あの場面は、言う側の岡田さんもつらかったのではないかなと思います。でももちろん岡田さんに嫌な印象などはないですよ(笑)。実は、撮影の合間などでは岡田将生さんとも楽しくお話させていただいていました。南先生が私たちを車で送ってくれるシーンの待ち時間では、なべちゃん役の新音さんや新村くん役の田村飛呂人くんと一緒にみんなですごく楽しくお話して、本当に学校に行っているみたいでした」
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