【インタビュー】岩井秀人が語る再演論 

「ハイバイ」が代表作『投げられやすい石』を11月18日から東京芸術劇場 で上演


 劇作家・演出家の岩井秀人が主宰する劇団、「ハイバイ」が代表作である『投げられやすい石』を11月18日から東京・池袋の東京芸術劇場 シアターイーストで上演する。新型コロナウイルスの影響で4~5月に上演予定だった『ヒッキー・カンクーントルネード/ワレワレのモロモロ東京編2』が延期されたことから2018年8月以来の劇団公演となる。
岩井秀人(撮影・蔦野裕)
 同作は2008年に初演されたもの。かつて天才と言われながらも今では変わり果てた姿となった男を軸に、才能を持つ者、持たなかった者、失った者の間に飛び交う愛と打算を生々しく描いた作品だ。

 今回はハイバイおなじみの劇団員や常連の客演もいない。今回、このキャストになったのは?

「この作品の主人公は自分にあて書きしたものなんですが、さすがにもう自分がやるのはきついなっていう思いがありました。若返りということで、今回はワークショップに参加してくれていた俳優から3人。もう一人はオーディションで決めました。僕は『どもども』という無料ワークショップを5~6年やっているんですが、その中で“技術があるのに場を与えられない俳優さんがたくさんいる”という思いを前から持っていました。うちに出たいと言ってくれる俳優はたくさんいる。でも演劇界は俳優100に対して作・演出家が1といった比率なので全員に出てもらうことは不可能。それでいて世の中にはなかなか面白い台本が存在しない。いくら俳優に才能があっても、結局その才能も発揮できないまま誰にも発見されず、といったケースが多い。10代から知っているとても才能豊かな俳優がいて、僕は“すぐ売れるだろうな”と思って見ていたけど、大きな舞台に出て、テレビ、映画に出て、結構な場を与えられていても、世にガッチリ認識されるまでに5年以上かかっていて。それはその俳優だけの不幸ではなくて、演劇をはじめとした、人間について考えるメディア全体にとっても不幸以外の何物でもないわけですね。そういう不幸をなるべくなくしたいということは前から思っていたので、今回はこういったキャスティングになりました」

 岩井はある時期から新作を書くのをやめ、過去に上演した作品をブラッシュアップした形での再演をしていくようになった。今では具体的な6作品を挙げ、今回の『投げられやすい石』はその中の一つ。

「もう新しいものを作る必要はないと思っていて、6本もあれば十分でしょ?」

 岩井は世に出だしたころからすでに再演が多いタイプだった。

「一番最初に『ヒッキー・カンクーントルネード』を書いて、40キャパくらいのところでやったんですが、千秋楽が終わって思ったのは、新しい作品をやるというよりは“日本には、この作品を見てもらってない人が、あと1億2000万人くらいいる!見せなければ!”ということでした。」

 確かに新作という響きには心を躍らせるものがあるが、必ずしもすべてが面白い作品になるとは限らない。

「初演、再演ともに見にきて、さらに知り合いまで連れてきてくれる人が結構いるので、それがあると“これでいいんだな”って思えますよね。それに作る側からすると、せっかくほぼ一生かけてやろうという仕事なので、破格の面白さというものを作らないと、やっている意味もないと思っています。なのでまだやったことのないことを“挑戦”という動機のみでやって、芸能人を出したんだけど実は集客できていないからすごくたくさんの人を招待していて、それを作・演出家は知らされてさえいない、みたいな(笑)。そういうのにはなりたくないじゃないですか」
1 2>>>