演出家・黒田勇樹が語る 「コロナ禍での演劇と表現」

(撮影・蔦野裕)

 新型コロナの影響で客を入れての公演ができないなか、昨年から演劇のライブ配信もされるようになった。こういった動きについてはどう思う?


「僕は、劇場に来たことがある人たち、劇場という空間に思い入れが濃い人たちは映像配信で楽しめると思っています。でも劇場に来たことがない人たちが、突然見ても演劇の良さは10%も伝わらないと思っているので、とても危うい気持ちです。演劇ファンは脳内で劇場で見ている時を再現できるじゃないですか。でも、劇場に行くのは面倒くさいけど、配信でやっているなら見てみようかなという人にこれが演劇と思われるのは…。もちろん劇場の雰囲気をすごく再現している映像もあれば、いやこれは、というものもあるので、一概には言えませんが、今言ったような危険性はあると思っています」


 コロナ禍での苦肉の策。その一方で地方のファンにはありがたい話。それによって利益が増えるのであればいいのだが、新しい技術を採り入れすぎて、通常の演劇では見えないところが見えすぎても、という部分はありそう。


「新しいジャンルができたということなんでしょうね。小説と漫画といった感じの立ち位置。目で見える分、想像力は小さくなる。演劇だって、実は劇場にいる人は、自分たちの目でカメラを操作していて、寄って見たり、引きで見たり、上からのぞき込むような映像も、共感できていれば想像できているはず。これが完全になくなるのもつまらないが、提供できること自体は面白い。どこかで細分化されればいいですね。僕は演劇をやるときに“映像は甲子園の砂だ”と言っているんです。甲子園の砂はそこで試合が行われていなければただの砂だし、そこで戦ったり見ていた人にとっては価値のあるものかもしれないですけど、そうでない人には砂でしかない。演劇のDVDとか記録映像というのもそういう感じにとらえています」


 現在の観客数の制限はワクチン等の効果が表れてくれば、解消されるだろうが、それはまだ先のこととなる。


「僕らは3・11を経験しているじゃないですか。あの時は演劇も映画もできなくなった。今回も人々の気持ち、世間様の気持ちが解決するには5年くらいかかるんじゃないかと思うんです。地震の時も“もう1回地震が来るんじゃないか”ということで劇場にお客さんが戻ってくるのに5年くらいの時間がかかった。コロナもやっつけたから安全ということにはならなくて、以前の状況に戻るのには少し時間がかかるんじゃないかと思っています。だって隣の人がくしゃみをしただけで嫌という人が多いじゃないですか。それは映画館も一緒なんですけど。僕は去年の頭にやっていたお芝居でも、演者がくしゃみをするシーンでも“へくし”って言ってくれってお願いしました。本当のくしゃみと間違えられちゃうとお客さんがどきっとするから、明らかに演技と分かるくしゃみにしてくれということ。みんながナーバスになっているんですが、このナーバスさは国が大丈夫と言ったところでしばらく続く気はします」


 舞台上の表現の仕方も変わる?


「昨年の舞台なんですが、客席と舞台の間を開けてはいましたが、大きい声を出すときはセンターよりちょっと後ろにしようということにしました。結局その公演はビニールシートの幕を張ることになったので、最前列まで来させて、やらせましたが、幕がない時はそういうふうに気を使って演出しました。僕はもともとはバンバン客席に降りていきたいタイプだったんですけどね」



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