「K-POPにできて日本にできないとは思わない」エイベックスが海外大手と提携し世界を目指す

 


日本のアーティストも世界を目指すべき時が来ている


―日本の国内音楽市場規模(音楽ソフトと音楽配信の売上実績合算)を見ると、総合計約4666億円を記録した2007年度以降減少傾向にあり、2019年度は総合計約2998億円となっています(生産実績・音楽配信売上実績 合計金額推移/日本レコード協会調べ)。


ウィルクス「これまで音楽ソフトの購買が強かった日本ですが、ストリーミングが定着し始めたことなどもありCDの売り上げが減少していますね。しかしこれからの音楽市場は世界的な視点が必要です。音楽市場の変化は日本だけでなく世界的に起こっているのです。AEGXは世界の変化を見すえ、今の状況に合わせてではなく未来に向けた経営を考えています」


―まさに、日本のアーティストも世界を目指すべきタイミングが来ているということですね。アジアでは、すでにK-POPがグローバルな展開を実現していますが、日本のアーティストとの違いはどこにあると見ていますか。


ウィルクス「両者は、見ている方向が初めから違っていたということが大きいと思います。韓国は国内市場がそれほど大きくなく、最初から国外での展開を目指していました。何年もの時間をかけ、現在、K-POPは国際的に非常に大きな力を持つ存在となりました。彼らは最初から国外での活動を目的としていたのでグローバルなコンテンツが生まれ、日本は国内での活動を目的としていたため日本国内にスターたちがたくさんいるという状況なのだと思います。


 ただ日本の状況がネガティブというわけではなく、もともとどの国でも国内に向けた活動から始まるものであり、それが近年のデジタル化にともなう変革によって、みんながグローバル化しなければならないと考え始めている状況なのです。今後は日本のアーティストも世界での活躍が期待され、それが実現できる未来は確かにあると思います」


山中「日本の市場は世界的に見ても非常に大きいですからね。例えば、日本では短期間で5大ドームツアーを開催することができますが、これだけ効率的なツアーができる国はアジアでは日本以外に基本的には存在しません。5大ドームツアーができれば数十万人を動員できる、すなわち数十億の売り上げになる。それを短期間で可能とする巨大市場なんです。であればそもそも、わざわざ無理をして外に出ていく必要を感じないわけです。


 かたや韓国はアリーナでの国内ツアーを組んでも数カ所が限界で、利益も限られてくる。必然的に外に目を向けていく必要があったのだと思います。そのうえで、韓国では何十年と海外挑戦を続け、今やBTSというグローバルなアーティストが生まれた。日本でも一組、海外展開の成功事例が出てくれば、後に続く流れを作ることができると僕は考えています」