サヘル・ローズ「貧しい子どもたちに、お金ではなくペンを」 世界を旅して見つけた支援の形<できることから SDGs >

“輝く瞬間”を映す

差別や偏見をなくそうと、サヘルさんがいま力を注ぐのは「つながり作り」だ。

「大学に行きたい子どもたちと企業とを繋げていく取り組みをしています。彼らを企業の方に会わせて、進学への熱意や意気込みを語ってもらい、企業側に認められれば、スポンサーとして4年生までの学費を支援してもらえるという仕組みです。また、最近は映画づくりにも力を入れています。これまで養子を受け入れた親御さん目線の作品はあったのですが、私は当事者である子どもたちの声を届けたいと思っていました。そこで知り合いのプロデューサーなどに連絡を取ったところ、“サヘル、自分で撮りな”と。今回8人の子どもたちがメインキャストなのですが、私が9人目として関わることで、彼らの思いを汲み取りながら作品づくりができるのではないかと決断しました。彼らは全員児童養護施設の出身ですが、影の部分ではなく、“輝いている瞬間”を映し出したかったんです。普通の少年少女として描くことで、いま施設にいる子たちにも“先輩が活躍できる場がある。自分たちは社会に必要とされている”ということを知ってほしかったんです。実際に撮影を進めていくと、彼らも仲間意識が芽生えて“初めて1人じゃないと思えた”と話してくれました。彼らにとっての“家族”や“居場所”を作れたことは大きかったですね」

SDGs「ファッションにしないで」

 昨今SDGsの機運が高まると共に、社会が「人権」へ関心を寄せる場面も増えてきた。長年活動を続ける中で、サヘルさん自身が気づいたこともある。

「誰かを支えるなら、まず“自分と向き合ってほしい”ということです。いろいろなことに関わっていくことの基本は、まず自分との向き合い方だと思います。いまコロナ禍で自分を見失っている人がたくさんいると感じます。まず自分を大切にできなければ、誰かを幸せにすることはできない。合わない靴を履いていても、靴擦れしてしまうのと同じです。

 SDGsにはそれぞれの考えや視点がありますが、その中から自分にやれることを貫いたら良いのだと思います。SDGsは本来、昔からそれぞれに意識されてきたことで、それが今、より分かりやすい形で表れています。ただ、ファッション化してほしくないということですね。毎回何かしらの言葉が出てきて、ブームになって、いつのまにか終わってしまうのは悲しいですよね。私たちが真剣に、自分の大切な子どもや孫の未来を考えて意識を持つことが大切だと思います」

 4月からは生まれ故郷、ペルシャの魅力を伝えるラジオ番組『サヘルの小部屋 ペルシャを語ろう』が始まった。

「日本に暮らすイラン国籍の人は、国籍のせいでいじめられたりして、自分の国籍に自信を持てないことが多いんですね。イランは報道でピックアップされるような核兵器や外交問題のイメージを持っている方も多く、“イラン=ネガティブ”が先に来ることが多いと思います。でも、イランには素晴らしい歴史や文化、伝統工芸品など美しいものがたくさんあります。ペルシャの魅力を伝えていって、イランの方々が自分の国に誇りを持ってもらえたらうれしいです」

 インドで目にした衝撃から12年あまり。「出会った責任の重さ」はまた、「代えがたい宝物」だ。分断が進む社会で、サヘルさんの強さと優しさが道を切り開いている。        

(TOKYO HEADLINE・丸山裕理)

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