高橋久美子、初の小説集『ぐるり』で描く「地球がぐるりとつながっていく世界」

「あまり身構えずに開いて、気楽に読んでほしいです」と高橋さん

 おうち時間でよく聴いている音楽や読んでいる本があれば教えてください。

「フィッシュマンズの『LONG SEASON』は、1曲が約40分くらい続く名盤です。途中で裏返さないといけないんですけど、聴いているとダウナーな気持ちになって、これを聴きながらつまみなしでずっとお酒を飲んでいます(笑)。同じキーボードのフレーズが繰り返されるのですが、旦那さんと“自分やったらここにどんなドラム叩く?”とか言いながら聴いています。

『Lost In Translation』は、同名映画のサントラなんですけど、ケヴィン・シールズ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)が書き下ろした曲やはっぴいえんどの『風をあつめて』が入っていて。これも映画を見ながら聴いたり、映画を思い出しながら聴いたりしています。コロナ禍でまったく世界が変わってしまったので、当時のふわっとした東京を見ながら“みんなで密集してマスクしないでカラオケしていた世界もあったんだよな”と考えると切ないなと思ったりしますね。

『野草をおいしく食べる本』(スタンダーズ)は、最近野生のものを食べるのにハマっていて。愛媛に帰れないので東京を散歩して、近所にタケノコが生えている秘密のスポットを見つけ、3回くらい掘りました。イタドリ(タシッポ)とかも生えているので、そういう野に生えているものを今日も食べてきたんです。音楽を聴いている時はケミカルな気分なんだけど、身体は健康を求めているのかも(笑)」

 最後に、これから『ぐるり』を読む方にメッセージをお願いします。

「“どこかに自分がおるかな”と探しながら読んでも面白いですし、“この人のことよう分からんな”という人が潜んでいるかもしれないけれど、読み終えたら分からんかった人を少し愛せるようになるかもしれないと思います。近所の人と話しているような温度感の本なので、あまり身構えずに開いて、お風呂で読んだりカフェで読んだり気楽に読んでほしいです」

(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)