がん検査のゲームチェンジャー目指す「線虫」。開発経緯と予防医療の未来を聞く

(撮影・蔦野裕)

「がん検査をギフトに」。予防医療の未来

 

 量産化から一年。現在力を入れるのは、「がん種を特定できる」検査の開発だ。N-NOSEは早期がんの発見に強みを持っているが、今後は「どこにがんがあるのか」という特定も目指す。現在、遺伝子組み換えによって、特に早期発見の重要性が高い膵臓がんだけに反応する特殊線虫を開発している。この技術で、そのほかのがん種の判定にも応用する予定だ。「現在、良い結果が得られている。来年には実用化を目指したい」(広津氏)

 現在、N-NOSEの利用者の中には、夫婦で購入する人も多いという。「がん検査は家族で話し合って、一緒に受ける時代。お互いに贈り合ったり、孫が祖父母にプレゼントする形もある。自分自身で受診するには重い腰が上がらないが、身近な人の後押しや、誰かにプレゼントされたらやってみようと思うもの」(広津氏)

 人生100年時代、がんを怖れるだけの時代は終わった。これからはバイオテクノロジーの発展や、予防医療の身近な広がりが、新たな試金石となるのかもしれない。

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