藤井聡が語る「たばこ税の増税に見る、禁煙ファシズムと日本経済」

(撮影・蔦野裕)

岸田新政権に切り込む

 

――教養バラエティー番組『東京ホンマもん教室』(TOKYO MX1)では、政治・経済を中心に毎回鋭い視点で社会に切り込んでいます。コロナ禍の日本経済をどのようにご覧になっていますか。

「やはり増税を考える前に、成長投資を促す社会を目指すべきだと考えます。番組でもお伝えしていますが、成長率の推移と税収の増減推移は一致しています。両者の相関係数は0.91で、ほぼ重なっています。つまり、経済成長すれば税収は増えるし、衰退すれば減るのです。だからこそ、まず成長を目指すべきでしょう。

 外食に行きたい、旅行に行きたいなど、多くの人は消費したがっているし、もっといい暮らしをしたいという意欲を持っています。潜在的な消費需要ですよね。彼らにお金が行き届くようになれば、活用され、日本経済は成長してきます」

――岸田新政権が誕生しました。藤井先生の評価は。

「岸田首相は政治家として、立派な人だと思います。政治家には、品位と知性が必要です。派手さがないとか、地味だとかいわれますけども、岸田さんは品位と知性を有する数少ない政治家だと評価しています。一方、首相としてどうなのかというと、日本の場合、品位と知性を持つインテリジェンスは、財政規律を重んじる。結果として、日本経済を救うことができなくなってしまうのですね。

 アメリカや中国などの超大国は、不況になったら、緊縮財政派が言うことを度外視して、徹底的にお金を使って、国民の所得が下落しないよう支えます。でも、日本では積極的な財政投資をやっていけば「ばらまき」と言われてしまう。岸田首相はしっかりお金を使わない可能性があるのですね。凡庸な知性と凡庸な品しかない人は、ばらまき批判を恐れて、十分な財政政策ができない可能性があると思います」

――反対に、岸田首相に期待することは何でしょうか。

「これまでの構造改革主義あるいは新自由主義によって、格差が拡大してきました。この貧困の拡大を止める仕事というのはできるんじゃないかと期待しています。小泉政権以降、30年近く弱肉強食の資本主義を続けてきましたが、それを転換させる可能性は大いにあります。過剰に大企業だけ潤うような、そういう冷たい改革はしないという点で言えば、バランスが良いと思います。

 ただ、調整型の人というのは、デフレ期には合わないのですね。コロナ禍のような100年に一度の危機では、脱却できるまで財政をふかし続けるという取り組みしかないわけで、バランスを取ってはいけないのです。ちょうど岸田首相が総裁選に打って出るときに、二階(俊博)前幹事長に引退を突き付けたように、勇気を持って財務省と対峙できるかどうかにかかっていると思います」

  10月31日には4年ぶりとなる衆院選が投開票を迎え、第100代内閣総理大臣に選ばれた岸田首相に最初の審判が下る。混迷する日本経済や政治を中心に藤井教授が話題のトピックスを徹底解説する教養バラエティー番組『東京ホンマもん教室』は、TOKYO MX1にて放送中。

【番組情報】
『東京ホンマもん教室』
毎月第2・第4土曜 あさ10時30分~11時30分 TOKYO MX1にて放送中(スマートフォン用アプリ/WEB サイト『エムキャス』でも同時配信)
【出演】藤井聡【MC】佐々木瞳【ナレーター】黒田治
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