TOKYO MX『堀潤モーニングFLAG』キャスター 堀潤氏が番組と2021年を振り返る

 ジャーナリストの堀潤氏がキャスターを務めるTOKYO MXの『堀潤モーニングFLAG』が放送開始からこの1月で10カ月になる。1995年以降に生まれた“Z世代”を中心としたコメンテーターを起用するという大胆な試みのもと始まったこの番組のここまでとこれからを堀氏に語ってもらった。

TOKYO MX『堀潤モーニングFLAG』キャスター 堀潤氏(写真・蔦野裕)

 まずはこの10カ月を振り返ってください。

堀「Z世代の方々というのはこれまでテレビ、報道番組などでは打席、いわゆる発言する機会すら与えてもらえていなかったと思うんです。『モーニングFLAG』(以下、『モニフラ』)では若いZ世代だけで“コメンテーターZ(ズ)”という形でやらせてもらっているんですが、初めての経験ということもあり手探りから始まったんですけど、皆さんが打席に立ち続けることによって、パブリックな場でコンパクトに核心を突いたことを発信する技量も上がっていった。彼らはもともとそれぞれ活動している現場があって、その普段の活動を背景とした思い切った私見を述べることで、実行すべき課題を明確に提示してくれています。そんなことも相まって、社会を動かす原動力になる番組になってきたなという手ごたえはありますし、番組の完成度が高まりつつあって、すごく手応えを感じています」

 知名度という点ではさほどではなかったコメンテーターの方々の起用については不安はありませんでしたか?

堀「全くありませんでした。僕がNHKにいた2012年にEテレで1970年生まれ以降の人たちだけの『徹底討論!ニッポンのジレンマ』という新しい討論番組を立ち上げたことがあったんです。その初回の放送はすごく沸騰しました。ゲストの皆さんが、せきを切ったように話し始めた。社会的にはまだまだほとんど知名度もなかった人たち。その中には宇野常寛さん、荻上チキさん、飯田泰之さん、 駒崎弘樹さんといった、今では各界の最前線にいる方々がいました。彼らは当時、時代の先をいく提言をしていたんですが、それがなかなか評価されないことへのいらだちとか、なぜそれが進まないのかといったことへの腹立たしさとか、そういうものがすごくたまっていたんです。でもそういう場ができることによって、多くの人たちに伝わった。だから『モニフラ』のコメンテーターZについても、僕は伝え方とか、社会全般の慣習的なことへの不慣れさみたいなものはあったとしても“こんな時代を作りたい”といった思いやそういう思いを背景とした行動なんかをまっすぐ伝えてもらえばいいと思ったし、僕らもそれをまっすぐ聞けばいいと思ったんです。彼らのトライ&エラーそのものが事実だし、ニュースの現場は事実を伝えるところですから」

 番組、コメンテーターZの方々の成長度合いは自分の予想を超えている?

堀「思った以上だと思います。とにかく、スタッフみんなの誠実さに支えられています。ADさんたちも成長しました。最初はカンペの出し方や動き、声の出し方なんか“ん?”というところはあったんですが、今はみんな自信を持ってやってくれている。先日も冒頭のニュースのところで、尺調整をしながら読んでいかないといけない難しいVTRがあったんです。でもADさんがこっちの目をしっかり見ながらカウントを出してきてくれました。すごくつながっている感覚があるから、安心して彼女のカウント通りに読めばよかった。未経験だったADさんたちが今は僕の命綱になっています。それだけでも大きな手応えです。テレビ業界にとってもモニフラ出身の子たちが、きっと10年後20年後にプロデューサーとかチーフプロデューサーになって番組を作っていくのかな、とか思うとすごく楽しみです。あとは制作陣、ディレクター、プロデューサー、演出、みんなすごくリアクションが速い」

 今年以降の展望は?

堀「1年目はまず場作りと成長を確かめる期間でした。経験といろいろな新規アイデアの実験、かつ、番組の付加価値を対外的にも見せられるような期間。スポンサードしていただく人たちを集めたりとか社会的認知とか。あとは当初から番組に出た人たちがほかのところにどんどん広がっていって、という面としての広がりみたいなものを考えていました。2年目は成果を視聴者の方々に見せていきたい、実感させたいと思っています。1年目にコメンテーターZの皆さんや番組が“日本の未来のためにこうすべし”とか“私たちの暮らし向上のためにこうすべし”と提案したものが実際に制度化されたり社会的課題として認知されるようになったか? そういったものが何個も何個も形として、成果として提案できるような年にできればいいなと思っています」

 少しでも社会を動かすために、ということですか?

堀「今回、衆議院議員選挙の前に『モニフラ』からの提言という形で、コメンテーターZたちが政策提言をやったんです。それをもとに、番組にゲストとして来る官僚、政治家、起業家たちに、こういう提言をやるかやらないか? やれるかやれないか? やれないとしたらなぜなのか?といったことをぶつけているんです。提言はジェンダー、サステナブル、規制緩和、生活の多様性などさまざまな分野に渡ります。あれをまずは着実に一個一個実装していくということをやり切ろうと思っています。あれはある意味、メディアとして社会に一度投げた“番組としての公約”です。それをきっちりと果たすということを見せることが、僕はメディアの信頼を高めるというか取り戻すことになると思っています。この間も立憲民主党の代表になった 泉健太さんが来た時に、古井康介さんから“社会人を3年経験しないと職業訓練を受ける資格がないのはおかしい。そういうことを提言してください”という意見が出ました。泉さんには“通常国会で必ず取り上げて、厚労省にも投げる”といった確約を取ったんですけど、では泉さんは本当にやってくれるのかということで国会を見るモチベーションの動機づけの伏線が張れたわけです。となると当然、今月、通常国会が始まると“さて、古井さん、先日、泉さんに提言したこの政策課題なんですが通常国会で質問しませんでしたね”なのか“取り上げられた結果、動き始めましたね”なのか、どちらにしても追いかけることができる。だから通年、発信し続ける、関わり続ける、取り上げ続けるというテレビメディアが最も苦手な部分をしっかりやり切るということを僕自身としては一つの成果にしたいと思っています」

 堀さんは2001年にNHKに入局。この20年ほどの間で日本のメディアは大きな変革を余儀なくされてきました。ネットやSNSが台頭する中、テレビや新聞といったメディアの在り方や重要性についてどう思っていますか?

堀「“一度生まれたメディアは死なない”というのが僕の持論なんです。映画はiPhoneで見ても映画だし、新聞もタブレットで見ていても新聞だなと思って見ている。テレビもYouTubeを見ていても“このアプローチはテレビ番組だな”と思うことも多くて、だからテレビコンテンツは死なないと思うんです。『バチェラー』を見ていても“現代版あいのりをやってるな”みたいに思うじゃないですか。アマゾンプライムでやっていてもアプローチの仕方は全くテレビ。コンテンツとしては完全にテレビカルチャーそのものです。ただ事業体は大きく変わっていくだろうとは思うんです。じゃあ事業体としてどういうことを目指していくのかというと、新しいテクノロジーを持った人たちとの連合体というものを、うまく企業内に持つことなんだろうと思うんです。餅は餅屋ですから、テレビ局はコンテンツを作り、新しいインフラについてはそういうものを開発している人たちに任せたほうがいい。いかに今ある既存の事業体が、新しい技術を持った彼らとアライアンスを組むかどうか。そのいいパートナーを見つけられるといいなと思っています」

 どう見せるかはテクノロジーによって変わるが、モノづくりに関するもともとの考えとか魂とかは変わらない?

堀「コンテンツの競争の生き残りについてはテレビマンたちは強いと思います。なぜかというと、欲求としてまだ誰も見たことがない、まだみんなが予想がつかないような映像を届ける、というのが僕らテレビマンの最大のモチベーションですから。ところが安易に、誰もが知っている現場に、同じような手法で、ちょっと見られたからといって、コピーする方向に甘んじてしまった結果“テレビマスゴミ”みたいな感じで批判されるようになっていったんですよね。僕が小さいころってテレビ各局は色があった。でもいつの間にか横並びになって同じような番組が量産されるようになった。ニュースもどこのチャンネルも同じ話を同じ切り口でやっている。新聞もどこも1面が一緒。そんなの誰も見ないですよね。そんなんじゃないよね、ということに気づいた人がYouTubeに行った。YouTubeには一見くだらないように見えますが、テレビマン的なアプローチのものが多いですよね。こんなの誰も見たことないでしょ? でも見たいと思っていたでしょ? じゃあ見せてあげよう、みたいな。『川口浩探検隊シリーズ』ってそういう番組でしたよね」

 TOKYO MXはかなり独自な路線を突っ走っているように見えます。

堀「やっぱりTOKYO MXがこれだけ一つのブランドとして支持されるのは“そんなこと誰も言ってなかったよね”とか“みんな思っていたけど怖がって言わなかったよね”といったことをやっているから。『5時に夢中!』もそうだし『バラいろダンディ』もそう。『モニフラ』も、他のワイドショーやニュースじゃ取り上げないことや普通こんなこと言わないよね、といったことをやっている。だからメディアの変革期っていうのもあまり怖くない。純粋にその時代にまだ誰も知らないことをしっかりとやっていって、それをグーグルのアルゴリズムの中にぶち込んでいく。検索したらうちしか出ないというコンテンツをいっぱい作り続けることさえやれればいいんじゃないかと思っています」

『堀潤モーニングFLAG』
【日時】毎週月曜~金曜 朝7時~8時 ※番組配信アプリ/サイト「エムキャス」でも視聴可能。
【出演】〈キャスター〉堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)〈気象予報士〉中村美公 (月・火)、久保井朝美(水〜金)〈Z 世代コメンテーター〉月曜:大空幸星(NPO 法人「あなたのいばしょ」理事長)、火曜:由井恒輝(弁護士)、水曜:能條桃子(一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事)、木曜:加藤ジーナ(タレント・起業家)、金曜:古井康介(政治専門広告代理店「POTETO Media」社長)ほか
【番組ホームページ】https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/