『逆・タイムマシン経営論』楠木建氏や起業家3人が激論!TOKYO創業ステーション5周年

 創業支援施設「TOKYO創業ステーション」が3月3日、設立5周年を記念したオンラインセミナー「未来を創る起業~TOKYO創業ステーション5周年Thanksイベント~」を開催し、一橋ビジネススクールの楠木建教授の基調講演や起業家3名によるトークセッションが行われた。

「TOKYO創業ステーション5周年Thanksイベント」第1部に登場した一橋ビジネススクールの楠木建教授

話題の著書『逆・タイムマシン経営論』を解説

 第1部は「起業家に必要な本質を見抜くチカラ~逆・タイムマシン経営論~」をテーマに、一橋ビジネススクールの楠木教授が基調講演。

 自身の著書『逆・タイムマシン経営論』を紹介し、タイムマシン経営(海外で成功したビジネスモデルを日本に持ち込む経営手法)の論理を反転させ、過去のメディアの記事や言説を振り返ることを提唱した。

「つくづく思うのは同時代性の罠と呼ぶべき認識バイアスがあって、旬の言説ほどその時々のステレオタイプな物の考え方が強く入り込み、受け手である我々の意思決定を狂わせてきたことがうかがえる」

 過去を振り返ることは「時間の経過のおかげで本質的な論理が剥き出しになっている」としたうえで「ひと言で言うと“新聞雑誌は10年寝かせて読め”。歴史はそれ自体が確定した事実で、一つひとつの歴史的な出来事が起きた背景や状況を知ることが本質的な論理を見抜くうえで役に立つのでは」とその重要性を解いた。

 その後、逆・タイムマシン経営論が唱える同時代性の罠の中から「飛び道具トラップ」として「サブスク」に飛びつく危険性を動画配信サービス「NETFLIX」を挙げて解説。

「当時、DVDレンタルの最強企業は全米で最も数が多い『BLOCKBUSTER』で、NETFLIXは比較にならないほど小さな会社で新作を大量に仕入れる在庫取得能力はない。そこで顧客データを分析し、顧客が見たくなるような旧作をトップページに表示することを考えた。それが唯一の生き残る道だということで、NETFLIXは昨日今日ビッグデータやアルゴリズムを解析し始めた会社とはまったく肝のすわり方が違う」

 楠木教授は「商売に飛び道具はないのが本当のところで、何をするにしても戦略ストーリー全体の文脈で決まる」と結論づけ、「我々はファストメディアの時代にいて、情報はあふれているが“なぜなんだろう”という論理や本質が希薄になっている。だからこそ、これからのビジネスパーソンにとって『逆・タイムマシン経営論』は武器になる。いつの時代も王道は良書を読んで考察することで、新聞や雑誌は5~10年寝かせておくだけで本質を考えさせる上質なスローメディアに熟成する」とまとめた。

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