長引く外出自粛による体重減少や筋力低下も…高齢者のリスク「フレイル」とは?

『年をとったら食べなさい』(飛鳥新社)の著者で、「医療法人社団悠翔会」理事長の医師・佐々木淳先生

フレイルになった場合、どうすれば改善できるのだろうか。

「フレイルの状態に早めに気づいて、しっかり食べて運動し、健康な状態に戻れるようにすることです。要介護の手前のフレイルの段階であれば、栄養状態の改善で体重の減少を食い止められますし、そこから運動の機会を増やせば筋力も戻っていきます。フレイルの要素はがんばって減らすことができますが、長く放置して自分では食事が取れない、歩けないというところまで進んでしまうと、そこから元気になるためには本当に努力しないといけません。しっかり食べないと体重も筋肉も運動機能も守れないので、まずはしっかり食べていただくことが最初の第一歩です」

フレイルを予防するためにはどうすればいいのだろうか。

「年齢とともに体重が減っていく方は多いのですが、できれば体重を減らさないように気をつけてください。高齢者で体重が少なめの方は、死亡リスクが高くなることが分かっています。体型を評価するBMIという指標があるのですが、このBMIの数値は22が標準体型、18.5を下回ると低体重(やせ)、25を超えると肥満といわれています。高齢者の場合は標準体型でも実はやせ過ぎていて、少しぽっちゃりしているほうが相対的な死亡リスクは低くなります。本当にやせ型の方は、1~2kg体重を増やしていただくだけで大分死亡リスクが下がるのではないでしょうか」

もし、周りから見てフレイルじゃないかという方がいたら?

「自分のお友だちやご家族を見ていて、歩き方が少しヨタヨタしてきたら要注意です。筋肉がしっかりある方は体を真っ直ぐに保って、足を前に出してスタスタ歩けますが、フレイルになると体が前屈みになって足もトボトボし、体は前に進んで足を引きずるような歩き方になります。歩き方が小刻みで歩く速度が遅いとか、真っ直ぐ歩いているようで少しフラフラしているのは歩行が不安定になっているひとつの兆候です。重たいものが持てなくなったり、やせてきたりということもあります。

 特に見てほしいのがふくらはぎで、両手の親指と人差し指で輪っかを作って、その輪の大きさがその方にとって必要最小限のふくらはぎの筋肉量といわれています。この指輪っかをそのままふくらはぎに当てて、スカスカだったらその方はちょっとやせている状態です。“指輪っかテスト”といって医学的にも評価されている診断方法なので、これをやって筋肉がやせてきていたら体重を増やすようにがんばるといいかもしれません」

 改めて、佐々木先生から読者にメッセージをお願いします。

「健康のためには年齢とともに少しずつ体重を増やしたほうが、転んだ時に骨折しにくくなりますし、肺炎も起こしにくくなるということを知ってほしいです。もちろんやせていても元気な高齢者はたくさんいらっしゃいますが、何かアクシデントがあった時に生存率が低くなる傾向があります。やせ型の高齢者が入院すると、そのままお亡くなりになる方や、退院しても衰弱が早まって亡くなる方が多くいらっしゃるのです。

 体重というのは高齢者の方にとって“命の貯金”です。人間の体は食べないとどんどん小さくなっていきます。もしも病気で食べられなくなった時、自分の体にろうそくと同じように燃やせる余地があるかどうかで生き残れるかどうかが決まってきます。健康診断などで反対の指導をされることも多いのですが、60代以降は少しずつ体重を増やしていくほうが安全な歳の取り方だと分かっていますので、高齢期になってから食べて太ろうとするのではなく、年齢とともに少しずつ体重を増やしたほうがいいんだと思っておいていただければ」

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