生理、避妊、妊娠、中絶、産後うつ。女性のリアルを描く映画『セイント・フランシス』が問うもの

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生理、避妊、妊娠、中絶。女性のリアルを描く

 本作では、これまで映画で描かれることの少なかった生理、避妊、妊娠、中絶といった女性の身体にのしかかる負担やプレッシャー、さらにレズビアンカップルが直面する社会的な差別といったリアルも、日常の中で自然体に描く。

 産後うつに苦しむ母マヤや、日々の暮らしの中で人種差別を受けるアニー。さらに6歳児なりに人生に悩む少女フランシスや、中絶手術に対して思いを共有してもらえず気持ちを整理できないでいるブリジットのパートナー、ジェイスのモヤモヤなど、それぞれが悩み苦しみながら生きている姿から、現代の社会課題を立体的に映し出した。

「女性に生理がなかったら地球には誰も存在しないのに、若い頃から生理のことは隠すように教育されている」。ケリーは女性が毎月向き合う日常の当たり前はタブーとされ、キレイな部分だけが美化されている現状に疑問を感じ、女性の心身の本音を見せたかったとした。

 SNSでシェアされる、人々の充実したように見える人生。それに比べて“自分なんて”と落ちこみ、満たされない気持ちや不安にさいなまれる人は大勢いるはず。でも、誰だってみんな苦しんだり、人に言えない悩みや秘密を抱えているもの。社会が決めた見えないルールに振り回されて居心地の悪い思いをしたり、自分の生き方に自信を持てなかったり。クライマックスでは「結婚していないし、華やかな仕事もしていない。今の自分が嫌い。立派になりたい」と涙するブリジットに対し、少女フランシスが優しく言葉をかける。温かくも本質を突いたメッセージは必見だ。

 現代を生きるすべての人へ贈る、映画『セイント・フランシス』は8月19日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。