橋本愛「映画界のハラスメントや労働環境についても語りたい」映画祭アンバサダー2年目に意気込み

 

 第35回東京国際映画祭のラインアップ発表会が21日、都内にて行われ、2年連続でフェスティバル・アンバサダーを務める女優・橋本愛らがゲストとして登壇。日本の映画界が抱える課題を意識しているという橋本が2年目の抱負を熱く語った。

 コロナ禍においても感染対策やオンラインを活用しながらリアル開催を続けてきた東京国際映画祭。今年は3年ぶりにオープニングのレッドカーペットを実施。また海外の映画人も多数参加。最大100名ほどの来日ゲストを予定しているとのこと。

 昨年に続きフェスティバル・アンバサダーを務める橋本は「とても光栄なこと。役目を果たさなければと背筋が伸びる思い」。

 一方で「昨年は、アンバサダーとしてどういうことを発信していけはいいのかと模索していた中で、自分のワクワクする興奮の方を発信していたような気がするんですが、今年は、2年連続ということで、もう少しできることはと考え、今の映画界に立ちはだかる課題ついても気持ちを話していければ」と真摯な表情。

 近年、課題として度々取り上げられる映画界のハラスメントや労働環境について橋本は「私も現場を経験して思うことがたくさんあった」と振り返り「一番感じるのは世代間の溝」と、ベテランと若手世代が互いの声を聞き合い「お互いが歩み寄ってもっと素敵なモノづくりの環境になれば」と期待。

 この日は、コンペティション部門に出品する今泉力哉監督(『窓辺にて』)、福永壮志監督(『山女』)、松永大司監督(『エゴイスト』)も登壇。

 質疑応答では、3監督もそれぞれの現場において労働時間やハラスメントに気を配りながらの作品作りを心掛けていると語り、橋本も「監督側の景色を知ることができてうれしかったです」と笑顔。「主演という立場だと、意見を言う機会を設けていただくこともある。その立場を生かして、自分以外の人への態度が違うのを目の当たりにしたり、そういう状況を見たときには、コミュニケーションを促していきたい」と意欲を語った。

 LGBTQへの理解といった社会的課題についても橋本は「知人で、ものすごく苦しんでいる人がいるのを見ているので」と明かし「歴史や伝統を守っていく姿勢は、それ自体は美しいし素晴らしいと思うんですけど、その過程でこぼれ落ちてしまう人たちはたくさんいる。そういう人たちの苦しみや悲しみに寄り添って、それでも生きていてほしいという気持ちを込めて作るのが映画や芸術だと思う。世界をより良くするお手伝いを、映画を通してできたら。せっかく世界に開かれるまたとない機会である東京国際映画祭を通して、日本の素敵なところと改善したいところを改めて見つめ直すきっかけになればいいなと思います」と思いを語った。

 この日は、華やかな映画祭の復活を予想させるラインアップを安藤裕康チェアマンらが紹介。オープニング作品に二宮和也主演、瀬々敬久監督作『ラーゲリより愛を込めて』。クロージング作品には、カズオ・イシグロの脚本で黒澤明の傑作を英国で映画化した『生きる LIVING』。

 コンペティション部門審査委員長には『アクロス・ザ・ユニバース』(2007)、『グロリアス 世界を動かした女たち』(2020)の映画監督・舞台演出家のジュリー・テイモア。審査員に、シム・ウンギョン(俳優)、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス(映画監督)、柳島克己(撮影監督)、マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル(元アンスティチュ・フランス館長)。

 また、過去にスティーヴン・スピルバーグ監督らが受賞した黒澤明賞が14年ぶりに復活する。

 第35回東京国際映画祭は10月24日~11月2日、日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区にて開催。10月15日よりチケット一般販売開始。

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