目線を低くして昭和の池袋へ  豊島区で区制90年を記念した豊島大博覧会 ジオラマなどで池袋の過去、現在、未来を表現

「こうやって目線をジオラマの中の人の視線まで下げてみるともっと楽しいですよ」と山本氏

 その様子を見た山本氏は「みなさんに喜んでいただいて、ほっとしました」と安堵の表情。

 ジオラマを作るにあたり毎日写真資料を見つめながら制作したそうで、「何カ月も同じ写真を見ながら作っていて、資料から得られた情報をわかる限り、なるべくたくさん入れこんであります。同じ場所で撮影されている写真でも違う角度の写真もあって、それらを頭の中で合成して立体的にしていきます。そうやって観察しているうちに最初は気づかなかったことも見えてきたりするんですよ」

 浅草などこれまでも街のジオラマを手がけてきたという山本氏。池袋は猥雑なところが魅力的だという。「池袋ならではというところがあるんですよ。例えば普通のバスとトロリーバスが混在しているところだったり、東武デパートとバラックが同居している様子も豊島区のある時代を象徴する風景。作っていて楽しかったです」

 会場のあちこちで、あの頃の池袋を懐かしむ囁くような会話の花が咲いている。

「僕は器を作っただけ」と 山本氏。「ジオラマを見て何を思うのかというのはお客さんたち。それで初めて完成するような感じです。区民の皆様がジオラマを見ながら、いろいろお話をしてくださるとうれしいです」


 豊島大博覧会では、山本氏のジオラマのほかにも、インダストリアルデザイナーの水戸岡鋭治氏(ドーンデザイン研究所代表取締役)のプロデュースの池袋の回遊体験ができる「《イケちゃんランド》」、建築科の隈研吾氏が携わった模型、美術作家の植田志保氏による映像作品などを展示している。

 2023年3月26日まで同所で。サテライト会場の雑司が谷旧宣教師館、鈴木信太郎記念館でも同時開催中。11月3日から同日オープンのトキワ荘通り昭和レトロ館(昭和歴史文化記念館)もサテライト会場に加わる。