利益率30%で書店を元気に! “炎の講演家” 鴨頭嘉人と『コミュニケーション大全』の挑戦

出版業界の商慣習を変える鴨ブックスの取り組みに「ある種の勝算はあった」と語る鴨頭さん

50代、ジジイ2人が手に手を取り合って…

 それが元出版取次の社員で、現在は鴨ブックスの副社長を務める吉村博光さんだ。退職する段階で出版社を立ち上げることは考えていたのだろうか。

吉村博光(以下、吉村)「いや、まったく考えてなかったです(笑)。僕の佐賀の本家は白玉饅頭を130年売っている老舗で、それを東京で販売するのが僕の使命だと思っていて、地方のさまざまな名産品を日本中に広げられたらすごくいい仕事になるんじゃないかなと考えていたんです。そこに鴨頭から話をもらって、改めて “自分は何のために取次に入ったんだろう” と考えたら、そういえば出版社をやりたかったことを思い出して、これは “天の声” に従ってやったほうがいいなと判断しました」

 それから、鴨頭さんと吉村さんは2人で鴨ブックスの事業計画を練ることに。

鴨頭「会社を作る前に、2人でどんな出版社になりたいか、今の出版業界は何が問題なのかという話をしました。一番の問題は書店の数が減っていることで、本を買う機会が減るのはもちろん、自分の幅を広げる機会が失われてしまうことではないかと。たとえば、大好きな小説家の新刊が出て書店に行くと、ふと目に入った本の中から思っても見なかった宝物と出会う。そういう宝物に出会ったことで人生が変わった人はたくさんいて、 “Amazonでしか本を買わない人は、新しい扉を開く機会が失われているんじゃないか” という話をしました。

 とはいえ、僕たちが書店さんに対して “もっと頑張れよ” と言っただけでは何も変わりません。出版業界が厳しくなったにもかかわらず、本の発行点数はむしろ増加していて、毎日100~200冊という大量の本が送られてくれば、書店員さんは棚を入れ替えるだけで精いっぱい。書店員さんに “今、どんな本を読んでいるんですか” と聞くと “忙しくて読む暇がないんです” と言われるくらい日々の仕事に忙殺されているんです」

 そこで、鴨ブックスは出版業界の長年の商慣習である販売価格の利益配分、出版社約70%書店約20%、取次約10%を変えることを決断する。