累計4万部超! “炎の講演家” 鴨頭嘉人が『コミュニケーション大全』で10万部を目指すわけ

「僕らの経営理念は “書店を元気にする出版社” ですから、書店さんと仲良くならなかったら意味がない」と鴨頭さん

今こそコミュニケーションの悩みを解決する本が必要

 本の内容には、新型コロナウイルスを経た講演家としての気づきもあったという。

鴨頭「新型コロナウイルスの影響で、これほどコミュニケーションが強制的に断絶させられた期間は今までになかったと思います。コミュニケーションが断絶されると、人って息苦しくなったり辛くなったりするという状況を、僕はこの2年半で嫌というほど見てきたし、訴えもいっぱい聞いてきました。国立成育医療研究センターの調査によると、小学5年生以上の13~22%以上の子どもに中等度以上のうつ症状があったと報告されています。

 断絶されたことでコミュニケーションのインフレーションが起きてその価値は爆上がりしている。今こそコミュニケーションの悩みを解決する本が必要だということで、コミュニケーションという切り口で本を出版したわけです。

 僕がやっている『話し方の学校』という講座は、第1回目の緊急事態宣言で休校しました。そこで初めてZoom講座をスタートしたのですが、今ではZoomを使ったことがない人はほとんどいないくらい、オンラインのコミュニケーションが標準化されましたよね。これはコロナ下のムーブメントには終わらず、そのことを語らないと『大全』にはならないという意味で、第5章でオンラインコミュニケーションについても解説しています」

 そうして出版した『コミュニケーション大全』は、発売前に重版して小規模出版社としては異例の2万部でスタートし、現在は累計4万3000部を超えて順調に売れている。

鴨頭「もちろん綿密に仕込んで売っていて、たとえば発売前に全国6カ所を回る講演会ツアーを開催し、近隣の書店さんに会場まで売りに来てもらって約1600冊ほど販売しました。ツアーには全校生徒120人の中学校の先生も来てくれて、 “生徒が2年間も黙食している” と涙ながらに訴えられ、僕たちはすぐに “この学校にも講演に行こう” と決断しました」

全国ツアーでは読者の教師から “生徒が2年間も黙食している” と涙の訴えもあったという

『コミュニケーション大全』をきっかけに、副社長の吉村博光さんが全国の書店への周知活動を徹底。

鴨頭「営業メンバーが200店舗以上の書店を直接回って、 “この本を一緒に売りませんか” と必死に口説きました。僕らの経営理念は “書店を元気にする出版社” ですから、書店さんと仲良くならなかったら意味がない。愛知県を中心に展開している三洋堂書店、旭屋書店、紀伊國屋書店、ジュンク堂書店、TSUTAYA BOOK NETWORK、未来屋書店……まだまだ続くと思います」

吉村博光(以下、吉村)「全国に出張して合計200軒の書店さんやその本部の方と会って、直接お話できたことはすごく大きかったです。大体1日5軒くらいを目安としてアポイントを取って、ルートを組んで3カ月間かけて回ったんですけど、実際に会って話したことでだいぶ潮目が変わったなと実感しています。もちろん、これまでも広報やメールでのご案内はしていたのですが、 “僕たちの取り組みが書店さんに伝わっていなかったんだな” ということが改めて分かりました」

鴨頭「出版社もビジネスですから、最終的には利益を上げないといけませんが、まずは書店さんに元気になってもらうためにGIVEしまくって、 “一緒にこの業界を元気にしようぜ” ということを利益配分という形で示そうと考えています」