赤ペン瀧川「僕は基本的にはコンプライアンスの順守だったり表現の規制については行けるところまで行けと考えているんです」〈インタビュー前編〉

 昨今、「コンプライアンスの順守」という声が大きくなるにつれて「表現の自由」が侵されているケースが目立ちはしないか? コンプライアンスを順守することは当たり前のことなのだが、制作の現場が過剰に反応したり、萎縮するあまり自ら規制をかけていたりするところはないか?ということで「コンプライアンスの順守と表現の自由の間」について考えてみる。第1弾は俳優で映画プレゼンターの赤ペン瀧川。前後編となったインタビューの前編では表現に対する瀧川の本音を聞いた。

俳優で映画プレゼンターとしても活躍する赤ペン瀧川(撮影・蔦野裕)

「コンプライアンスの順守と表現の自由の間」について聞く

 赤ペン瀧川は俳優としての顔を持つかたわら「映画プレゼンター」としてテレビやイベント等で活躍。その活動範囲は映画にとどまらず、ドラマなどさまざまな分野に広がり「天才スライドトーク職人」として名をはせている。「最近は仕事の8割が赤ペンの仕事(笑)」とのことなので、まずはスライドネタでの表現について聞いてみる。

 スライドネタ作るときはやはり表現には気を使う?
「めちゃくちゃ気を使っています。でも気を使うようになったのはこの5年くらい。SNSが発達していろいろな人の声が分かりやすくピックアップされるようになって、いろいろな意見があるなということを僕も感じるようになってからですね。それにプラスして差別に敏感になってきている感じはするので、言葉を選ぶようになりました。ドラマを紹介するときも、できるだけ特定の人を下げないような言い方にするとかですね」

 かつて多くのトークライブを開催。配信もない時代だったこともあり、やりたい放題なところはあった。現在は年末に1年を振り返るトークライブを開催するのみになってしまったが、このご時世でも瀧川は配信なしを貫く。

 これはやはりライブでは「ある程度は自由にやらせてくれ」という気持ちから?
「やりたい放題なんですが、自分的な自主規制は入れています。こういう言い方をすると下げちゃうな、といった気はすごく使っています」

 SNSを意識するわけではなく、来てくれるファンの中にそういう直接的な表現に傷つく人もいるかもしれないということを意識するとか?
「そういうこともありますが、例えば映画を紹介する時に、自分が面白がれなかった時にその映画を下げたい気持ちがあったとしても、それを直接ディスるような体を取ってしまうと嫌な空気になるようなところもあるんです。なので最近は“良かったところ”と“乗り切れなかった理由”をセットで披露したりと“ライブ限定の考察ネタ”に昇華したりと工夫をするようになりました。」

 では俳優としてはなにか堅苦しく感じることはありますか?
「あんまりないかもしれないですね。演じる分にはそんなに窮屈さは感じたことはないかな。でもそれは来る役柄によるところもあると思います。撮影の現場も特に萎縮しているようには感じないかな…。でも、多分なんですが僕が現場に入る前の段階でいろいろな戦いが行われているんだろうなとは思うんですけどね。脚本家なんかはプロデューサーとかと集まって“このシーンはダメだ”とか“この表現は変えよう”とかやっているんじゃないですかね。現場に降りてきたときにはある程度、角が取れていい感じになっているものが来ていると思うんです」

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