竹中直人「『ヌードの夜』の台本がゴミ箱に捨てられていて」石井隆監督没後3年イベントで秘話語る

映画監督・石井隆の没後3年に合わせた特集上映 「石井隆Returns」(6月6日より上映)のトークイベントが23日、都内にて行われ、俳優の竹中直人と、聞き手のライムスター宇多丸が登壇。竹中が石井監督の思い出秘話を語った。
1970年代より「天使のはらわた」の劇画家として人気を博し『天使のはらわた 赤い眩暈(めまい)』(88年)で映画監督デビュー。その後も『死んでもいい』(92年)、『ヌードの夜』(93年)、『GONIN』(95年)、『花と蛇』シリーズなどを手がけた鬼才・石井隆の代表作を特集上映。
石井監督の命日(5月22日)に合わせたこの日のイベントでは、代表作の1本『ヌードの夜』のHDリマスター版を先行上映とトークを実施。
同作の主演であり、石井監督作品に最も多く出演している竹中直人は、宇多丸から石井監督との出会いを聞かれると「そのころ、劇団 青年座にいたんですが映画放送部のゴミ箱に台本が捨てられていて。『ヌードの夜』って良いタイトルだなとめくったら、石井監督の作品だった」と明かし、実は竹中へのオファーだったものの「ロマンポルノやらないでしょ、断ったよ、と言われて。復活させてとお願いして石井さんに会いに行ったんです」と話し、会場の石井ファンからも驚きの声。
石井監督に熱望され映画初主演を果たした竹中。その台本の作品は『天使のはらわた 赤い眩暈(めまい)』とタイトルを変えたが、竹中のタイトルへの思い入れもあり、後に余貴美子がヒロインを演じた『ヌードの夜』が誕生した。
「石井さんとは映画をはさんで人間同士の関係を築けた」と振り返った竹中。『ヌードの夜』で海に飛び込むシーンでは「猫の死体が浮いているような汚い海で。思わずスタッフさんに、潜るの嫌だよと言ったら、それが石井さんに伝わっちゃって。“だったら撮りません!”ってロケバスに入って出てこない(笑)」という意外な一面をはじめ数々の貴重なエピソードを語り、石井ファンを公言する宇多丸も観客と一緒に感嘆しきり。
「石井さんはすぐ“僕の映画なんて誰も見ませんよ”と言うんです。前向きじゃない。それが僕と波長が合うというか」と、石井作品で数々のはまり役を振り返りつつ「石井さんが僕にこだわってくださったのは本当にありがたいこと。なぜ死んだ、と思っちゃいますね」としんみり。
「こんな最高の映画監督がいなくなっちゃったのはさみしいけど、こんなにたくさんの方が見てくださる」と特集上映を喜んだ竹中だったが、HDリマスター版での上映に「石井さん(映像が)キレイになりすぎちゃって怒るかも(笑)」とツッコみ、ファンを笑わせていた。
没後3年 特集上映 「石井隆Returns 初期監督作4本 HDリマスター版上映」 は6月6日よりシネマート新宿、池袋HUMAXシネマズ他にて全国順次上映。