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この春、絶対見逃せない! 注目の展覧会『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』

2017.02.26 Vol.685

 幕末から明治を生きた絵師・河鍋暁斎(1831-1889)。海外の名コレクションで、その多彩な画業の全体像を一望できる貴重な展覧会。

 幼いころに浮世絵師の歌川国芳に入門した暁斎は、その後、狩野派に学び19歳の若さで修行を終了。さらに流派にとらわれずさまざまな画法を習得し、仏画から戯画まで幅広い画題を、ときに独特のユーモアを交えながら、圧倒的な画力によって描き上げた。

 本展では、そんな暁斎の多岐にわたる画業を、世界屈指の暁斎コレクションとして知られるイスラエル・ゴールドマン氏所蔵の作品約180点によって紹介。

 海外のコレクターたちの注目を集めるきっかけとなったカラスを題材にした作品から、生き生きと、ときにコミカルに動物たちを描いた作品、大きな転換期を迎えた幕末明治にありながら冷静なまなざしで西洋文化を題材に取り入れた作品など、その観察眼や表現の豊かさは、時代や国を超え人々を魅了する。さらに、七福神や如来などの神仏や百鬼繚乱の物の怪など、祈りや神秘の世界を題材とするときも、そこには暁斎ならではの視点や表現が見て取れる。

この春、絶対見逃せない! 注目の展覧会『草間彌生 わが永遠の魂 』

2017.02.26 Vol.685

 世界を舞台に活躍する、日本の代表的前衛芸術家・草間彌生。その全貌に迫る、国内で過去最大級となる大規模個展を開催。

 草間彌生(1929年?)はコック内での活動を経て1957年に渡米。巨大なカンヴァスを小さな網目状のストロークで埋め尽くし、男根状の突起を家具などにびっしり張り付けたソフト・スカルプチュアや、一切の構成を排除したモノクロームのネット・ペインティング、そしてハプニングと呼ばれるパフォーマンスなど、先駆的な作品を次々と発表し、注目を集めた。

 体調を崩し1973年に帰国するも、入院生活を送りながら活動を再開した草間は、その後、水玉、ネット、男根状の突起などの従来のモチーフを大胆に再解釈し、具象的なイメージと組み合わせた色彩豊かな作品を生みだしたほか、新たなジャンルやコラボレーションも行い作品世界をさらに広げた。

 本展は、過去最大級の個展として、初期から最新作まで総数約270点を展示。草間のアイコン的モチーフかぼちゃの巨大なオブジェ(撮影可)、日本初公開となる集大成的シリーズ『わが永遠の魂』など、見どころ満載。

平面の奥へ。『エリザベス ペイトン:Still life 静/生』

2017.02.12 Vol.684

 デヴィッド・ボウイやOASIS、カート・コバーンの肖像画などで、音楽ファンや海外カルチャーファンにも名を知られるアメリカの現代画家エリザベス ペイトンによる、日本の美術館における初個展。近年では風景や静物、オペラからもインスピレーションを得るなどその表現を一層深め、各国で高い評価を得ており、本展では作家自ら厳選した42点を展示し、25年の画業を一望する。

 ペイトンが主に手掛けるのは、自身にとって“憧れ”の存在だったり“美”を描いた肖像画や静物画。ロックスターなど、有名なカルチャーアイコンの肖像画が知られるが、ペイトンのユニークな点は、世にイメージが出回っているミュージシャンや歴史上の人物と、自身の恋人や愛犬、花などの身の回りの存在が、いずれもフラットな目線でとらえられていること。ロックスターも愛犬も等しく、そこに感じた美を、透明感のある特有の色彩や描線で描いていく。

 小品も多いため、邸宅建築である原美術館の空間での鑑賞は、静けさの中の生をより生き生きと感じさせてくれる。

平面の奥へ。『N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅 』

2017.02.12 Vol.684

 近年、国際的にも注目を集めているインドの現代アート界から、その代表的な1人、N・S・ハルシャを紹介。N・S・ハルシャは1969年、南インドの古都マイスールに生まれ、現在も同地に在住し活動しているアーティスト。世界各地で開催される国際展に数多く参加し、日本でも個展や大型グループ展に出展。国際的な舞台で評価されながらも、南インドの伝統文化や自然環境、日々の生活における人間と動植物との関係など、自らを取り巻く“生”を向き合い、独自の立ち位置を確立してきた作家。

 本展では、世界初の大規模な個展として、1995年以降の主要な作品を網羅し、マイスールから見たインドの経済発展、伝統と現代の往来、日常の営みから宇宙まで多用な“旅”に誘う。大型絵画作品や、作品の一部となって体感するインスタレーション、N・S・ハルシャが暮らすマイスールの文化や日常を体験する企画など、見ごたえ満点の構成も見どころ。

 N・S・ハルシャを通してインドの現代アートの息吹を感じる、絶好の機会となるはず。

“動き”が生む、不思議な感覚『コンタクトゴンゾ展 フォジカ・トピア』

2017.01.31 Vol.683

 2006年に垣尾優と塚原悠也が立ち上げたアーティスト集団コンタクトゴンゾ。まるで殴り合いのように激しく身体をぶつけ合うパフォーマンスや、京都サンガF.C.のホーム西京極スタジアムの広大な空間で行ったパフォーマンスなど、ユニークな活動で国内外からも注目を集める彼らが、ワタリウム美術館に登場。本人たちも宿泊する気満々の“居住スペース”や、未来のゴンゾをイメージした“ロボット”、2014年の六本木アートナイト2014で発表した『黒い家』から発展したと見られるインスタレーション作品、さらには未発表を含めた、過去のパフォーマンス作品の記録映像などを紹介。彼らの多次元的活動を通して、その表現、方法論に迫る。

 会期中はイベントも開催。2月5日は植野隆司(テニスコーツ)、コンタクトゴンゾ出演のパフォーマンスや宇川直宏(DOMMUNE)、東浩紀などが出演するトーク。2月25日はDJ方、コンタクトゴンゾ出演のパフォーマンスを実施。

“動き”が生む、不思議な感覚 アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」

2017.01.27 Vol.683

 ニュー・メディアを用いたインスタレーションや空間を設計・開発し世界中にクライアントを持つデザインチーム〈アート+コム〉と、リオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーのAR映像を手掛けるなど多彩な場で活動しているクリエイター集団〈ライゾマティクスリサーチ〉。そんな、新時代の映像クリエイティブを語る上では欠かせない2つの集団が共演する展覧会。

 本展では両者の作品に共通する特徴として“光と動き”に注目。「ポエティクス(詩学)」と「ストラクチャー(構造)」をテーマに“光と動き”の要素を、それぞれがどのように表現しているのかを展観する。

 アート+コムは2015年にバルセロナのソナー・フェスティバルにおいて発表された、天井から吊られたオブジェクトが光と音楽にあわせて振り付けられたダンスのように動く作品をアップデートして展示。ライゾマティクスリサーチは、鑑賞者の位置情報とアルゴリズムを用いて仮想世界と実世界で展開される映像・インスタレーションの新作を発表する。

喜多村みか写真展「meta」。 偶然性の中に必然を置く

2017.01.23 Vol.683

 写真家、喜多村みかの写真展「meta」が1月19日から下落合の「Alt_Medium」で開催されている。2013年に初の写真集『Einmal ist Keinmal』出版時に行って以来、3年ぶりの個展となる。

 喜多村はもともとスナップショットを中心に作品を制作していたのだが、今回はポートレイト。いわゆる人物に焦点をあてたもの。

「写真はある程度の偶然性があるもの。自分でも予想していなかった絵が出てくることもある。私はそれが写真の魅力だと思っているので、それをなるべく削ぎ落さないようにスナップという手法を取っていました。でも、人の写真は厄介だなという思いもあった。関係性が深ければ客観的に見ることができない。でも全然関係ない人の古い肖像写真なんかを古道具屋なんかで目にすると、どんな人なのか? どういうシチュエーションで撮られたのか?など、いろいろと想像ができて面白い。でも面白いのは、その人がもうこの世には生きていないから。いろいろなことを確かめる術もないから想像力がかきたてられる。時間が経つことが、その1枚の写真の強さとか力を増やしていることの理由のひとつとすれば、私が撮った写真もすごく時間が経った後に、そういうふうに見られることもあるのかな?とか、もっと魅力的なものになるのかな?と思った。そういう見方は風景の写真より人の写真のほうがドラマティックな気がしていて、人だけで作品にしたいとは前から思っていた。今回制作した写真は、ここ数年で撮られた写真なのでまだまだ古びていないわけですが、数十年後には何かの記録になるはず。上京して時間も経ち、以前よりも客観的に制作に向き合うようになった今、この作品を撮りたいと思えた。今回の写真は親密な人もいれば、道で声をかけた人もいる。写真を見る人にはその事実は分からない。ただ、おかげで以前より客観的になれたし、制作に集中することができた」

 確かに今回展示される写真は、どれも“いつ、どこで”というものが見えない作品になっている。

「写ってしまう偶然性といったものは今まで同じ。だから背景は今までと同じ偶然のもの。そこに人物という必然を置いてみた、という感じです」

日本が生んだ「美」を再発見!特別展「春日大社 千年の至宝」

2017.01.12 Vol.682

世界遺産の一つ、奈良・春日大社にまつわる、王朝工芸の名宝をはじめ刀剣類、武器武具、春日信仰にかかわる絵画・彫刻などの名品を一堂に紹介。

 会場では6章の構成で、テーマごとに貴重な品々を展示。第1章では、春日信仰の象徴的存在である鹿をモチーフにした作品を紹介。第2章では、大社に奉納された王朝工芸の国宝などを展示し“平安の正倉院”とも呼ばれるその見事な所蔵の一端を伝える。他にも、春日信仰を今に伝える絵巻や曼荼羅、仏像、奉納品ならではの美しさを持つ刀剣や甲冑、奉納された舞楽や能などの芸能に関わる品など、国宝や重要文化財を含む名宝が揃う。また、2016年に60回目の式年造替を迎えたことから、本展でも御造替に関わる記録とともに、今回の御造替で御徹下(ごてっか。神に奉られていた御道具などが役目を終え、神殿から下ろされること)され、注目を浴びた獅子・狛犬などを公開する。

 会期中、展示替えあり(主な展示替:前期展示=1月17日?2月12日、後期展示=2月14日?3月12日)。

中東唯一の日本博物館で“笑い”に特化した春画展が開催!

2017.01.10 Vol.682

 江戸時代に流行した男女の性風俗の様子を描いた浮世絵『春画』。実は世界一のコレクターが、日本に居を構えるイスラエル人であることは全くと言っていいほど知られていない。日本に来日して約20年のオフェル・シャガン氏(顔写真)は、9000点以上の春画を所有する蒐集家であり、これまでに国内外でさまざまな春画展を開催してきた古美術研究家でもある。そんなシャガン氏が母国・イスラエル(ハイファ)にある中東唯一の日本博物館「ティコティン日本美術館」で二度目の春画展を開催する運びとなった。

 前回2009年に開催した際は、同博物館過去最高の来場者数を誇るなど大きな注目を浴び、春画の世界的な人気が中東圏でも変わらないことを印象付けた。今回満を持して開催される展覧会は、“世界初のコンセプト春画展”であり、笑いとユーモアに特化した『笑い春画』125点を揃える野心的な展示内容となっていることも話題だ。

『わらう春画』(朝日新書)など春画に関する著書を持つシャガン氏は、「春画はポルノではなく、抗議や教育に対しユーモアを交えて表現したものである」と語る。

 江戸時代に春画は、浮世絵の中では最も売れていた歌舞伎絵(武者絵)に次いで、2位の売上実績を誇る。それほど庶民にとって一般的なものであり、生活に欠かせない日常的な存在だったのである。

「モラルや階級、コンプレックスを描いた春画の中にある笑いを通じて、江戸の風俗や文化が見えてくる。ポルノは個人の性欲高揚や自慰行為の道具として使われる役割、いわば“感情”が含まれていない絵ですが、春画は感情がうごめいている絵。世俗を春画という形で切り取った日本文化に世界は驚きと称賛を持っている」

 日本では春画に対する「恥ずかしい」という先入観があるため展覧会を開催すること自体、難しいという。しかし、シャガン氏は世界でさらに評価を上げることで、日本で春画展を定期的に行う夢を諦めていない。日本で春画が再評価される日は、そう遠くない未来に訪れるはずだ。

日本が生んだ「美」を再発見!天明屋尚「形質転換」展

2017.01.09 Vol.682

 日本の現代アートを代表する作家の一人・天明屋尚の2年ぶりの個展を開催。

「形質転換(Transformation)」と題し、新作を発表する。形質転換とは、外部から与えたDNAを遺伝情報として組み込み個体の表現型を変化させることを指す、生物学の用語。変化といっても、この場合その物質の組成や由来を踏まえて変化させるものであり、無方向的な突然変異とは異なる。これはまさに、日本美術のコンセプトや組成を踏襲した上で、偶発的ではなく確信犯的な改変を仕掛けてきた天明屋の作風を象徴するものだ。

 本展では、幕末明治期作とされる作者不明の洛中洛外図屏風(六曲一双)を大胆に変容させた、天明屋の作品のなかでは最大級の平面作品のほか、仏画の明王図や琳派の紅白梅図屏風を現代的に改変した作品、従来の鎧兜を変異させた立体作品を展示。さらに、初の試みとなる写真作品も発表予定。

 古美術的観点と、現代美術的観点。両方の視点を重ねつつ、新たな世界観を楽しみたい。

デザインの根源『画と機 山本耀司・朝倉優佳』

2016.12.26 Vol.681

 40年以上のキャリアを経て今なお斬新なクリエーションを生み出し続ける世界的デザイナー山本耀司の魅力と本質に迫る展覧会。

 最近のコレクションで、絵画とのコラボレーションを展開している山本。本展では「画と機」と題し、ここ数シーズンにわたりヨウジヤマモトの服づくりに熱を与えた若手画家・朝倉優佳の作品も交えながら、本展のために山本が制作した絵画や彫刻を展示。さらには、美術館の会場で製作した未発表作品なども公開する。

「画と機」という展覧会名は山本の希望により、旧知の編集工学者・松岡正剛が考えたもの。「画」は絵画を、「機」は「はずみ」や「機会」「機織(服)」を意味し、絵画とファッション、二次元と三次元、男と女など、反発しながらも引かれ合い、つながり続ける関係性を表している。そしてこの関係性こそが、山本のクリエーションを追う上でも重要なキーワードとなってくる。また、2つの言葉をつなげれば“ガキ”とも読め、時代に流されない反骨精神を持ち、自由で大胆な精神で、デザインの最前線に立ち続ける山本の姿にも重なる。

 ファッションとアートという枠組みを越え、創造の現場を体感する刺激的な展覧会となるはず。

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