石井光太『飢餓浄土』

2011.03.28 Vol.503
ph_book0100.jpg

 2005年に大宅壮一ノンフィクション賞候補作となった『物乞う仏陀』を発表した石井光太は、現在もっとも注目を集めるノンフィクション作家といってもさしつかえないだろう。


 著者は世界中を旅し、現場に足を踏み入れ、そこに溶け込み、現代日本のぬるま湯に浸かりきった我々には想像もつかない世界を突きつける。


 今回彼が描くのは戦地や密林で生きる人々と幻のかかわりについて。フィリピンの密林に現れる人食い日本兵の亡霊、ある日突然、「私が産んだ」と言って乳飲み子を抱き始めたオカマの話など、現実と幻を行ったり来たりするうちに自らの足元がグラグラと揺らぎ始めていることに気がつく。


 感心することもあれば、不快に感じる出来事もある。すべてをひっくるめて、読まずにはいられない。中毒になる一冊。



著者:石井光太 出版:河出書房新社 定価:1680円



川口葉子『東京の喫茶店 琥珀色のしずく77滴』

2011.03.28 Vol.503
ph_book0200.jpg

「喫茶店とカフェの違いは何ですか?−そんな疑問を持つすべての人へ−」と帯にあるように、同書は東京の喫茶店案内だ。カフェともチェーン店のコーヒーショップとも違う喫茶店。オーナーではなく、マスターがいれる一杯のコーヒーに、お店のすべてが詰まっているような、そんな心安らぐ空間だ。ぬくもりのある写真からは、そんな喫茶店の空気感が伝わってくる。


 第5章の「神田神保町 古本街の喫茶店」では、神保町界隈で14軒の店を紹介。ぶらぶらと古本屋をのぞきながら見つけたお気に入りの一冊を持って入りたくなる店ばかり。同書の中で著者は言う。「喫茶店なんてただ愛すればいいんです」。喫茶店に行って、一杯のコーヒーとお気に入りの本で、心落ち着く時間を過ごしたくなる。



著者:川口葉子 出版:実業之日本社 定価:1680円



Copyrighted Image