何百年も続く呪いの果てに…。奇跡のミステリーここに完結!!

2014.03.30 Vol.614
 累計36万部のヒットとなった「長い腕」シリーズ完結編。家の歪みが末代まで祟り、最先端のネット社会にまで影響を及ぼす『長い腕』、かごめ唄に隠された謎と呪いが現代によみがえる『呪い唄』。そして今回、曼珠沙華=弔い花が手向けられたのは一体誰なのか? 江戸の末期に四国の早瀬村で宮大工をしていた喜助は、あることをきっかけに村の者たちから壮絶ないじめを受け、一家心中に見せかけ殺されてしまう。その中で唯一生き残った幼い息子は成長し、やがて名棟梁として名を馳せる。彼は晩年、故郷の早瀬村に戻り、復讐のために密かに呪いを張り巡らせるのだが…。そして現代。早瀬村の旧家で、東屋敷の一人娘が殺害されるという事件が起きた。それは喜助の息子による呪いの罠なのか? またそこから発生するネットを中心とした暴動なども、時を超え巧妙に張り巡らされた呪いの連鎖なのか?

タクシー運転手が語る波乱の人生

2014.03.30 Vol.614
 最近、いくつもの書評で取り上げられ話題の『東京タクシードライバー』は、さまざまな事情でタクシードライバーになった13人の人生を聞き書きしたノンフィクション。著者はなぜタクシードライバーの人生にひかれたのか。
「ある晩、バブル崩壊で取引先が倒産した煽りを受けて、経営していた会社が潰れてしまったというドライバーさんのタクシーに乗ったんです。降りる時になって、元社長というドライバーさんが1冊の大学ノートを取り出して、見てくれないかと言ってきました。そのノートにはお客さんを乗せた場所、時間、運賃、そして職業まで細かく書いてあって、これを分析して効率よく稼いでいるから営業所でトップの成績なんだと言うのです。自分はタクシーの運転手になっても、ナンバーワンなんだと。聞いていてなんだか切なくなりましたが、同時に、こういうストーリーを持ったドライバーさんが他にもたくさんいるのではないかと思い取材を始めました」
 元社長、元俳優、元外資系企業の営業マン、夫が専業主夫をやっている女性ドライバーなど、どのストーリーも小説よりずっとずっと波乱に満ちている。
「そうなんです。1話目の“奈落”は妻の浮気が原因でホームレスになり、新聞の勧誘員やソープランドの呼び込みなどさまざまな職業を転々としながら地獄のような日々を送り、そこから必死で這い上がってきた人の話です。そんなかなりヘビーな話などを、1話完結の読み物として面白く読んでもらえるようにしました」
 前向きになれた、元気が出たなど、ポジティブな感想が多いとか。
「苦労しながら頑張って生きているドライバーさんたちの姿に勇気づけられたと言ってくださる読者さんもいます。取材を通して感じたのは、ドライバーさんにはとても人間的な人が多いということ。ひとりひとりのドライバーさんの人間性の素晴らしさが、読んでくださった方に伝わっているのかもしれません」

マンガ『ちひろさん』に見る理想の生き方と人との接し方

2014.03.16 Vol.613
 レディースコミックというと、ひと昔前、というか黎明期は嫁姑やご近所ものといった内容で、主婦のひまつぶしなんて思われていた時代もあった。
 しかし、どうやら最近ではそういう認識は改めなければいけないようだ。むしろ青年誌に近いテイストの作品も増え、その中から名作も生まれている。
 以前は、家に置くスペースがないから、高いから…などという理由で女性誌=単行本が売れない、と考えられることが多かったが、手元に残しておきたくなるような作品も多くなっている。
『ちひろさん』(秋田書店刊 650円=税込)という作品もそんな一冊だ。
 同作は『ショムニ』を描いた安田弘之がかつてモーニング(講談社)の増刊号などで連載していた『ちひろ』の続編にあたる作品。
『ちひろ』は風俗嬢のちひろと、夜の街に生きる人々を描いた物語だった。人気ナンバーワンなのにふらりと店をやめ、お客をしばりつけることなく、野良猫のように生きる彼女は、熱狂的な読者を獲得した。
 今回、10年以上の時を経て新たに描かれる『ちひろさん』は、そんなちひろが海辺の小さな弁当屋で働いているところから始まる。
 元風俗嬢であることを隠さず、マイペースな接客をする彼女のもとにはかつてソープ嬢だったころと同じようにさまざまなお客が訪れる。
 人間関係、恋愛、仕事、家庭…さまざまな問題を抱えながらも、彼女と接することで新たな生き方をたぐり寄せる登場人物たち。そんなエピソードを通じて、読者も癒される。
 レディースコミックでは読者が自分を主人公に置き換えられるようなものが主流なので、少年誌や青年誌のようにキャラが立ちすぎた主人公の作品は受け入れられにくい傾向がある。そんな意味でも、この『ちひろさん』は異例な作品。
 編集部にも20〜50代と幅広い読者から「ちひろさんの生き方にあこがれる」といった感想も多く寄せられるという。
 テレビ朝日やテレビ東京の深夜枠でドラマ化したらものすごく人気が出そう、そんな作品。

わたしたちのすごさを世界中に見せつけてやる『てらさふ』朝倉かすみ

2014.03.16 Vol.613
 北海道の小さな町で運命的に出会った堂上弥子とニコこと鈴木笑顔瑠。中学生の2人はそれぞれ「ここではないどこか」に行くため、有名になることを決意する。手始めに、弥子が立てた計画は、ニコとして読書感想文で賞を取ること。弥子が読書感想文に選ばれた作品を読み、どう書けばいいかを綿密に分析、そして書き上げた作品をニコの名前で応募する。つまり2人は前に出る側と後ろに回る側に分かれ、“堂上にこる”という最強の女の子を作り上げたのだ。文学の才能を持つ美少女というキャラクターを武器に、次に2人が狙うのは史上最年少の芥川賞作家。しかし、そのころから運命の出会いだったはずの2人には、微妙な距離ができてくる。ゴーストライターによって有名になっていく自分に違和感を覚えるニコと、裏でニコを動かしている弥子。少女たちは「ここではないどこか」にたどり着けたのか!?

息子は自閉症、そして12歳の宇宙物理学者

2014.03.02 Vol.612
 アメリカに住む少年ジェイコブはアインシュタイン級のIQの持ち主。記憶力が抜群で、2週間で微積分を独学で習得。さらに9歳で大学に入学し宇宙物理学についての独自の理論に取り組み、ノーベル賞候補になると言われている。しかし、そんな天才児がその能力を開花させるまでには、大きな壁があったのだ。
 インディアナに住むクリンスティン・バーネットは結婚し、待望の子どもを授かる。しかし、長男として生まれてきたジェイコブは、2歳の時に自閉症の一種、アスペルガー症候群だと診断される。将来自分で靴紐を結べるようにはならないと言われたが、クリスティンはジェイコブが持つ才能を信じてみることにした。発達障害の専門家たちのアドバイスを無視し、徹底的にジェイコブのやりたいことをやらせる。なぜみんなは息子ができないことばかりに注目するの?なぜできることに目を向けてくれないの? 母は息子が数字に異常な興味を示すことを発見し、ある日天文学の講義に誘う。するとジェイコブは、宇宙の法則を見つけ出すことに喜びを感じるようになり、必要な知識をスポンジのようにどんどん吸収していく。そして学ぶ喜び、真理を導く喜び、それを分かち合う喜びみ目覚め、他者とのコミュニケーションが可能になっていった。大きな障害に立ち向かい、息子に普通の楽しい子ども時代を体験させたいと手探りで戦ってきた日々。自閉症の子どもを持つ母親に勇気を与える本であるとともに、すべての子どもには無限の能力が備わっていて、それを引き出すきっかけがあれば輝かしい可能性が開けるということを教えてくれる一冊。

これもみんな、愛。『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』コエヌマカズユキ

2014.02.16 Vol.611
 ジャーナリストとして活躍する一方、夜は新宿のゴールデン街のバー「月に吠える」のマスターとして働く著者による、いろいろな愛の物語について綴った本。新宿ゴールデン街で出会った人、またそんな人たちに紹介してもらった人、さらにはインターネットで知り合った人などに取材をして書き上げた6つの物語が紹介されている。
 ざっとあげると「車椅子の男と風俗嬢のカップル」「レズビアンの女」「お見合い結婚をした夫婦」「植物状態の妻を介護しつづける男」「ネット上でしか恋愛できない女」「ラブドール愛好家」。ヘビーなものから、ライトなものまでさまざまだ。赤裸々に語られるその物語は特別で異常な愛に映るかもしれない。しかし、著者の偏見を持たない目で彼らと対峙し、聞き出し、書き上げられた作品には、何か普遍的でシンプルな愛を感じることができる。見た目や職業、価値観、性的指向は人それぞれだ。
 この世に普通の人はいない。みんなどこかしら特殊だ。いや、特殊なことが普通なのだ。そう考えると、この本に登場する人たちの恋愛は彼らにとってごくごく普通の恋愛であると言える。ピュアすぎて、不器用すぎて、読んでいるこちらの胸が痛くなる話もある。しかし、読み終えたあと、共感できる気持ちが芽生えている事に気づく。

あなたのために、復讐してあげるから–。『美幸』鈴木おさむ

2014.02.02 Vol.610
 新聞社主催の書道コンテストで優勝し、メディアに取り上げられて目立ったことから、学校でいじめにあうようになった少女・美幸。
 彼女は、何も理解してくれない親を恨み、いじめに気がつかない鈍感な教師を憎み、誰ひとり味方になってくれないクラスメートを呪詛するようなひとり遊びにより、かろうじて学生時代をやり過ごしてきた。
 そんな彼女が就職した先は芸能事務所。そこで元役者で、今はマネジャーとして働いている雄星に出会う。彼もまた、上司から執拗ないじめにあっていた。そんな彼の境遇を自分と重ね合わせていくうちに、いつしか彼のことが気になりだし…。美幸が雄星に誓った無償の愛は、どんでもない行動を彼女に起こさせる。ただ、彼を救いたい、彼を傷つけるもの、悲しませるものを排除したい。その一心で彼女は恐ろしくも時に滑稽な復讐を企てていく。
 彼女がすべてを投げ出した無償の愛の行方は? そして、その先にある意外な結末は?! 復讐に取り憑かれた美幸は、恐ろしくもあり、悲しい。彼女の心に平穏が訪れる日が来るのだろうか。著者初めての恋愛小説は、本当の意味の無償の愛を感じさせてくれる切なすぎる物語だ。

捜査一課の凸凹コンビ、再び登場!

2014.01.19 Vol.609
『戦力外捜査官 姫デカ・海月千波』につづく戦力外シリーズの第二弾。
 警視庁捜査一課火災犯捜査二係所属の海月千波はキャリア組の警部。肩書きは切れ者の女性刑事のようだが実際は、「警察官としての現場の仕事の能力は “素人の平均よりさらにだいぶ下”」で、「本当に大卒かと疑わしくなる童顔の上に身長は明らかに百五十センチ未満」の見た目。加えてメガネっ子で、「方向音痴で天然ボケ、ついでに運動神経は皆無で車の運転も破滅的に下手」だというまさに戦力外の捜査員なのだ。そんなドジっ娘メガネ警部が、取り柄である超一流の推理能力とやる気だけで、お守り役の刑事・設楽恭介と事件に果敢に挑んでいく。
 あるカルト教団が“ハルマゲドン”をたくらんでいるという話を聞いた2人は、公安と手を組み独自に捜査を進めていくが、その中で設楽刑事の妹にカルト教団の魔の手が伸びていることがわかり…。
 本格警察小説でありながら脱力して笑えるキャラクター設定、スピード感のあるストーリー展開、時にホロリとさせる心情描写がぐいぐい読ませるエンターテインメント娯楽作。

BOOK 眠れないほど面白い!世界1100万人が熱狂!

2014.01.05 Vol.608
『ダ・ヴィンチ・コード』のダン・ブラウンの最新作が登場!全世界シリーズ累計1億7000万部を突破したラングドン・シリーズの第4弾はイタリア、そしてアジアが舞台。病院で目が覚めたラングドンは、そこがイタリアのフィレンツェであることに気づく。しかし、そこにいる理由、頭部に負った傷の理由など、丸2日間の記憶が失われていた。その時、病院内に武装した襲撃者が押し入り、担当の医師を銃殺。自分が狙われていることを悟ったラングドンは、美人の女性医師シエナの手引きにより、病院を脱出する。どこまでも追ってくる暗殺者から逃げながら、ある謎を解くことが、その状況を解決してくれるのではと考えた。そしてシエナとともに、イタリアの名画や歴史的建造物、そしてダンテの『神曲』に隠された暗号をもとに、少しずつ真実に近づいて行くのだが…。これまでの謎解きに、地球規模の恐ろしい大問題が絡み合い、物語は意外な展開を見せる。ラングドンとシエナは、世界滅亡のカウントダウンを阻止することができるのか!?

BOOK 早世から一年

2013.12.22 Vol.607
 不世出の役者といわれ、歌舞伎だけではなく、舞台や映画などのメディアで活躍していた中村勘三郎が逝って一年。長年親交のあった作家と、役者勘三郎と中村屋を支えてきた妻による本が出版された。『勘三郎伝説』は、父親である先代勘三郎に密着した著作がある著者だけに、歌舞伎への造詣も深く、その作品の描写とともに、役者・中村勘三郎の人生を見ることができる。また、プライベートで交わされた会話やエピソードには人間・中村勘三郎の魅力があふれ、著者が勘三郎を役者として、そして人間として深く愛していたこと、そしてそんな彼の不在に深い喪失感を抱き、いまだに受け入れられない気持ちを持っていることが痛いほど伝わってくる。『中村勘三郎 最後の131日』は、小学6年の時に「勘九郎お兄ちゃまのお嫁さんになりたい」と願った妻が、その出会いから闘病の日々を振り返る。いるだけでその場を明るくする勘三郎が実はうつ病に悩まされていたことなど、今だから明かせる真実に驚かされるとともに、本人と家族が一緒になって乗り越えてきたことに感謝の気持ちさえわき起こる。そんな家族がいて、私たちは彼の素晴らしい芸を楽しむことができていたのだと。2冊に共通することは、勘三郎がいかに愛にあふれたチャーミングな人間だったかということ。勘三郎は若くして亡くなることで、天才の名を不動のものにしたかも知れない。でも彼を知る人は思うだろう。そんなものよりも、ただもっと生きて、ワクワクするような芝居をもっともっと見せてほしかったと。歌舞伎ファンでなくても、勘三郎の人間力に胸を打たれる作品だ。

BOOK この落語家を聴け! この落語家は聴くな!! とまでは言わないけど……

2013.12.08 Vol.606
 芸歴49年の三遊亭円丈が、落語家の視点で落語と落語家を論評した本を出版。前口上として、その意味をこう記す。「一落語家から見て、落語評論家という存在はどうもウサン臭くて信用できない。というのも、野球評論家は元野球選手だが、落語評論家は元素人なんだ。これが今ひとつ、プロの落語家から見ると説得力がない—」。確かに、言っていることは分かるが、現役の落語家が、同じ高座に上がる同業者のことを、批評し採点するというのは、前代未聞だろう。論評されているのは、伝説の名人から大長老、大御所、中堅、若手、上方落語家まで53人。もちろん、そこまでの覚悟なので、ほめてばかりではなく、かなり厳しい採点をしている人もいる。しかし読んでいて不快にならないのは結局のところ、著者の中にある落語へ対する愛が見えるから。自分の中にある葛藤や弱さも吐露し、身を削って書いているのが伝わってくるのだ。各芸人のオススメの演目も紹介しているので、気になる落語家がいれば、その演目を聞いてみよう。どんなにボロクソに書いていても、楽しめる。そこには平等で真摯な視線があるから。

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