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冷蔵庫の中身が変われば生き方が変わる『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』

2017.04.13 Vol.688

 37歳でフランスの名門料理学校、ル・コルドンブルーを卒業したアメリカ人の著者はある日、スーパーの中で衝撃的な光景を目にした。それはショッピングカートの中に、食材ではなく手軽に調理できる加工品が、やたらめったら投げ込まれていたのだ。思わずその女性を尾行し、行動を盗み見るとさらに大量の冷凍食品を次々と投げ入れていく。

 そして巨大なファミリーサイズの冷凍ハンバーグを手に取るのを確認したところで我慢できず、思わず話しかけた。著者はその女性との会話がヒントになり、加工食品に頼る女性10人を対象にした料理教室を開くことに。料理教室を始める前、著者は各家庭を訪問し、キッチンと冷蔵庫をチェックした。するとそこに意外な共通点を発見する。料理をしない女性たちの冷蔵庫にはぎっしりと物が詰まっているのだ。著者はレシピを教えるのではなく、女性たちの意識を変えることで、料理ができるようになると感じた。彼女が徹底してやったのが、テイスティング。塩、チキンスープ、オリーブオイル、チーズなど料理のベースとなる食材について、加工品からオーガニックのものまで数種類をテイスティングさせ、感想を言ってもらう。それがきっかけになり、自分たちがどんなに化学的な方法で加工されたものを食べていたかに気が付かされる女性たち。気付きを得た女性たちは、料理に対する苦手意識を克服していく。

 おいしそうなレシピとともに、食品廃棄の問題、添加物の問題、そして畜産業を含む生産から流通の問題までを取り上げたルポとしても興味深い。女性たちの成長とともに、自分の食生活を見直すきっかけとなる一冊。

スタートダッシュを楽しくキメる!『ニマイメ』スコット&リバース

2017.04.11 Vol.688

 米ロックバンド、ウィーザーのフロントマンであるリヴァース・クオモと米ロックバンドALLiSTERやthe HIATUSの細美武士らとのロックバンドMONOEYESで活躍するスコット・マーフィーの日本を愛する2人が日本語で歌うプロジェクトの最新作。前作『スコットとリバース』からは4年ぶりとなる。日本のロックサウンドと、ウィーザーを思わせるエモいメロディーラインが融合し、リスナーをキュンキュンどころかギュンギュンさせるアルバムだ。本作にはMONGOL800のキヨサク、RIP SLYMEのPES、miwaといった国内アーティストも参加している。楽しい1枚。

[J-POP ALBUM]ソニーミュージックジャパンインターナショナル 4月12日(水)発売 2400円(税別)

スタートダッシュを楽しくキメる!『ア・デイ・カムズ』勝手にしやがれ

2017.04.11 Vol.688

 結成20周年を迎えるジャズパンクバンド、勝手にしやがれが最新アルバムをリリース。常に熱量が高くクールでエネルギッシュなパフォーマンスが飛び出してくるような作品で楽しませてくれるが、アニバーサリーを迎える節目の作品だけに、いつも以上にスゴい! いつも以上にアツい! そして、とんでもなくカッコいい作品に仕上がっている。希望にあふれたタイトルトラックはもちろん、リスナーを本作の世界にいざなうような軽快な『デヴィットスター』、タイトルと相反するような『ア・デイ・ワズ』、『スウィート・バルカン・ビート』『コーヒー&タバコ』など音楽で旅しているような気分になってくる。

[J-POP ALBUM]UK.PROJECT  4月12日(水)発売 2900円(税別)

スタートダッシュを楽しくキメる!『Magical Fiction』チャットモンチー

2017.04.10 Vol.688

 福岡晃子と橋本絵莉子からなるチャットモンチーの2017年最初のシングル。タイトルトラックは80年代テイストのグルーヴのあるリズムが心地よい軽快な曲で、新年度とか新生活といった時節柄の新しさではなくて、過去にさらっとさよならして新しくスタートするリリックが載せられている。力強い応援ソングとは違うチャットならではの新しいスタートを演出する曲だ。カップリングには、ライブでたった1度だけ披露したチョコレート好きにはたまらない『ほとんどチョコレート』を浮遊感のあるサウンドで大胆アレンジ。ウルフルズの名曲を阿波踊りテイストを盛り込んでカバーした『かわいいひと』を収録。

[J-POP SINGLE]キューンミュージック 発売中 初回生産限定盤1265円 通常盤初回仕様1165円(ともに税別)

スタートダッシュを楽しくキメる!『Hopeless Romantic』Michelle Branch

2017.04.10 Vol.688

 米シンガーソングライターのミシェル・ブランチが放つ最新作。ゼロ年代の女性シンガーソングライタームーブメントの立役者として活躍した彼女が14年ぶりに放つフルアルバムは、ザ・ブラック・キーズのパトリック・カーニーと、ベックやノラ・ジョーンズを手掛けるプロデューサーのガス・セイファートを迎えて制作され、自叙伝的なロック作品に仕上がった。

 ミシェルは本作で、失恋し新しい恋を見つける。本人の言葉を借りるなら「単に手放して、前進して、そして大丈夫になることを理解するってこと」が丁寧に綴られているのだ。ボーナストラックを含めて15の曲では、美しくてエモーショナルなギターサウンド、ベースライン、ミシェルの歌声が涙腺を刺激する。それと同時に体を突き動かさせてしまうのは、彼女のシンガーソングライターとしての魅力であり、スタッフ陣の手腕だろう。

 世界がいま最も注目しているとされる本作を携えて、6月には来日公演も決定している。彼女が新境地を切り開いたともいえるアルバムだけにライブパフォーマンスは見ておきたいところだ。

[ROCK ALBUM]ユニバーサル 発売中 2700円(税別)

ジャニーズの上田竜也と横山裕がそれぞれ異色のタッグで主演を務める舞台2本

2017.04.09 Vol.688

『新世界ロマンスオーケストラ』

 KAT-TUNの上田竜也の3年ぶりの主演舞台は初めての挑戦となるコメディー作品。

 上田はこれまでシェイクスピア作品や、蜷川幸雄、岩松了の演出のもと、シリアスな役柄で舞台に立ってきたが、今回は複数の女性に何股もかけるサイテー男という180度趣きの違う役。

 間もなく30歳を迎えるインディーズバンドのボーカルを務める拓翔にメジャーデビューの話が舞い込んでくる。その日を境に一気に調子に乗り始める拓翔だったが、彼には隠さないといけないスキャンダラスな秘密があった。

 拓翔は複数の女性と関係を持っているというサイテーっぷり。しかし世の中そううまくは回らないようで…。
 本作の作・演出を手掛けるのは今や飛ぶ鳥を落とす勢いの月刊「根本宗子」の主宰・根本宗子。「男性が中心にいて、周りに女子が群がっているハーレムな感じで、でもラブシーンなし、な作品をいつか作ってみたい、そんなことが成立する男性はめったにいない! 今回がチャンス」と本作を書き下ろしたという。拓翔をめぐって複数の女性たちが登場するのだが、女が複数集まった時の物語の転がしは根本の真骨頂。どんな物語を見せてくれるのか楽しみなところ。

【日時】4月30日(日)?5月21日(日)(開演は月?水19時、金13時、土日13時・18時。木曜休演。※30日(日)は18時開演。3日(水)は13時/18時開演。21日(日)は13時開演。開場は開演30分前)【会場】東京グローブ座(新大久保)【料金】全席指定 S席8800円、A席7800円、B席5800円【問い合わせ】東京グローブ座(TEL:03-3366-4020 [公演公式サイト] www.sekaroma.com/ )【脚本・演出】根本宗子【出演】上田竜也、清水くるみ、早織、青山美郷、長井短、根本宗子、宮崎吐夢、西田尚美

スタートダッシュを楽しくキメる!『CLIMATE CHANGE』PITBULL

2017.04.09 Vol.688

 米マイアミ出身の世界のお祭り番長こと、ピットブルの最新作。前作『ダーレ』(スペイン語歌唱アルバム)からは1年半ぶり、英語歌唱アルバムとしては大ヒット作『グローバリゼーション』から約2年半ぶりのリリースとなる。レゲトンやキューバンミュージックを取り入れたオリジナルなパーティーサウンドで世界を持ち上げてきた彼だが、前作そして今作のタイトルからも感じられるようにサクッと自分の貧しかった生い立ちを織り交ぜながら、今のアメリカや、アメリカンドリームを手にした現在の自分の立ち位置で人生を楽しもうと謳歌する。お祭り番長の最新サウンドで盛り上がろう! ハッピーなパワーがさく裂する楽曲は新しい生活にピッタリのサントラ。

[DANCE ALBUM]ソニーミュージックジャパンインターナショナル 発売中 2200円(税別)

12トンの水が降る傑作ミュージカルが渋谷で開幕

2017.04.04 Vol.687

 英ダンサーのアダム・クーパーが主演するミュージカル『SINGIN’ IN THE RAIN~雨に唄えば~』が3日、東急シアターオーブで開幕した。2年半ぶりの来日公演で、アダムが土砂降りの雨のなか水しぶきを上げながらダンスする演出は健在。ずぶ濡れになりたいオーディエンスも殺到しそうだ。

 初日公演の前に行われたプレスコールで、12トンの水を浴びながらダンスを披露したアダムは、その直後に取材に対応。ずぶ濡れだったことについて聞かれ、「大丈夫です。50人のスタッフが僕の面倒を見てくれるので」と話し笑わせた。制作スタッフによれば、水は適温に保たれているというが「温泉ほど温かくはない」とのこと。
 
 ミュージカルは、ジーン・ケリーが雨の中で歌って踊るミュージカル映画の名作『雨に唄えば』を舞台化したもの。ハリウッド映画がサイレントからトーキーへと変わっていく時代にブロードウェイを目指す作家や役者たちのサクセスストーリーと、映画製作現場の舞台裏を描いている。

 30日まで同所で。

なんてかわいいのだ。ああ、なんて、なんて、なんて。—角田光代

2017.03.28 Vol.687

 47人の作家・著名人による猫についてつづったエッセイ&マンガを集めた一冊。猫の可愛さをひたすら書くもの、名前の由来、猫との別れの一日と思い出、路地で一瞬すれ違った時の描写、猫の尻尾についての考察など、直接的な関わりから、猫がチラっと登場するだけのエッセイまで猫の出現方法はさまざま。水木しげるは、猫を擬人化させ言葉を喋らせ、猫から見た人間の生き方を鋭く批評。また、長谷川町子の絵と文章による「どうぶつ記」は、マンガとは違う長谷川のユーモラスな魅力があふれる作品だ。柳瀬尚紀の『私家版猫事猫信ことわざ小辞典』は、小学館『故事俗信ことわざ大辞典』の猫にまつわることわざの解釈に訂正を入れるという手法を用い、猫を全面的に擁護するという試み。ほかにも、穂村弘は歌人らしく、猫を見かけた時の様子を、詩的に表現。ひとつの物語となっている。多くの有名、人気作家のプライベートな姿が見えるようなほほえましいもの、作家の個性があふれる猫愛に満ちた作品が多く収録されている。しかし、谷崎潤一郎から角田光代まで。猫好きな人がどんなに多い事か。この世から猫がいなくなったら、生まれなかった文芸作品もたくさんありそうだ。

【収録作家】(掲載順)角田光代、片岡義男、村上春樹、堀江敏幸、吉本ばなな、丸谷才一、鹿島茂、小林まこと、横尾忠則、穂村弘、浅田次郎、幸田文、吉行淳之介、長谷川町子、半藤末利子、加藤典洋、谷崎潤一郎、寺田寅彦、柳瀬尚紀、金井美恵子、池澤夏樹、柴田元幸、武田花、大島弓子、小池真理子、いしいしんじ、小倉千加子、伊集院静、平川克美、佐伯一麦、高橋源一郎、、平出隆、佐々木幹郎、水木しげる、澁澤龍彦、安西水丸、斎藤環、野坂昭如、中井久夫、中島らも、田村由美、麿赤兒、保坂和志、アーサー・ビナード、田中小実昌、伊丹十三、町田康。

日本の女子レスリング草創期から取材してきた男から見た強さの秘密 ——布施鋼治氏

2017.03.27 Vol.687

 2008年に『吉田沙保里 119連勝の方程式』で「ミズノ第19回スポーツライター賞優秀賞」を受賞したスポーツライターの布施鋼治氏による『なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨』(双葉社。本体価格1500円)が刊行された。

「リオ五輪前、全国少年少女レスリング連盟の今泉雄策理事長から『吉田と伊調の足跡をシンクロさせながら、女子レスリングの歴史を振り返るノンフィクションを書かないか?』と薦められたのがこの本を書くきっかけでした」と語るのは著者の布施氏。

 布施氏は古くはプロレスから始まり、今では総合格闘技、ムエタイ、レスリングを中心に取材するスポーツライター。
「87年秋の話になるけど、ヨーロッパを放浪中に第1回世界選手権を取材する機会を得たんですよ。現地を訪れた日本のマスコミは僕ひとりでした(笑)」

 その時になにか感じるものがあった?

「それだけ当時の女子レスリングは世の中からマイナー扱いされていたわけだけど、当時セミプロライターだった僕を福田富昭さん(現・日本レスリング協会会長)や今泉さんは快く受け入れ、コーチの部屋に寝泊まりさせてくれました。来る者は拒まずという姿勢に居心地の良さを感じましたね」

 その後定期的にレスリングを取材している布施氏は現在RIZINで総合格闘家として闘う村田夏南子もプロ転向以前から取材している。

「この本でも夏南子ちゃんにはかつての吉田の最大のライバルとして登場してもらいました。練習熱心な子なので、新天地での成功を願っています」

 現在の日本のスポーツ界はレスリングに限らず、なぜか女子の活躍が目立つ。古くから女子レスリングの取材を続けてきた布施氏の目から見て、なにか原因のようなものを感じることは?

「この本の冒頭でも書きましたけど、『男性にできて女性にできないことは何ひとつない』ということに尽きますね。強くなるにつれ、女性アスリートはタレント性も磨かれているような気もします」

 2020年の東京オリンピックに向け、気持ちの高まる一冊!

新しい何かが始まる!『FROM DEEWEE』Soulwax

2017.03.27 Vol.687

 DJデュオ、2 Many DJsとしても活動するベルギー出身のロックバンド、ソウルワックスがオリジナルとしては12年ぶりに放つ最新作。90年代には“踊れるロック”曲、キャッチーな楽曲でシーンを夢中にさせていたが、2000年以降はDJの活動のほうが目立ちがちだったのは事実。その一方で溜りにたまっていたメンバーのバンドとして作品を発表したいという想いがさく裂しているのがこの作品だろう。リスペクトされる“ダンスロックバンド”として彼らは、本作で、2017年の踊れるロックをスマートに提示して見せる。たたずまいも含めて、やっぱりカッコいい。

[ROCK ALBUM]Play It Again Sam / Hostess 発売中 2490円+税円(税別)

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