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歴史に埋もれた極めて特異なテーマ PARCO PRODUCE『BENTベント』

2016.06.26 Vol.669

 ナチス政権下のベルリンで行われていたユダヤ人の迫害をテーマとした作品は、小説、映画、演劇と数多い。しかし当時行われていたもうひとつの迫害、同性愛者へのそれについて描かれた作品はそうは多くない。『BENT』は歴史に埋もれたこの極めて特異なテーマを扱った作品。

 舞台はナチス政権下のドイツ・ベルリン。マックスは毎夜、女装のママが経営し、恋人のルディがアルバイトするクラブに入り浸っては好みの男をアパートに持ち帰る日々。しかしそんな生活は長く続かず、マックスとルディはナチスのホモセクシャル狩りに遭い、強制収容所送りになる。強制収容所に向かう途中、ルディはナチスになぶり殺される。失意のマックスが収容所に着くと、そこには同性愛者の印であるピンクの星をつけたホルストという男がいて、2人には精神を崩壊させるための過酷な強制労働が課せられる。そんな作業を繰り返しているうちに2人は心を通じ合わせていくのだったが…。

 過酷で救いのない状況に置かれながらも愛と尊厳を失わずに生きた男たちの物語を通じて、生きること、そして愛することについて深く考えさせられる作品。

PARCO PRODUCE『BENTベント』
【日時】7月9日(土)〜24日(日)(開演は日木・祝日14時、月水14時/19時、金19時、土13時/18時。火曜休演。※9日(土)は18時開演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】世田谷パブリックシアター(三軒茶屋)
【料金】全席指定 8800円/U-25チケット5000円(観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・要身分証明書。チケットぴあ・前売り販売のみ)
【問い合わせ】パルコ(TEL:03-3477-5858 [HP] http://www.parco-play.com/web/ )
【作】マーティン・シャーマン
【翻訳】徐賀世子
【演出】森新太郎
【出演】佐々木蔵之介、北村有起哉、新納慎也、中島歩、小柳友、石井英明、三輪学、駒井健介/藤木孝

劇団の代表作を9年ぶりに再演 猫のホテル 本公演『苦労人』

2016.06.25 Vol.669

「人間のバカ哀しさ」を描き続けて26年。

 最近では外部の演出家を招いての公演、二人芝居や三人芝居といった少人数での作品、実際の事件を題材にした実験作など変則的な公演に挑み、改めて劇団としての地力の強化を図ってきた。

 そんな活動にもひと区切り。今回は外部への出演が続いていたメンバーがほぼ揃うこともあって、劇団の代表作でもある『苦労人』を9年ぶりに再演する。

 本作は1997年に初演し、2000年、2007年と劇団の節目に上演されてきた作品。

 物語の始まりは室町時代の山城の国。いまにも民衆が一揆をおこすような不穏な空気が漂っていた。今日も土嚢を積んで、争いにそなえる民衆のなかに、ひとり野心的な“ごん”という名の男がいた。この男、野心はともかく苦労の遺伝子も持ち合わせていたようで、代々この一族は苦労を受け継いでしまうのだった。

 室町時代から平成の現代までをまたにかけ、野心的な一人の男とその子孫たちの悲哀を笑いとばしながら骨太に描く。
 ベテランというにはまだ早いのだが、妙に熟練感の漂う手練れの俳優たちによって見応えのある作品に仕上がっている。

猫のホテル 本公演『苦労人』
【日時】7月6日(水)〜11日(月)(開演は水木19時30分、金〜日14時/19時30分、月15時。開場は開演30分前。当日券は開演45分前)
【会場】すみだパークスタジオ倉(錦糸町)
【料金】全自由席(整理番号付き) 前売4300円、当日4500円/学割3000円(劇団のみ取扱い。当日精算。要身分証明証)【問い合わせ】猫のホテル(TEL:080-3409-5111[HP] http://nekohote.com/ )
【作・演出】千葉雅子
【出演】中村まこと、森田ガンツ、市川しんぺー、佐藤真弓、村上航、千葉雅子/小林健一(動物電気)/久ヶ沢徹

趣は違えど異端な2作品 中野成樹+フランケンズ2016『えんげきは今日もドラマをライブするvol.1』

2016.06.12 Vol.663

 中野成樹+フランケンズは2003年の結成以来「翻訳劇」をメーンに上演を続けてきた。翻訳劇といっても彼らのそれは「誤意訳」と呼ばれる独特のもの。逐語訳にとらわれない翻訳、あらすじのみを死守する自由な構成、従来のイメージやマナーにとらわれない作品解釈で独自の物語を構築している。

 この独特の方法論と表現は、当初は伝統を重んじる向きからはよく批判の対象となっていたが、出来上がった作品のクオリティーの高さでそういう声を黙らせてきた——という感じ。

 最近は翻訳劇に加え、日本の近代戯曲やオリジナル戯曲も上演するなど幅広い活動をしている。

 そんな流れの中で今回は2つのプログラムを用意。

 Aは「ナカフラ流カヴァー・アルバム」と名づけ、シェイクスピア『夏の夜の夢』、モリエール『亭主学校』、森本薫『華々しき一族』のカヴァー3本立て。

 Bは「ナカフラ流ミックス・アルバム」と名づけ、ソフォクレス、シェイクスピア、チェーホフ、イヨネスコ、三島由紀夫、柴幸男、三浦直之といった古今東西の戯曲より名シーンをメドレー上演する。

趣は違えど異端な2作品 太宰治作品をモチーフにした演劇 第13回『逆光、影見えず』

2016.06.12 Vol.668

「太宰治作品をモチーフにした演劇」は平成16年から始まった三鷹市芸術文化センターの名物企画。そのタイトル通り、太宰の作品をそのまま、もしくはモチーフとしながら太宰のエッセンスにあふれたオリジナル作品を作り上げるというもの。

 今年はMCRが、太宰治の初期の短編『逆行』をベースに “どうにもならなかった男”が「何がどうして」どうにもならなかったのかを、明るい罵詈雑言を交えてにぎやかに振り返りつつ、結果、終末へと進んでいく様子をユーモラスに描くという。

 本作の作・演出を務める櫻井智也は太宰の初期の作品に漂う「満たされ無さ」という感覚が「自分が日々抱いている思いに、とても近い」ということから本作を選んだという。

 太宰といえば作家としては「無頼派」と称され、私生活では数多くの女性遍歴を重ね、自殺未遂を繰り返し、最後は入水自殺を完遂させるという筆舌に尽くしがたい人物。櫻井にも太宰と通底するところは間違いなくある。相変わらずナイスな人選。

グルメ探偵番外編! 探偵「ダイハツトーテム」に行く

2016.05.25 Vol.667

 いつもはおいしいお店のレポをしている“東京グルメ探偵”が今回レポするのは、お台場で行われている『シルク・ドゥ・ソレイユ「ダイハツトーテム」東京公演』。実は探偵、シクル・ドゥ・ソレイユの大ファン。前回のオーヴォも見に行ったし、その前も何度も足を運んでいるのだ。

 5月某日、めちゃめちゃ暑い平日の昼間、台場駅に降り立った探偵は驚いた。「なんちゅー人やねん」(←何故か関西弁)。駅から公演の会場となる、お台場ビッグトップまでの道は人、人、人…。そんな人の群れをかいくぐり到着した会場も入場待ちの人が列をなしている。あわあわと列の最後尾に並び順番を待ち入場する。すでにこの時から、探偵はトーテムの世界に足を踏み入れているのだ。なぜなら…シルク・ドゥ・ソレイユは、開演前のキャストによる客いじりから始まるから。会場内に入り、座席を探している時から、パフォーマンスはスタートしているのだ。今回も座席を探している探偵の背後にピタリとついて来る黒い影。最初は同じく席を探している人かと思ったが、距離が近過ぎ。「変な人だったらどうしよう…」とさりげなーく、そっーと振り返ると、衣装もメイクも本番仕様のキャストが!「うぉー、びっくりしたー」というと、その様子をうかがっていた他の観客から笑いが起こる。その他、ポップコーンを両手に山盛り配ったり、衣装の帽子を被らせたり、とにかく観客と絡んでは笑いをとる。これが楽しんだよねー。なのでくれぐれもこれからトーテムに行く人は遅刻厳禁。っつーか、早めに会場入りすることをお勧めする。

 そして本番。今回は“人類の誕生から現在、そして未来へと数億年の旅を続ける、不可能を可能にする人類の進化をテーマにした壮大な物語”(公式HPより)だそう。最初のパフォーマンスは、ステージの中央に置かれた巨大な亀の甲羅に見立てたセットを使ったもの。カエルや魚が鉄棒から鉄棒に飛び移ったり、自由自在に大回転したり。躍動感が半端ない。複数人が交差して鉄棒を飛び移る度に、ぶつかるんじゃないか、落下するんじゃないかとハラハラドキドキ。が、そこはトーテム、超人的なアクロバティックをいとも簡単な事に見せ観客を魅了する。つかみはオッケーというところで、次々と演目が進んでいく。注目は、ステージセットの展開とプロジェクションマッピング。これが“人類の進化”というテーマを具体的にストーリー化させる事に重要な役割を果たしている。水辺から陸地へ。その変化が見事に表現され、1つ1つのパフォーマンスが物語の1部になっているのだ。素晴らしい…。いつもいつも感心させられるが、今回もトーテムの世界にどっぷりつかってしまった。ネタバレになるので、あまり書きたくないがマジすごいっすよ。探偵が一番ハラハラしたのは「ロシアン・バー」と「ユニサイクル・ウィズ・ボウル」という演目。どんなものかは自分の目で確認すべし!

 そんな『シルク・ドゥ・ソレイユ「ダイハツトーテム」東京公演』は6月26日(日)まで。そこで…行こうかい行かないか迷っている人に朗報!なんと、6月15日(水)の15時の公演は、SS席1万2500円が9800円、S席9800円が7800円、A席は6500円が5000円になる「ニッポン放送スペシャルデー」だとか。電話オペレーター、WEBで申し込むことが出来るみたい。詳しくはニッポン放送のWEB( https://event.1242.com/event/details/20160318001.html )をチェック。探偵もこの機会にリピートする予定。シルク・ドゥ・ソレイユ未体験者、体験者、今回のトーテム未体験者、体験者ともこのチャンスを利用して、絶対にお見逃しなく。トーテムが感動と驚き、そして最高に楽しい時間を与えてくれますよー。

何百年経っても色あせない作品たち『あわれ彼女は娼婦』

2016.05.22 Vol.667

 イギリスの劇作家ジョン・フォードの代表作。日本でも過去に名だたる演出家のもと、日本を代表する俳優を起用し、何度も舞台化されてきた作品。

 今回も栗山民也演出、浦井健治、蒼井優主演という豪華な座組での上演となる。

 物語の舞台は中世イタリアのパルマ。勉学に優れ、人格的にも非の打ち所がないと将来を嘱望されるジョヴァンニは、尊敬する老修道士に、類まれな美貌の妹アナベラを女性として愛していると告白。修道士は叱責するが、ジョヴァンニはアナベラに気持ちを伝えてしまう。アナベラもまた兄を男性として愛していたことを告白。2人は道ならぬ恋に身を委ねてしまうのだった。

 戯曲が書かれたのは1620年ごろ。近親相姦は重罪で処刑されていたような時代。

 そこから約400年の時が経っても、作品の中で描かれる人間の愛、欲望、嫉妬といった感情は色あせない。しかし受け取る側の感覚は!? 『あわれ彼女は娼婦』という意味深く残酷なタイトルを持ったこの作品が現在の日本ではどのように受け取れられるのかも気になる、そんな作品。

演劇は常にチャレンジだ!!『あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語』ロロ

2016.05.09 Vol.666

 東京芸術劇場の若い演劇人をピックアップし世の中に紹介していく試みである「芸劇eyes」。その番外編として2011年に開催された『20年安泰。』に参加したロロ。

 作・演出の三浦直之は青春期の「ボーイミーツガール」的な衝動を漫画・アニメ・小説・音楽・映画などジャンルを越えたカルチャーをパッチワークのように紡ぎ合わせる手法で物語化。汚れ切ったおっさんとかおばさんにはちょっと気恥ずかしいんじゃないかという気もさせたその世界観ではあったが、死や別れという逆方向の要素をうまく取り扱うことによって、最近ではそんな気恥かしさを感じさせない作品になっている。

 昨年の本公演『ハンサムな大悟』でも、それまでの作品のテーマ性はそのままに、ひとりの男性の誕生前から死後までをたどる“一代記”というスタイルを取るなど新しい試みにチャレンジ。第60回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされるなど、彼らの作品が着実に浸透していることをうかがわせた。

 今回は伊東沙保、西田夏奈子、古屋隆太といった個性の強い客演陣を迎え、語り継ぐことに焦点を当てた“不在の物語”を描き出す。

演劇は常にチャレンジだ!!『愛情の内乱』ティーファクトリー

2016.05.09 Vol.666

 演劇生活30周年以降、新しい文体を模索することを目的に新作を書き下ろし続けている川村毅。2014年から吉祥寺シアターと提携して、今まで取り上げてこなかったものや、避けてきたかもしれないテーマに積極的に取り組んできた。
 今回の作品は初めて「母/家族」をテーマに、白石加代子を主演に迎えた「現代の大衆悲喜劇」。

 舞台はとある地方の広い家、時は遠い未来の誓い過去。母と次男と謎の家政婦が暮らす家に、この一家に興味を持つ男が「ドキュメンタリーを撮りたい」とやってくる。そこへ戦争帰りの長男と長く家出していた三男が帰ってくるのだが、互いに持つ不信感、父の不在など、一家にはなにやら秘密がありそう。母が絶対的な権力を持ち、それに従うばかりの息子たち。そんな家族の姿を通じて、母の愛とは? 家族の絆とは?といった家族の問題が描かれる。

 愛とか絆という美しい言葉が並ぶと、一見美しい物語になりそうな気もするが、そこは川村毅。そんな一筋縄で終わるわけもなく、おかしさの中に怖さと不気味さとちょっとした哀しみが隠されたブラックコメディーに仕上がっている。

【EVENT】リアル脱出ゲーム×ドラゴンクエスト 「竜王迷宮からの脱出」

2016.05.08 Vol.666

 人気ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズが今年、誕生から30周年のアニバーサリーイヤーを迎えている。それに伴い、さまざまなイベントが企画されたり、新規ソフトが発売されるなど、ドラクエイヤーは盛り上がりを見せている。
 そのなかでも注目を集めているのが『リアル脱出ゲーム×ドラゴンクエスト「竜王迷宮からの脱出」』だ。このイベントは、広大な幕張メッセをフィールドに、リアルなドラゴンクエストの世界を仲間と一緒に冒険する、参加型ゲーム。

 参加者は仲間や家族、会場で出会った人たちと4人パーティを組んで、竜王の城に潜り込み、竜王の復活を止めるために冒険を進める。途中パーティみんなで協力し出題される謎を解いていく。謎はシリーズに関連しているため、大人も子供もシリーズファンならばそれぞれの特性を生かしながらパーティに貢献できるようになっているので、参加者みんなが楽しめるようになっている。

 前売り券が完売した場合には当日券は販売されないことになっている。ローチケでは現在、その貴重なチケットを販売している。参加すれば注目されること間違いなしのこのイベントのチケット、なるはやでゲットしよう!

女性ヴォーカルトリオのサクセスストーリー JIM BEAM presentsブロードウェイ・ミュージカル 「ドリームガールズ」

2016.05.08 Vol.666

 ブロードウェイで喝采を集め、ビヨンセ主演の映画は大ヒット、来日公演でも大盛況。長きに渡って人気を集め続けているミュージカル『ドリームガールズ』が再来日、ゴージャスでグリッター、そしてソウルフルでエモーショナルなステージでオーディエンスを魅了する。

 ミュージカルは、1960〜70年代のアメリカを舞台に展開。ソウルやR&Bアーティストが人気を誇るショービズ界において、女性トリオの成功物語とそれに伴うドロドロとした人間模様、栄光、挫折、中傷、野望、友情といった入り組む感情をドラマティックに描いていく。

 今回の公演のために、新たにオーディションが行われ、アポロシアターオリジナルキャストの出演も決定。圧倒的なパフォーマンスで魅せ、聴かせる。珠玉のミュージカルナンバーの数々、心が震わされるストーリーは言うまでもないが、きらびやかなステージ衣装やステージセットなどなど、見ごたえはたっぷりだ。

 初日を控えて、宣伝隊長を務めるローラが本公演の魅力を伝える特別番組『ロ—ラ meets ドリームガールズ〜キラキラの夢に出会う旅〜』(TBS系、5月14日〈土〉午後3時30分〜)も放送される。

 本作はリピーターはもちろん、ミュージカルビギナーにとっても親しみやすいミュージカル作品のひとつ。本公演のチケットはローチケで発売中。

GWでお金使いすぎないようにしないと…『8月の家族たち August:Osage County』

2016.04.24 Vol.665

 ピューリッツァー賞戯曲部門とトニー賞最優秀作品賞ほか4部門を受賞したトレイシー・レッツの『8月の家族たち August:Osage County』をケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が上演台本と演出を担当し上演する。

 レッツは米国の脚本家・劇作家・俳優で、本作は自身の生まれ故郷であるオクラホマを舞台に、幼いころの実体験をもとに描いたもの。8月の酷暑のオクラホマ州の一軒家で繰り広げられる三姉妹と家族をめぐるブラックコメディー。ブロードウェイでは2年で648回の公演を行うほどの人気作で2013年にはメリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツといったそうそうたる顔ぶれで映画化もされているので、ご存知の人も多いだろう。

 日本で「三姉妹作品」といえばKERA。過去には自らの戯曲である『わが闇』『祈りと怪物』のみならずチェーホフの『三人姉妹』を演出。KERAの手掛ける「三姉妹作品」にはハズレはない。

 ナイロン100℃以外でも多くの作品を手掛けるKERAだが、今回は麻実れいなど初顔合わせの俳優もおり、舞台上はいつもとはちょっと違った風景になりそうなのも興味深い。

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