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訪問看護でできること・できないことを完全解説

訪問看護でできること・できないことを完全解説

訪問看護は、病気や障害により在宅療養が必要な方を支える重要なサービスとなっています。住み慣れた自宅で適切な医療・看護ケアを受けることができる一方で、サービス内容には一定の制限があります。

適切な支援を受けるためには、訪問看護の対象者、利用条件、そして「できること・できないこと」の明確な境界線を理解することが重要となります。

Index目次

訪問看護とは

訪問看護とは、病気や障害を持った方が住み慣れた地域で、その人らしい療養生活を送れるように、看護師などの医療従事者が生活の場へ訪問し、主治医の指示のもとに看護ケアを提供するサービスとなっています。

対象者は赤ちゃんからお年寄りまで年齢に関わらず、在宅での療養生活を希望し、医師が訪問看護が必要と判断したすべての方となっています。訪問看護ステーションからは、看護師、准看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職が訪問する仕組みとなっています。

利用に必要な条件

訪問看護を利用するためには、主治医からの「訪問看護指示書」の交付が必要となります。この指示書は、患者の健康状態や必要なケアに関する具体的な指示を含む重要な文書であり、すべての訪問看護サービスはこの指示書に基づいて提供される仕組みとなっています。

利用される保険制度によって対象者の条件が異なる仕組みとなっています。医療保険の場合、40歳未満で主治医からの指示書を交付された方と、40歳以上で要支援・要介護認定を受けていない方が対象となります。介護保険の場合は、65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方と、40歳以上65歳未満で特定疾病が原因で要介護・要支援認定を受けている方が対象となっています。

利用回数の制限

訪問看護の利用回数は適用される保険によって制限が設けられています。医療保険では原則として1日1回、週3回が上限となっており、基本的に1事業所のみの利用に限定される仕組みとなっています。

ただし、特定の疾病(厚生労働大臣が定める疾病等・別表第7、8)に該当する場合や、主治医から特別訪問看護指示書が交付された場合は、週4日以上の訪問が可能となっています。一方、介護保険では訪問回数に上限は設けられていません。ただし、セラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の訪問は週間合計で120分までという制限があります。

訪問看護でできること

訪問看護では、利用者の自立した生活を支えるため、医療的ケアから日常生活支援まで幅広いサービスが提供されています。以下に主なサービス内容について詳しく解説いたします。

医療処置・診療補助

訪問看護では、医師の指示に基づく様々な医療処置が実施されています。具体的には以下のような処置が含まれます。

  • 点滴・注射の実施・管理
  • 褥瘡の処置・創傷部の処置
  • カテーテル管理(胃ろう、尿留置カテーテルなど)
  • 気管内を含む吸引
  • 人工肛門・人工膀胱の管理
  • 在宅酸素療法の指導・援助
  • 人工呼吸器の管理
  • 中心静脈栄養法の実施・管理
  • 経管栄養法の実施・管理
  • 気管カニューレの交換・管理
  • 浣腸・摘便
  • 採血等の検体採取

これらの医療処置により、医療機関での治療に準じた医療的ケアを自宅で受けることが可能となっています。特に人工呼吸器や中心静脈栄養など、高度な医療機器の管理も訪問看護の重要な役割の一つとされています。

健康状態の観察・管理

訪問看護師は利用者の健康状態を継続的に観察し、異常の早期発見に努めています。具体的には以下のようなケアが提供されています。

  • 血圧・体温・脈拍などのバイタルサインのチェック
  • 病気や障がいの状態観察
  • 薬の相談・指導(薬の作用・副作用の説明、飲み方の指導、残薬の確認)
  • 病状の経過観察
  • 服薬管理

これらの観察により、病状の変化を早期に察知し、適切な対応につなげることが可能となっています。

療養生活の支援

日常生活における基本的な支援も訪問看護の重要な役割となっています。

  • 身体の清拭、洗髪、入浴介助
  • 食事や排泄などの介助・指導
  • 住環境の整備
  • 清潔の援助(足浴、爪切りなどのフットケア等)
  • 排泄の援助(トイレ等への移動介助、おむつ交換、洗浄)
  • 食事への援助(脱水予防、栄養相談、体重測定)
  • 呼吸への援助(呼吸ケア、排痰援助)

これらの支援により、利用者が可能な限り自立した生活を送れるよう支援が行われています。

リハビリテーション

訪問看護では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションサービスも提供されています。

  • 拘縮予防・歩行訓練などの機能回復
  • 嚥下訓練
  • ストレッチ・マッサージ
  • 筋力トレーニング
  • 関節可動域訓練

これらのリハビリテーションにより、利用者の身体機能の維持・向上が図られています。

認知症・精神疾患のケア

認知症や精神疾患を持つ利用者に対して、専門的なケアが提供されています。

  • 利用者とご家族の相談
  • 対応方法の助言
  • 危険防止についての指導
  • 散歩や遊びを通した刺激提供
  • 関わり方や生活上の工夫の提案

ターミナルケア・看取り

がん末期や終末期を自宅で過ごされる方のために、専門的なターミナルケアが提供されています。

  • 疼痛管理
  • 症状緩和
  • 精神的支援
  • 家族支援
  • エンゼルケア

特に、24時間体制でのサポートにより、最期まで自宅で過ごしたいという利用者とご家族の希望に寄り添った支援が行われています。

家族への支援・相談

利用者だけでなく、ご家族への支援も訪問看護の重要な役割となっています。

  • 介護方法の助言
  • 病気や介護の不安に関する相談
  • 社会資源の紹介
  • 介護負担の軽減支援
  • 心理的サポート

ご家族全体の負担を軽減し、安心して在宅療養を継続できるよう支援が行われています。

訪問看護でできないこと

訪問看護には法律や制度上の制限があり、すべてのサービスを提供できるわけではありません。利用者やご家族が適切な期待を持ち、必要なサービスを他の事業者から受けるためにも、これらの制限を理解することが重要となっています。

医師の指示が必要な処置に関する制限

訪問看護で行える医療処置は、原則として医師の訪問看護指示書に基づいて実施される仕組みとなっています。以下のような行為は、訪問看護師が独自で行うことができない内容となっています。

  • 処方薬の変更や新たな治療方針の決定
  • 重篤な急性疾患への応急処置
  • 外科的手術
  • 医師の専門知識が必要な診断や判断

これらは法的に医師の専門領域とされており、適切に医療機関や専門家にバトンタッチする必要がある内容となっています。

訪問場所の制限

訪問看護は、利用者の自宅で行われる看護サービスであるため、自宅以外での看護提供はできない仕組みとなっています。

  • 外出先への訪問
  • 入所施設への訪問
  • 通院の付き添い
  • 病院への受診同行

ただし、保険適用外の自費による訪問看護では、利用者の希望される場所での看護を受けることができる場合があります。

家事代行・生活支援サービスの制限

訪問看護は療養上の支援を目的としているため、家事全般や生活の代行サービスは対象外となっています。

  • 買い物代行
  • 掃除、洗濯、料理などの家事全般
  • ペットの世話
  • 庭の手入れ
  • 本人以外の家族の世話

これらのサービスが必要な場合は、訪問介護や家事代行サービスなど、他の事業者に依頼する必要があります。

ケアプランや指示書に記載されていないこと

基本的に訪問看護指示書やケアマネジャーが作成するケアプランに記載されていないサービスは、訪問看護では行うことができない仕組みとなっています。これは、保険制度の適正な運用と、利用者の安全を確保するための重要な制限となっています。

新たなケアが必要になった場合は、主治医やケアマネジャーに相談し、指示書やケアプランの見直しを行う必要があります。

医療保険と介護保険による違い

訪問看護は医療保険と介護保険の両方で利用できますが、それぞれに特徴的な違いがあります。適用される保険によってサービス内容や利用条件が異なるため、正しく理解しておくことが重要となります。

対象者の違い

医療保険では、40歳未満で主治医から訪問看護指示書を交付された方、および40歳以上で要支援・要介護認定を受けていない方が対象となっています。

一方、介護保険では65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方と、40歳以上65歳未満で特定疾病が原因で要介護・要支援認定を受けている方が対象となっています。

利用回数・頻度の違い

医療保険では原則として1日1回、週3回が利用上限となっています。ただし、末期がんなどの特定疾病や特別訪問看護指示書の交付を受けた場合は、週4日以上の訪問が可能となっています。

介護保険では利用回数に制限はありませんが、要介護・要支援度に応じたケアプランの中で利用する仕組みとなっています。

自己負担額の違い

医療保険では年齢により異なり、70歳以上は1~3割、6~69歳は原則3割、6歳未満は2割の負担となっています。介護保険では原則1割負担ですが、一定以上の所得者は2~3割負担となっています。

特別訪問看護指示書について

特別訪問看護指示書は、病状急変、終末期、退院直後などに通常より頻繁な訪問看護が必要な場合に、主治医から交付される特別な指示書となっています。

交付要件

特別訪問看護指示書が交付される主な要件は以下の通りとなっています。

  • 急性感染症等の急性増悪時
  • 末期の悪性腫瘍等以外の終末期
  • 退院直後で週4日以上の頻回な訪問看護の必要を認めた場合
  • 真皮を超える褥瘡や気管カニューレを使用している状態

指示期間と交付回数

特別訪問看護指示書の適用期間は最大14日間で、基本的に月1回の交付となっています。ただし、気管カニューレを使用している状態や真皮を超える褥瘡がある状態の場合は、月2回まで交付が可能となっています。

この指示書により、週4日以上の訪問、1日複数回の訪問、長時間の訪問看護が可能となり、医療ニーズの高い利用者に対してより手厚いケアを提供することが可能となっています。

訪問看護における24時間体制・オンコール対応

多くの訪問看護ステーションでは、利用者とそのご家族が安心して在宅療養を送れるよう、24時間365日対応できるオンコール体制が整備されています。

オンコール体制の仕組み

オンコールでは、担当スタッフがオンコール専用の携帯電話を持ち、利用者やご家族からの緊急連絡に応じる形が一般的となっています。多くのステーションでは1~2人体制をとっており、自宅待機しながら対応する仕組みとなっています。

オンコールの電話が入った場合、必ずしも訪問が必要というわけではなく、多くの場合は電話での相談対応で解決できる仕組みとなっています。厚生労働省のデータによると、緊急訪問が必要な利用者は1割未満で、緊急訪問の回数は利用者1人当たり月3回程度となっています。

オンコール対応の内容

オンコールで対応する主な内容には以下があります。

  • 転倒による起き上がり困難
  • 排便ケア
  • 末期がんの方の点滴対応
  • 体調悪化時の相談
  • 症状悪化に伴う緊急訪問
  • 医師やケアマネジャーからの連絡対応

電話での対応後、必要に応じて緊急訪問を行い、症状の評価や処置、主治医や関連する医療専門家との連携が図られる仕組みとなっています。

他職種との連携

訪問看護の現場では、利用者に最適なケアを提供するため、様々な専門職との連携が不可欠となっています。特にケアマネジャーとの連携は、サービス全体の充実に直結する重要な要素となっています。

ケアマネジャーとの連携

ケアマネジャーは、利用者に必要なサービスを考え、ケアプランを作成し、介護サービス事業者の調整を行う重要な役割を担っています。訪問看護サービスを受けるためには、限られた単位数の中で他のサービスとの兼ね合いや適切なサービス量を決定するケアマネジャーの存在が欠かせないものとなっています。

良好な関係を築くことで、サービス全体の充実につながり、新たな依頼にもつながる可能性があります。具体的な連携方法として、以下が重要とされています。

  • 利用者の体調変化や入院・看取りなどの重要な情報の迅速な連絡
  • 時間帯を考慮した簡潔でわかりやすい報告
  • 積極的な挨拶による顔見知りの関係構築

医療機関との連携

主治医との連携は訪問看護の基本となっています。訪問看護指示書に基づくケア提供はもちろん、利用者の状態変化時には迅速な報告と指示を仰ぐことが必要となっています。

緊急時には、かかりつけ医がいる医療機関への緊急コールや、状況に応じた救急搬送の判断も重要な連携業務となっています。

他の専門職との連携

訪問看護の現場では、以下の専門職との連携が求められています。

  • 介護福祉士:生活面・身体面の支援
  • 保健師:地域保健活動との連携
  • ホームヘルパー:家事支援・生活援助
  • 各種療法士:機能回復・維持のためのリハビリテーション

これらの多職種が連携することで、利用者のニーズに応じた包括的なケアの提供が可能となっています。

まとめ

訪問看護は、在宅療養を支える重要なサービスとして、医療処置から日常生活支援、家族支援まで幅広いケアを提供しています。しかし、法的制限や制度上の制約により、すべてのサービスを提供できるわけではありません。

「できること」として、医師の指示に基づく医療処置、健康状態の観察、療養生活支援、リハビリテーション、認知症ケア、ターミナルケア、家族支援などがあります。一方、「できないこと」として、医師の指示を超える医療行為、自宅以外での看護提供、家事代行、ケアプランに記載されていないサービスなどがあります。

利用者とそのご家族が安心して在宅療養を継続するためには、これらの制限を正しく理解し、必要に応じて他のサービスと適切に組み合わせることが重要となります。また、医療保険と介護保険の違い、特別訪問看護指示書の活用、24時間体制でのオンコール対応、多職種との連携なども、訪問看護を効果的に利用するための重要な要素となっています。

訪問看護の適切な活用により、利用者が住み慣れた自宅でその人らしい療養生活を送ることが可能となり、ご家族の負担軽減にもつながります。サービスの利用を検討される際は、かかりつけ医、ケアマネジャー、または最寄りの訪問看護ステーションに相談されることをお勧めします。

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