訪問看護と訪問介護の基本的な違い
訪問看護とは
訪問看護は、看護師や理学療法士などの医療専門職が利用者の自宅を訪問し、医師の指示書に基づいて医療的ケアを提供するサービスです。病気や障害を持った方が住み慣れた地域で、その人らしい療養生活を送れるように支援することが目的となっています。
訪問看護では、健康状態のチェック、点滴や注射などの医療処置、床ずれの処置、人工呼吸器の管理、服薬指導、リハビリテーション、ターミナルケアなど、専門的な医療行為を含む幅広いケアを提供します。
訪問介護とは
訪問介護は、介護福祉士やホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行うサービスです。要介護1~5の認定を受けた方が対象となり、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう支援することが目的です。
訪問介護では、食事介助、入浴介助、排泄介助などの身体介護と、掃除、洗濯、調理、買い物などの生活援助を提供します。ただし、医療行為は基本的に行うことができません。
サービス内容の詳細比較
訪問看護のサービス内容
訪問看護では以下のようなサービスを提供します:
- 病状の観察(血圧、体温、脈拍のチェックなど)
- 医師の指示による医療処置(点滴、注射、カテーテル管理など)
- 床ずれの予防・処置
- 医療機器の管理(在宅酸素、人工呼吸器など)
- 服薬の管理・指導
- リハビリテーション
- ターミナルケア(看取り)
- 家族への介護指導・相談
訪問介護のサービス内容
訪問介護では身体介護と生活援助の2つに大きく分けられます:
身体介護
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 更衣介助(着替え)
- 体位変換
- 移動・移乗介助
生活援助
- 掃除
- 洗濯
- 調理
- 買い物
- 薬の受け取り
対象者と利用条件の違い
訪問看護の対象者
訪問看護は、年齢に関係なく医師が必要と判断した方が利用できます。具体的な対象者は以下の通りです:
- 40歳未満で医師から「訪問看護指示書」を交付された方
- 65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方
- 40歳以上65歳未満で特定疾病により要介護・要支援認定を受けている方
- 厚生労働大臣が定める疾病(末期がん、難病等)の方
訪問介護の対象者
訪問介護は、原則として要介護1~5の認定を受けた方が対象です。要支援1、2の方については、各自治体が実施する「訪問型サービス」として利用することができます。
利用方法と手続きの流れ
訪問看護の利用方法
訪問看護を利用するには、以下の手順が必要です:
- かかりつけ医に相談し、「訪問看護指示書」を発行してもらう
- ケアマネジャーと相談して利用する訪問看護ステーションを選択
- 必要書類の提出とサービス内容の確認
- 契約・サービス開始
訪問看護指示書の有効期間は最大6か月です。
訪問介護の利用方法
訪問介護を利用するには、以下の手順が必要です:
- 要介護認定の申請を行う
- 要介護認定を受ける
- ケアマネジャーによるケアプラン作成
- 訪問介護事業所との契約
- サービス開始
利用料金の比較
※以下の料金は目安であり、地域や事業所によって異なる場合があります。また、制度改定により変更される可能性があります。
訪問看護の料金
訪問看護は介護保険と医療保険のどちらでも利用可能で、料金体系が異なります。
介護保険利用の場合(自己負担1割の場合の目安)
- 看護師による訪問(20分未満):約312円
- 看護師による訪問(30分未満):約469円
- 看護師による訪問(30分以上1時間未満):約819円
医療保険利用の場合(目安)
- 基本療養費(週3日まで):看護師1日につき5,550円(1割負担:555円)
- 基本療養費(週4日目以降):看護師1日につき6,550円(1割負担:655円)
訪問介護の料金
訪問介護は介護保険を利用し、サービス内容と時間によって料金が決まります。
身体介護(自己負担1割の場合の目安)
- 20分以上30分未満:約244円
- 30分以上1時間未満:約387円
- 1時間以上1時間30分未満:約567円
生活援助(自己負担1割の場合の目安)
- 20分以上45分未満:約179円
- 45分以上:約220円
併用について
同時利用は原則として不可
訪問看護と訪問介護は、原則として同一時間帯に利用することができません。介護保険では「同一時間帯にひとつの訪問サービスを利用することを原則」としているためです。
例外的に同時利用が認められる場合
ただし、利用者の心身の状況や介護の内容に応じて、同一時間帯に利用することが介護のために必要があると認められる場合に限り、同時利用が可能です。例えば、家庭の浴槽で全身入浴の介助をする場合などが該当します。
このような場合でも、必ず事前に保険者(市町村)への相談と許可が必要となります。
時間をずらしての利用
同時利用が認められない場合でも、時間をずらしての利用は可能です。訪問介護同士では2時間の間隔を空ける必要がありますが、訪問看護と訪問介護の間にはそのような制限はありません。
まとめ
訪問看護と訪問介護は、どちらも在宅生活を支える重要なサービスですが、提供するケアの内容や対象者、利用方法に明確な違いがあります。訪問看護は医療的ケアが必要な方向けの専門的なサービスであり、訪問介護は日常生活の支援が必要な要介護者向けのサービスです。
利用を検討される際は、ご自身の状態やニーズに応じて、かかりつけ医やケアマネジャーに相談することをおすすめします。必要に応じて両方のサービスを組み合わせることで、より充実した在宅生活を送ることができるでしょう。