歯周病は完全に治るのでしょうか?
結論から言うと、歯周病は基本的には完全に治ることは難しいとされています。ただし、これは「治らない」というのではなく、「病気になる前の状態に完全に戻すことは難しい」という意味です。
しかし、適切な歯科医院での治療とセルフケアによって、進行を食い止め、炎症をおさえ、健康な状態に戻すことは十分可能です。つまり、歯周病の症状をコントロールし、健康な状態を維持することができるのです。
歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまいます。一度失われた骨を完全に元の状態に戻すことは難しいですが、進行を止めることで現状を維持したり、場合によっては専門的な治療で失われた組織を再生させたりすることも可能です。
歯周病の進行度による違い
歯周病の治療方法や回復の見込みは、その進行度によって大きく異なります。歯周病は主に以下のように分類されます。
- 初期(歯を磨くと血が出る・少量の歯石がついている)
- 中等度(歯ぐきがむずがゆい・歯ぐきがぶよぶよに腫れ出血する)
- 重度(歯ぐきの腫れ・出血に加え、歯がぐらぐらする)
初期の段階では、適切な治療とセルフケアによって健康な状態に戻すことが比較的容易です。中等度になると治療がより複雑になり、重度になると外科的な処置が必要になる場合もあります。
特に40代の方は、歯周病の「中等度」「重度」の割合が増えるとされており、より早期の対応が必要です。
歯周病の治療方法
歯周病の治療は、進行度に応じて段階的に行われます。基本的な流れを見ていきましょう。
歯科医院での基本的な治療
歯科医院で実施する歯周病治療の基本は、以下の2つのアプローチです。
- 歯垢・歯石の除去
- 噛み合わせの調整
歯垢・歯石の除去は、歯周病の原因となる細菌を取り除くために非常に重要です。歯科医師や歯科衛生士が専用の器具を使って、歯の表面や歯ぐきの中の歯石、歯垢などの汚れを丁寧に除去します。
また、噛み合わせも重要な要素です。過度に噛み合わせていたり、歯ぎしり、食いしばりで強く力がかかっていたりすると、歯周病の進行を早めてしまうことがあります。
治療は通常、歯周ポケットの検査から始まり、進行度に応じて数回の通院が必要になります。治療後も定期的なメインテナンスが重要です。
重度の歯周病に対する専門的な治療
重度の歯周病になると、基本的な治療だけでは十分な効果が得られないことがあります。そのような場合、以下のような専門的な治療が検討されます。
1.フラップ手術
フラップ手術は、歯ぐきを切開して開き、歯根の先まで目で見える状態にして細菌や歯石など歯周病の原因となる汚れを徹底的に除去する手術です。具体的には以下の手順で行われます:
- 麻酔
- 歯ぐきの切開
- 歯ぐきを開く
- 歯根に付着した汚れを歯科用器具を使用し除去
- 根面を滑らかにして歯ぐきを元に戻し、縫合
この手術により、歯ぐきが歯根面に再付着し、歯周ポケットが浅くなることが期待できます。
2.歯周組織再生療法
歯周病によって失われた骨などの歯を支えている組織を回復させる治療法です。失われた組織を回復するために必要な場所を作り、失われた組織を誘導する薬剤をその中に入れ、組織を再生させます。
主な方法としては、GTR法(特殊な膜を設置して組織再生を促進)、エムドゲインやリグロスの使用(たんぱく質や成長因子を塗布)、骨移植などがあります。
これらの治療により、歯周病で抜けそうな歯を保存できる可能性が高まります。ただし、組織の再生には時間がかかり、場合によっては半年以上必要なこともあります。
自宅でできる歯周病対策(プラークコントロール)
歯周病治療の成功には、歯科医院での治療だけでなく、自宅でのセルフケア(プラークコントロール)が非常に重要です。歯科医院できれいにしてもらっても、自宅でのケアが不十分だと2日ほどで歯石ができ始めるとも言われています。
効果的な歯磨きとデンタルケア
プラークコントロールとは、歯周病の原因となる細菌の数を可能な限り減らすことです。実は大人の口の中には、歯をよく磨く人で1000~2000億個、磨かない人では1兆個もの細菌がいるとされています。これらの細菌を減らすために、以下のようなケアが重要になります。
- 正しい歯ブラシの使い方(力の入れ具合、角度、動かし方)
- デンタルフロスの使用(歯と歯の間の清掃)
- 歯間ブラシの活用(歯間部分の清掃)
- ワンタフトブラシの使用(歯並びが複雑な部分や奥歯の清掃)
自己流で行っている方も多いですが、約8割の人に磨き残しがあると言われています。歯科医師ですら100点のブラッシングは難しいとされていますので、歯科衛生士による定期的な清掃状態のチェックや磨き方のレクチャーを受けることをおすすめします。
生活習慣の改善
歯周病対策には、歯磨きなどの直接的なケアだけでなく、生活習慣の改善も重要です。
- 食生活の見直し(間食を控える、バランスの良い食事を心がける)
- 禁煙(喫煙は歯周病のリスクを高める)
- ストレス管理(過度のストレスは免疫力を低下させる)
- 十分な睡眠(免疫力の維持に重要)
特に間食をだらだらと続けると、お口の中に常に細菌が活動しやすい環境を作ってしまいます。これによりプラークコントロールが難しくなりますので、規則正しい食生活を心がけましょう。
40代男性が特に気をつけたい歯周病対策
40代は仕事や家庭の責任が増え、自分の健康に気を配る余裕が少なくなりがちな年代です。しかし、この時期こそ歯周病対策が重要になります。
40代の歯周病の特徴
40代になると、30代に比べて歯周病の症状が重症化しやすくなります。歯周病は「軽度」「中等度」「重度」と進行していきますが、40代では「中等度」「重度」の患者さんの割合が増加する傾向にあります。
40代で歯周病が進行する主な理由としては、以下のことが考えられます。
- 加齢に伴う免疫力の低下
- 長年の歯磨き不足や不適切な歯磨き習慣の蓄積
- 仕事や生活のストレスによる影響
- 生活習慣病(糖尿病など)との関連
20代の頃は身体の免疫が強く、少々の歯周病菌に対しても抵抗して、歯茎は腫れても骨は減らないということが多いです。しかし30代を超えると徐々に免疫の程度が変わり、身体が歯周病菌に負けてしまって歯を支える骨を溶かしてしまうことが増えていきます。
40代で重症化すると、治療方法も複雑になり、治療期間も長くなる傾向があります。早期発見・早期治療が非常に重要です。
定期検診の重要性
40代の男性は特に、定期的な歯科検診を習慣化することをおすすめします。半年に一度の検診で、以下のようなメリットがあります。
- 初期段階での歯周病の発見が可能
- プロフェッショナルクリーニングによる歯石除去
- 自宅でのケア方法の確認と改善
- 歯周病以外の口腔内疾患の早期発見
「痛みがないから大丈夫」と思っていても、歯周病は初期〜中期には痛みを感じにくい病気です。症状が出てから受診するのでは遅いことが多いので、定期的な検診を心がけましょう。
まとめ:歯周病と上手に付き合っていくために
歯周病は基本的に完全に元の状態に戻ることは難しいですが、適切な治療とセルフケアによって、健康な状態を維持することは十分可能です。特に40代の男性は歯周病の重症化リスクが高まる年代ですので、以下のポイントを意識して取り組みましょう。
- 定期的な歯科検診で早期発見・早期治療を心がける
- 正しい歯磨き方法や歯間ブラシ、フロスの使用法を習得する
- 食生活や生活習慣の改善に取り組む
- 重症化した場合は、専門的な治療を検討する
歯周病は一度かかると完全には元の状態に戻りませんが、上手にコントロールして健康な状態を維持することは可能です。「もう遅い」と諦めるのではなく、今日からでも歯周病対策に取り組んでみてはいかがでしょうか。歯科医師・歯科衛生士とタッグを組んで、お口の健康を守っていきましょう。