なぜ不妊治療で体重が増えると感じるのか?
ホルモン剤による「むくみ」と「水分保持」
不妊治療では、排卵誘発剤や黄体ホルモン補充剤を使うことが多く、これらの薬は体内の水分を保持する作用があります。そのため、数値としての体重が増えていたり、顔や足がむくみやすくなったりするのです。特に黄体ホルモン(プロゲステロン)は、妊娠の準備として体に栄養や水分を蓄える働きがあるため、太ったような印象を受けやすくなります。
ストレスによる食生活の変化
治療が長期化することで精神的なプレッシャーや不安が高まり、それが過食傾向を引き起こすケースも少なくありません。「結果が出なくて落ち込んだ日には甘いものが止まらない」「つい深夜に間食してしまう」といった行動が重なると、体重増加につながりやすくなります。
運動量の低下による代謝の落ち込み
採卵や移植後は安静が求められたり、通院やスケジュール調整で忙しくなったりして、運動の習慣が途絶えてしまうことがあります。特にデスクワーク中心の方は、意識しないと1日の消費カロリーが大きく減ってしまい、代謝も低下します。結果として、同じ食事量でも太りやすく感じるようになるのです。
「太る=脂肪が増える」ではない
体重の増減と脂肪の増減は別物
体重が増える=脂肪が増えている、と思われがちですが、実際には水分や筋肉量の変化も体重に反映されます。ホルモン剤の影響で一時的に水分が増えても、それが治療終了後に自然と戻るケースも多く、脂肪が増えたわけではないことがほとんどです。
治療薬による「副作用」ではなく「生理的な反応」
ホルモン補充は妊娠を助けるための生理的な反応であり、異常な太り方を誘発する薬ではありません。医師の管理のもとで適切に投与される限り、大きな体重増加が起こることは稀です。不安な場合は、診察時に体重の変化や気になる点を率直に相談してみましょう。
体重増加を防ぐ・整えるためのポイント
- バランスの良い食事を意識する
高カロリー・高糖質な食品を避け、野菜・たんぱく質・良質な脂質を意識した食事を。間食は1日1回、量を決めて摂るのがポイントです。 - 1日30分の軽い運動を取り入れる
ウォーキングやストレッチなど、体への負担が少ない有酸素運動を週3日程度行うと代謝の維持に役立ちます。運動は精神的なリフレッシュにもなります。 - 睡眠の質を整える
良質な睡眠はホルモンバランスを保ち、過食を防ぐ効果があります。スマホを早めにオフにして、寝る1時間前はリラックスタイムを。 - 体重を「管理する」視点を持つ
毎日体重を測るだけでも意識が変わります。増えても一喜一憂せず、傾向を把握して生活を微調整するようにしましょう。
不安をひとりで抱え込まないことが大切
体重が増えると「自分が悪いのかも」と感じてしまう方もいますが、不妊治療中はホルモンの影響、生活変化、ストレスなど、様々な要因が絡み合っています。すべてをコントロールするのは難しいからこそ、完璧を目指さず、心と体をいたわることが何より大切です。
気になることがあれば、無理せず医師や看護師に相談してみてください。医療のプロと一緒に不安を解消しながら進めていくことが、結果として妊娠への近道にもつながります。
まとめ
- 不妊治療による体重変化の主な原因は、ホルモン剤によるむくみやストレス、生活習慣の変化によるものです。
- 「太る=脂肪が増える」とは限らず、水分量や筋肉量によっても体重は変動します。
- 体重管理のためには、バランスの良い食事・軽い運動・睡眠・ストレスケアの4点がカギ。
- 何より、自分を責めずに前向きに向き合い、必要な時には医療者のサポートを受けることが大切です。
不妊治療中の体重変化は、妊娠という目標に向かって心身が変化している証でもあります。数値だけに振り回されず、自分自身の変化を大切に見守っていきましょう。