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【江戸瓦版的落語案内 】湯屋番(ゆやばん)

2017.08.04 Vol.695
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 道楽の末、親許を勘当された若旦那が、出入りの大工・熊五郎宅の二階に居候をしていた。働きもせず、毎日ゴロゴロと寝ている若旦那に、熊五郎が奉公でもしてみたらと進めた。しばし考えてた若旦那、熊五郎の知り合い湯屋が奉公人を募集中と聞き、乗り気に。紹介状を持ち湯屋に行き戸を開けるなり、女湯に飛び込んだ。驚いた湯屋の主人、とりあえず外回りを頼むというと「いいですね。芸者を連れて温泉地の視察ですか」ととぼけた答え。燃料にするための木屑集めだと言うとキッパリと拒否。

「そんなことより、番台に座らせて」と図々しいことこの上ない。その強引さに仕方なく主人が昼飯をとる時間に、代理で座らせる事に。ところが、男湯には客がいるが、女湯は空っぽ。しかも男湯の客といえば、汚いケツで、おまけに毛がびっしり野郎ばかり。そんな現実から妄想の世界へ…。

そのうちに、いい女がやって来るんだ。その女がなんとこの俺に一目ぼれ。連れの女中に「あら、ごらんなさい。ちょいと乙な番頭さんだね」。うしし…照れるなー。ある日偶然その女の家の前を通りかかると女中が目ざとく見つけ、「姐さん、憧れの君、お湯屋の番頭さんですよ」って家の中に声をかけるね。すると女は、泳ぐように出てきて、「ちょっと上がっていって下さいな」って俺の腕をつかむんだ。

「いえ、それは困ります」「いいじゃないですか」「いやいや、それは…」と一人で手を引っ張ったり、引っ張られたり。「おいおい、番台に変な野郎がいるぜ」と、客が集まりだしてきた。そんなことにも気が付かず、一人芝居はエスカレート。家に上がり込むと、2人は盃をやったりとったり。その時ちょうどいいタイミングで雷が落ち、女は癪を起して気を失ってしまった。

そこで、盃洗の水を口移しで飲ませる。すると女は目を開き「今のは嘘」。ここでさらに芝居がかり、「雷様は恐けれど、二人がためには結ぶの神」「うれしゅうございます。番頭さーん」「馬鹿野郎、いい加減にしろ!」とうとう客がブチ切れた。「俺は帰る! 下駄はどこいった?」すると若旦那「はて? 見当たりませんね。じゃ、そちらの高そうな下駄を履いてお帰りなさい」「ほかの人の下駄じゃねえか。履いてったらそいつが困るだろう」「いえ、順に履かせて、しまいの人は裸足で帰らせます」

【江戸瓦版的落語案内】紺屋高尾(こうやたかお)

2017.05.22 Vol.691

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

落語の世界にいらっしゃい!「落語ワンダーランド」

2017.04.25 Vol.689

“落語がブームだ”と言われ早十数年。今やブームではなく、余暇に落語を楽しむのがフツーになりつつある。かどうかはさておき、そこかしこに落語ファンを見つける事ができる。落語に興味を持ったらぜひ手にしてほしい一冊「落語ワンダーランド」が発売になった。春風亭昇太や春風亭一之輔といった、現在の落語ブームの先頭を走っている若手落語家から、大名人柳家小三治らのインタビューをはじめ、今見ておくべき落語家100人と新鋭落語家20人が大集合! 落語初心者に便利な落語の基礎知識、寄席・定席ガイド、落語のネタ紹介など盛りだくさん。さらに、気軽に楽しめる落語会案内、寄席デートの紙上シミュレーションなど、役に立つ実践的ガイドも満載。上方落語についての解説や噺家案内も。落語ファンも未来の落語ファンも楽しめる落語バイブルだ。

 

【江戸瓦版的落語案内】王子の狐(おうじのきつね)

2017.03.13 Vol.686

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

落語界の裏側、全部バラします『そこでだ、若旦那!』【著者】立川談四楼

2017.01.08 Vol.682

 落語立川流の真打・立川談四楼によるエッセイ。ヘヴィ・メタル専門誌「BURRN!」に連載したコラムから抜粋し、加筆訂正し再構成した。著者は、いくつもの連載コラムやエッセイを新聞・雑誌等に持っている(持っていた)ほか、小説も多数出版するなど作家としても人気の落語家である。そんな談四楼が、自分の所属する立川流、そして師匠である立川談志の事はもちろん、落語会の裏話を赤裸々に暴露。例えば、弟子が師匠を殴り廃業した事件。話はそこで終わらず、その弟子はスルーっと別の団体の師匠のもとに行き、落語家を続けている。閉鎖的なところもある落語界での、この出来事は、ファンも何がどうなってそうなったのか分からないところがあったものの、何となく“そういう事もありなんだ…”とうやむやのままになっているのが現状だ。しかし、この本にはその師匠と弟子、引き取った師匠の実名のほか、事の顛末が詳細に書かれており、思わず“そういう事だったんだ”と納得させられる。もやもやしていた落語ファンは膝を打ち、落語を知らない人は、その人間関係や協会間の微妙なパワーバランスに驚きつつも、興味深く読める。また、談志をはじめ亡くなった落語家についても書かれているのだが、改めて読むと若くして亡くなった落語家がなんと多い事か。しかし、談志以外の落語家の多くは話題にもならないばかりか、新聞でもほんの数行の訃報記事しか出ない。談四楼は先輩、同期、後輩として彼らを身近に見ていた者として、それぞれの生きざまに優しい目を向ける。そんな魅力的な落語家の噺を聞きに、寄席に足を運びたくなる一冊。

【定価】本体1500円(税別)【発行】シンコーミュージック・エンタテイメント

【江戸瓦版的落語案内 】心眼(しんがん)

2016.06.27 Vol.669
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 浅草馬道に住む按摩の梅喜(ばいき)が憔悴しきった面持で、横浜から帰って来た。女房のお竹が訳を聞くと横浜の弟から「また食いつぶしに来たな。この穀つぶしのメクラが」と言われたのだと告白。幼くして両親を亡くした梅喜が親代わりとなって育てた弟だったから、その悔しさ、怒りは計り知れない。いっそ、弟の家の軒先で首をくくって死んでやろうかとも思ったが、お前が悲しむと思い帰って来たと。それを聞いたお竹は、「茅場町の薬師様に願掛けをしに日参し、片方だけでもいいから目が開くように信心しましょう。私も自分の命を縮めてもいいから、一緒に願をかけます」と言ってくれた。そして満願の日—。薬師へ詣での帰り道、得意先の上総屋の主人が声をかけてきた。「梅喜さん、目が開いてるじゃないか」はっと気が付くと、なるほど見えている。しかし、目が開いたら開いたで帰り道が分からなくなってしまい、上総屋さんに手を引いてもらいながら帰ることに。途中、人力車に乗るきれいな芸者を見て上総屋の主人に「うちのお竹とどちらがきれいでしょうね」と尋ねると「本人を前にして言うのは気が引けるが、あれは東京でも指折りの芸者、そしてお前さんの女房のお竹さんは、東京で指折りの醜女だ。しかし、大変気立てが良く、日本でも指折りの貞女だ」。がっかりした梅喜だが、ふと気が付くと上総屋の主人とはぐれてしまった。途方に暮れていると芸者の小春に声をかけられた。前から男前の梅喜が気になっていた小春、富士横丁の待合に梅喜を誘った。杯をさしつさされつしていると小春が「ずっとお前さんのことを思っていました」と告白。舞い上がった梅喜は「お竹とはきっぱり別れて、お前さんと一緒になる」と怪気炎。そこへ、梅喜の目が開いたことを上総屋から聞いて駆けつけたお竹が乗り込んできた。いきなり梅喜につかみかかると「こんちくしょう、この薄情野郎!」「お、お、お竹、勘弁してくれ。手を放してくれ」。しかしお竹がさっきより強く首を絞めると「く、く、苦し…」と絶命寸前の梅喜。その時「梅喜さん、梅喜さん。起きておくれ」と声が。ハッと我に返ると、「夢だったのか…」「どうしたんだい。ずいぶんとうなされていたようだけど」「お竹、俺はもう信心をやめるよ」「なぜさ」「目が見えないって妙なものだね。寝ているうちだけ、よおく見える」

【江戸瓦版的落語案内】味噌蔵(みそぐら)

2016.06.13 Vol.668

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

【江戸瓦版的落語案内】妾馬(めかうま)

2016.05.23 Vol.667

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

もっとお笑いを楽しんで!落語会や新喜劇などに日本語と英語の字幕導入

2016.05.08 Vol.666

 

 吉本興業は『桂文枝「字幕」落語会』、吉本新喜劇と世界のパフォーマーがコラボレートする『THE 舶来寄席2016東京公演』を同時字幕つきで上演することを2日、都内で発表した。テレビの字幕放送に使われているシステムを劇場に持ち込むもので、演者を邪魔することなく、ほぼタイムラグなしで字幕で楽しめる。

 吉本興業にとって自社で企画制作するライブを海外の人にも楽しんでもらうことは長年の課題。また海外から日本を訪れる観光客が増えるなかで、「日本のショーを見てもらうという文化を作りたいと思っていた」(よしもとクリエイティブエージェンシー)。

 英語を始めとした多言語の同時字幕の導入は言葉の壁を取りはらう第一歩。英語字幕用翻訳を担当するチャド・マーレンは、「発想、日本のお笑いであること、そして間。お笑いには3つの要素があると思います。頑張って字幕を付けていますが、日本人が面白いというのが伝わっていない」と悔しげ。今後も引き続き頑張っていくと意気込んだ。

 桂文枝は「笑いを共有できればどれだけ素晴らしいでしょう。笑えば諍いも無くなるわけですから今回の取り組みに全身全霊をかけて挑むつもりです」とコメント。字幕システムを体験した弟子の桂三四郎は「字幕が吹き出しになって、顔の右、左に出るのは分かりやすくていいですね。話している人が変わったというのがすぐ分かる」と、感心。新喜劇のメンバーも「自分のセリフに色付けがされているので、人数がたくさんになっても分かります」とうなずいていた。
 よしもとクリエイティブエージェンシーによれば、今後、日本語はもちろん英語、他の言語にも順次対応していきたいという。また、よしもとの劇場にこのシステムを導入したい考えだ。

 

【江戸瓦版的落語案内】金明竹(きんめいちく)

2016.04.23 Vol.665

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

あの名作落語にはこんな続きがあったのか—?『えんま寄席 江戸落語外伝』

2016.02.22 Vol.661

 落語好きなら一度は思う「あの噺の続きは?」「あのサゲ(オチ)はなんか腑に落ちない」といった着想からヒントを得た『えんま寄席 江戸落語外伝』。「芝浜」「子別れ」「火事息子」「明烏」という落語の名作の登場人物が死んだあと、地獄の入り口で閻魔様に天界行きか地獄行きかを裁かれる時に、落語には出てこなかった“その後”や“サイドストーリー”が明らかになっていくという構成。これが、目まぐるしく変わるストーリー展開と、人物たちの意外な関係性により、話がどんどん膨らんでいき、実に面白い。

 酒癖の悪い旦那を更生させ、立派な魚屋にした「芝浜」の女房。大店の女将としてその後も旦那を支え続け、めでたしめでたしとなったのか…と思いきや、閻魔様があの落語のサゲとなったその後の顛末を暴き、実はこの夫婦の関係は落語のようなものではなかったことを白状させる。さらに、実はこの女房「火事息子」の藤三郎とも何かしらつながっていて…と、一話完結ではあるものの、他の章のストーリーにもつながっているというなんとも高度な技で、ぐいぐいと引き付ける。

 そして第4席「明烏」の浦里の章では、「明烏」のほか、「品川心中」「幾代餅」「五人廻し」「三枚起請」「紺屋高尾」といった要素がふんだんに散りばめられていて、落語ファンなら思わずニヤリとしてしまう。もちろん、落語を全然知らない人でも楽しめる地獄エンターテインメント(?)なのでご心配なく。逆にこの本を読めば、落語に興味が出てきて、これらの噺を聞きたくなるかも。本を読んでから、落語を聞いて、また本を読むと1回目の読後とは違った楽しさを発見できるはず。

『えんま寄席 江戸落語外伝』著者:車浮代
【定価】本体1500円(税別)【発行】実業之日本社

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