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「小国ナスミ、享年43。」宿り、去って、やがてまたやって来る—感動と祝福の物語。

2018.12.22 Vol.713

『さざなみのよる』【著者】木皿泉

 累計36万部を突破、2014年の本屋大賞第2位のベストセラー『昨日のカレー、明日のパン』から5年。木皿泉の小説第2作が『さざなみのよる』だ。冒頭主人公の小国ナスミが、ガンのため病院のベッドで亡くなるところから話が始まる。

 ナスミの死後、周りにいた近しい人、夫、姉、妹、叔母、元彼、友人、同僚らはナスミとの思い出を振り返りつつ、彼女が遺した言葉を拾い集める。死ぬことは怖い事かも知れない。しかし、死ぬよりも、死なれる事のほうがダメージが大きい。なぜならば、死んだ人間はある意味苦しみから開放され、何も分からないのだから。残された者は、淋しさ、悲しさ、喪失感などに包まれ、しばらくは愛する人の不在を受け入れられないかも知れない。

 しかし、愛する人を看取って、そして自分が看取られて…というのは繰り返し行われ、誰しもが経験する事でもある。そんな時、それぞれの心の中に、その人が生きていたころの言葉がよみがえる。それによって人は救われ、癒され、生きる気力を再び持つことができる。しかし、ナスミの物語は、彼らの中だけで続いていくのではない。子どもから孫へ、そのずっと先まで、精神は受け継がれていくのだ。そういう意味では、ナスミが生きた証は、永遠に消えることはない。生と死を繰り返し紡いできた人類の歴史が愛おしく感じる作品だ。

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